昭和世代を熱狂させるトヨタ カローラレビン。ここで紹介するTE71型はのちのAE86にも繋がる名車だ。そのTE71レビンを、様々な自動車カテゴリーに精通したプロフェッショナル、チャレンジャー武井(略称「チャ武」)がインプレッション!!
※本稿は2024年12月のものです
文:チャレンジャー武井/写真:中島仁菜、ベストカー編集部 ほか
車両協力:BLUE AUTO
初出:『ベストカー』2025年1月10日号
昭和漂う尖った走り!! [トヨタ]カローラレビン[TE71]がマジで良い件
【画像ギャラリー】あらゆる自動車に果敢に挑む挑戦者・チャレンジャー武井が「TE71」トヨタ カローラレビンに試乗(24枚)
改めまして……チャレンジャー武井参上!
カローラとしては4代目、レビンとしては3代目にあたるTE71型トヨタ カローラレビン。写真の個体は1982年式後期モデルのAPEX
1979年(昭和54年)3月23日に発売された4代目カローラは、昭和世代にとってはノスタルジーを掻き立てられる名車だ。
愛称の「TE71」は、4ドアの1600GTやクーペなどに与えられた型式で、3代目にあたる「レビン(稲妻)」を継承したのは3ドアハッチバックのみ。エッジの効いた直線的なボディデザインと独創的なハッチバックスタイルは今では新鮮なデザインだ。
先代から大きく変更されたシャシーは剛性感が増し、それに伴いサスペンションも強化。フロントはマクファーソンストラット、リアはラテラルロッド付き4リンクになり、さらに前後ともにスタビライザーも装着された。
ステアリング機構は、従来型のボールナット方式だがギアレシオを17.0~19.5の可変式にしてクイックなハンドリングを確保。さらに4輪ディスクブレーキが採用され、ライトウェイトスポーツとしての条件を満たした。
今回、ここで紹介する個体は、1982年式の後期モデルのAPEX(アペックス)。走行距離は8万9千kmでオリジナルの特徴が色濃く残る希少なレビンだ。
車両現状を解説しておくと、新車時の塗装そのままのボディには、若干小キズや錆びがあるが、経過してきた年月を考慮すると状態は悪くない。室内は経年劣化が軽微で保存状態は良好だったことを物語っている。
高級グレードのAPEXは、サンシェード付きムーンルーフと純正アルミホイールが標準。さらにLSDもデフォルト装備でスポーツカーを名乗るのにふさわしいモデルだ。1980年代のクルマとしては豪華なオートエアコンも完備し、季節を選ばず走れるのは魅力的。
今では高速走行では必要となったETCも後付けされ販売価格は266万円。車検2年付で購入可能(売れてたらゴメン)なのだが、気になるのは現状のポテンシャル。今回も一般道と高速でインプレッションしてみた。
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大衆車の親しみやすさが残るスポーツモデル
レビンと1600GTには大型ウレタンバンパーが標準装備された。セダン、バンのヘッドライトは丸目4灯だがクーペはカローラ初となる角目2灯が採用された
3代目レビンのコックピットは、前方視界は広々としているが、スポーツカーというより大衆車といった雰囲気。それが逆に親近感が湧く。
運転席と助手席はAE86のシートに換装。オリジナルのファブリックシートよりも格段にホールド感が上がっている。社外のバケットシートではなく後継モデルの純正シートに変更しているあたりは個人的に好感が持てる。
ルームミラーを調整してペダル類の感触を確認したところでエンジンを始動した。
排ガス規制でインジェクション化された名機2T-Gエンジンは、セルが回った瞬間に鼓動を始める。42年も経過している車両とは思えないほど始動性は抜群で旧車という感覚はない。クラッチペダルを踏みギアを1速に入れ、ペダルをリリースすると軽快に走り出した。
71レビンはマニュアル設定のみだが、気難しいところはなく扱いやすいので渋滞していても苦にならなさそう。シフトフィーリングはギアの間隔が認識しやすく、的確なシフトワークができるのも安心感がある。
公道試乗では、サスペンションのヘタリは軽微で路面の凹凸をしっかり吸収してくれた。インプレッションした日、装着されていたのがスタッドレスタイヤだったが、意外にもハンドリングに不満はない。いい感じに当たりがついた雪用タイヤはコンパウンドが柔らかいこともあり違和感なく走れたようだ。
