ユーザーが車検証を見る機会は多くない
車検証、正式には自動車検査証という。ユーザーにとって、車検証を見る機会は少ない。たとえばクルマを購入、または売却する際に、ディーラーから受け取る、または買取り業者に提示するとき。車検や定期点検など、クルマの修理を行う時にディーラーや修理工場に対して提示するとき。そして、駐車違反や速度超過などの交通違反を犯したり、交通事故に遭遇した場合など、警察官に車検証を提示することになる。
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そんな車検証が2023年を目途に、現在の紙ベースからICカードになる。と言われても、ユーザーにとって車検証を見る機会が少ないので、そのメリットについてもピンとこないはずだ。
国土交通省で具体的な検討が始まったのは、いま(2020年)から約2年ほど前だ。その際、キーワードになったのがOSS(ワン・ストップ・サービス)。ユーザーがクルマを保有し、そして使うための情報を一元化することで、各種の手続きを簡素化するのが車検証IC化の目的でありメリットだ。
これまでもユーザー自身が車検証を持って手続きするケースは少なかったのだから、車検ICカードによる実質的なメリットは、ディーラーや修理事業者にあるといえるかもしれない。
具体的には、先進的な安全支援システム(ADAS)の性能に関する情報など、これまでも紙ベースでは組み込めなかった詳細な車両データを保存することができる。または、ADASや自動運転レベルなど、ソフトウエアの書き換えで車両性能がアップグレードするケースでも、ICカードなら対応しやすい。
結局、ユーザーにとって車検証IC化のメリットとは、所有するクルマの状況がディーラーや修理事業者の伝わることで、最適な整備やサービスを受けられるということだと思う。
個人情報の取り扱いは国内で議論が続いている
さて、今回の車検証IC化の議論で懸念されるのは個人情報の扱いについてだ。個人情報関連ICカードとしては現在、マイナンバーカードがある。また、クレジットカードやSUICAなどの交通系ICカードでも個人情報が深く関わる。
車検ICカードでも、紙ベースと同様に所有者の氏名などの個人情報がわかるが、そこから先、車検や修理を行った場所や時間などを含めて、クルマの情報と個人情報をどこまで紐づけるべきか、今後も国による議論は続く。
海外での車検証のIC化については、車両登録証ICカードとして、オーストラリア、スロバキア、オランダがすでに採用している。
そのほか、欧州バルト海に面したエストニアは電子政府化が進んでいることで世界の注目が集まる国。日本でのマイナンバーカードに相当する、eIDカードは運転免許証を兼ねるほか、医療関連データなどもクラウドサービスと連携して管理されている。現時点で、車両登録証はIC化されていないが、eIDカードによるクルマ情報の総括的な管理についても対応することは十分可能だと考えられる。
日本も車検証のIC化に伴って、さまざまな情報が共通ICカード化する時代がやってくるのかもしれない。
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