「究極」の高速3シリーズ BMWアルピナ B3 GT ツーリングへ試乗 本物の最後は限定75台！

改良を加え快適性を高めたB3のGT

クルマの呼称へしばしば用いられる「GT」には、特定の意味がある。最も純粋な意図は、頭文字どおり、グランドツアラーであることの強調だろう。スポーツカー級のシャープな操縦性を備えつつ、長距離移動を安楽にこなせる強みを持つモデルとして。

他方、ポルシェの場合には、ハードコアな特別仕様にGTが与えられる。サーキットを前提に仕立てられながら、公道も走れるモデルとして。

今回試乗したアルピナB3 GT ツーリングは、どちらかに当てはまるだろうか。通常のB3より最高出力は34ps引き上げられ、フロントバンパーの両端にはカナードが備わる。発表会がサーキットで開催されたことを考えると、後者へ近いようにも思える。

BMW M3 CSに対する、ドイツ・ブーフローに拠点を置くアルピナからの回答だと捉えても違和感はないだろう。しかし、それはアルピナの流儀には反する。

同社は、BMW 3シリーズがE92型だった時代に、サーキットへ最適化されたB3 GT3を生み出した。素晴らしい内容といえたが、後継は生まれていない。

前者の特長を一層磨き込んだと考えた方が、しっくり来るかもしれない。生産数は限られるものの、細かな改良が施された特別なB3といえそうだ。実際、同社の技術者はより快適性を高めたと主張している。

低域トルクを上昇　サーキットでも見事に機能

G20型のBMW 3シリーズには、2度目のフェイスリフトが施された。それに伴い、ボディシェルはリア回りの剛性が向上したという。アルピナはさらに、フロントへ新しいストラットブレースを追加。シャシーへ全面的な調整を加えたそうだ。

ボディ剛性が高まったことで、ダンパーはコンフォート・モード時に一層ソフトに。四輪駆動システムは、従来よりリアアクスル主体で制御されるようになった。

3.0L直列6気筒ツインターボ・エンジンもアップデート。M3が搭載するS58ユニットがベースで、低回転域でのトルクが引き上げられている。独自のチューニングにより、5000rpmから痛快に上昇していく感覚を堪能できる。

フェイスリフトということで、スタイリングやインテリアにも手が加えられた。壮観な20インチ・ホイールは専用品になり、高性能なブレーキが標準。カーボンファイバー製の内装トリムも与えられている。

オロ・テクニコと呼ばれる、金色のパッケージも専用。ホイールとインテリア・ステッチ、シフトパドル、デコラインがゴールドでコーディネートされる。

たとえグランドツアラーだとしても、そもそもB3はサーキットでも見事に機能する。今回は公道での試乗機会はなかったが、少なくともこの場所での印象は素晴らしかった。開けた道で運転できる日が待ち遠しい。恐らく、乗り心地は間違いない。

M3とM340iの長所を融合　絶妙なバランス

筆者にとって、B3 GTは世界の違うM3といった感覚。インスタ映えや、わかりやすい凄みではなく、扱いやすさや味わいが重視されている。

直6エンジンの印象は、M3とM340iの中間といったところ。M3より滑らかで心地良いサウンドを放ちつつ、M340iより高回転域でパワフル。両方の長所を組み合わせたように思えた。

トランスミッションも同様。アルピナ独自の設定で、キビキビと変速するが、粗野なショックなどは皆無。金属製の大きなパドルを弾けば、即座に反応してくれる。

ブレーキは、M3級の凄まじい制動力は生まないものの、サーキットを数周駆け回る程度なら余裕。ペダルのフィーリングが自然で、効き具合を調整しやすい。

複雑に設定されたドライブモードは備わらない。B3 GTは、そのままで絶妙なバランスにある。旋回時のグリップ力は素晴らしく、明確にリアアクスル主体のトルク配分で、落ち着いてコーナーのラインを辿れる。

アルピナのような規模のメーカーで、専用タイヤが用意されているのは珍しい。機械的な仕様に幅があるM3とは異なり、シャシーとの最適化が図られている。

サーキットでは、ボディロールはやや大きめ。ステアリングホイールには、もう少しフィードバックが欲しい。とはいえ、それは些細なこと。あくまでもロードカーだ。

高速なBMW 3シリーズ・ツーリングの究極版

B3 GTの英国価格は、サルーンで8万9300ポンド（約1786万円）から。試乗したステーションワゴンのツーリングで、9万400ポンド（約1808万円）。M3とほぼ同じ設定にある。

しかし、より上質で熟成され、路上での主張は控えめ。これまで以上に、高速なBMW 3シリーズ・ツーリングの究極版といっていい。比較すると、お買い得に思えてしまうのは筆者だけだろうか。

もしご興味を抱いたのなら、早急に行動へ移された方が良いだろう。これまで、アルピナはG20型のB3を1650台販売したが、残された時間に提供できるB3 GTは、75台だけらしい。恐らく、これが現世代の最後になるはずだ。

BMWアルピナB3 GT ツーリング（欧州仕様）のスペック

英国価格：9万400ポンド（約1808万円）
全長：4725mm
全幅：1827mm
全高：1438mm
最高速度：305km/h
0-100km/h加速：3.5秒
燃費：9.5km/L
CO2排出量：239g/km
車両重量：1870kg
パワートレイン：直列6気筒2993cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料：ガソリン
最高出力：529ps/6250-6500rpm
最大トルク：74.2kg-m/2500-4500rpm
ギアボックス：8速オートマティック（四輪駆動）

Comments

[yms********]

アルピナの足周りを一式欲しい。ダンパーだけでも良い。

[moo********]

ベンツ派の私としてはこれを買うならCクラスAMG一択ですね〜。