旋回中の姿勢も安定していてロール感があってもタイヤが路面をしっかり捉えている感覚がステアリングと座面越しに伝わってくる。ノーマルでも強化されたサスペンションとスタビライザーなどの装備もネガティブな評価にならなかったのだろう。
コーナーの立ち上がりではLSDが機能してくれ、駆動がリアタイヤの両輪にダイレクトに伝わり大胆にアクセルが踏み込める。ドライバーの操作に対して素直に応えてくれる感覚はスポーツカーの醍醐味だ。
レビンに搭載されたのは、1.6Lのツインカムエンジンなのだが、より厳しくなった昭和53年の排ガス規制をクリアするために触媒が必要になり、規制前の仕様よりパワーダウンを余儀なくされた。
しかし、当時の技術陣はカムシャフトのリフト量を見直し、バルブタイミングを変更することで低速域から高回転域まで滑らかに回るレスポンスを確保した。まさにモータースポーツ由来のノウハウが生かされた結果だ。
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非力なエンジンを補って余りある軽量ボディ
シンプルな印象のコクピット。ガラス面が広く前後左右の視認性が高いので初めて乗ったクルマとは思えない。基本、オリジナルを色濃く残すがステアリングはナルディ製にカスタム。ちなみにレビンにはパワステ機能はない
高速道路に入りアクセルを踏む込むと、中速域のトルク感が素晴らしい。しっかりレッドゾーンまで回してシフトアップすると、パワーバンドを外すことなく気持ちよく加速してくれる。
非力なエンジンパワーを補うパフォーマンスを感じさせてくれるのは軽量ボディのメリットが大きい。
軽い車重は、ブレーキングにおいても効果が絶大。ペダルを踏めば4輪が即反応して制動状態に入り、古さを忘れるほど安心感がある。
空力についても鋭いフロントデザインと軽快なリア形状は、伊達ではない。スピードが上がっても直進安定性は破綻することなく風切り音も軽微。
TE71型レビンは、昭和世代のクルマ好きに今も愛される名車だ。その理由は「軽快で楽しい運転操作」と「魅力的なデザイン」、「信頼性の高いメカニズム」にある。
特にFRレイアウトによるドライバーとの一体感は、FF車では味わえない魅力がある。旧車で走りを楽しみたいユーザーにはぴったりの一台。
しかし、現存する車両は少なく良好なコンディションのものを探すのは難しい。この個体はマジでおススメです!
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2T-GEU型エンジン探索
レビンが搭載する2T-G型はヤマハ開発のDOHCヘッドと2T型のシリンダーブロックを組み合わせたパワーユニットの進化系。DOHCはトヨタ的には「ツインカム」と呼ぶ。エモい……
TE71型には3タイプのエンジンが用意された。スポーツモデルのレビンにはトヨタモータースポーツの歴史において実績のあった2T-G型を搭載。
ヤマハ発動機が開発したDOHCヘッドと「パッションエンジン」と呼ばれた2T型のシリンダーブロックを組み合わせたパワーユニットの進化系だ。
71レビン後期には昭和53年の排ガス規制をクリアするために開発したEFI(電子制御式燃料噴射装置)を採用。最高出力は115ps/6000rpm、最大トルクは15.0kgm/4800rpm。
三元触媒が装着されパワーダウンも余儀なくされたが、カムシャフトのプロフィールを変更することで低中速域の力強いトルク感を維持した。
カムシャフトが2本あることを世界的にDOHCと呼んでいたが、トヨタは独自の呼称「ツインカム」と名付けたことも1980年代では忘れてはいけないトピックでもある。
●1982年式 トヨタ カローラ・レビン 1600 APEX 主要諸元
・全長×全幅×全高:4240×1625×1325mm
・ホイールベース:2400mm
・車両重量:990kg(乾燥重量)
・エンジン形式:直列4気筒DOHC
・総排気量:1588cc
・最高出力:115ps/6000rpm
・最大トルク:15.0kgm/4800rpm
・ミッション:5速MT
・駆動方式:FR
・ステアリング:可変式ボールナット
・ブレーキ:前後)ディスク
・サスペンション:前)ストラット式 後)ラテラルロッド付4リンク
・タイヤ:前後185/70HR13(標準)
・新車時販売価格:134万3000円
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TE71はもう弾数ありませんよ…(手遅れ)