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メルセデス・ベンツSL 500へ挑んだ AC ブルックランズ・エース 英製GTロードスター 後編

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メルセデス・ベンツSL 500へ挑んだ AC ブルックランズ・エース 英製GTロードスター 後編

自信が溢れ品格を漂わせるスタイリング

R129型メルセデス・ベンツ500 SLのシャシーを構成するスチール材は肉厚で、先代から剛性は30%も向上。リア・サスペンションにはマルチリンク式が採用された。車重はAC ブルックランズ・エースより約400kg重かったが、有能なエンジンが補った。

【画像】メルセデス・ベンツSLとAC ブルックランズ・エース 最新AMG SLと今も現役のコブラ 全106枚

4代目SLのボンネット内に当初収まったのは、M119型のV型8気筒エンジン。ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)の32バルブで、内部構造は鍛造で形成され、ほぼ振動を生じないほどスムーズに回転した。ほかに、M103型の直列6気筒も用意されたが。

電磁式の吸気カムコントロール・システムは、直6エンジンと共有。アイドリング時のノイズは大きめながら、6000rpmまでストレスなく吹け上がった。

技術的な内容に興味はなかったとしても、500 SLはメルセデス・ベンツの頂点だと購買層は理解していたはず。路上の1つの頂点といっても良かった。V型12気筒エンジンを積んだ600 SLが、1993年にその座を奪ったが。

ボディはシャープなラインで構成され、ボンネットの長いプロポーションが特徴。テールライトは、細かな凹凸があるブラフ・デザイン。今でも自信が溢れ、品格を漂わせる。

500 SLで路上に出ると、V8エンジンが小さくささやく。通常は2速から発進させる4速ATは、メルセデス・ベンツらしくゆったりと確実に次のギアを選ぶ。稀に予想より長時間、同じギアが保持されることもある。

合理的にシンプルで落ち着ける空間

乗り心地はブルックランズ・エースより硬め。傷んだアスファルトにも動じない、安定性と一貫性がある。複雑に組み合わされたアームとブッシュが小さくノイズを漏らすが、衝撃は見事に吸収される。

ステアリングホイールは、パワーアシストが加わり軽く回せる。正確性も高い。

インテリアは、ドイツらしい実直なレザーにウォールナット・パネルで仕立てられているが、一部には合皮も混在している。ブルックランズ・エースのようなクラフトマンシップは感じないものの、合理的にシンプルで、速度に関係なく落ち着ける空間だ。

ストロークの長いアクセルペダルを深く倒すと、心地良いV8ノイズが響いてくる。踏み込む勢いによっては、4速ATがキックダウンし、4000rpmのパワーバンドを活用してくれる。6000rpmでシフトアップされるが、回転数には明らかに余裕がある。

目一杯引っ張っても、息苦しいようなサウンドへ転じることはない。場面によっては、300rpmさらに回転数を高められることを発見した。ブレーキは、シャシーの落ち着きと同調するように淡々と速度を落とす。

今回のダークブルーの500 SLは初期型に当たる1990年式で、当時の新技術だったスタビリティ・コントロールは備わらない。限界領域まで攻め込むと、ステアリングには好ましくないフィードバックが伝わってくる。

刺激的なブルックランズ・エースのカーライフ

この頃のメルセデス・ベンツを複数台所有するオーナーのトーマス・ハワース氏は、「マッスルカーでクルーザーです」。と500 SLの特徴を説明する。

「製造品質には驚かされます。オリジナルの部品は、とても耐久性が高いんです。購入時には、AMGのモノブロック・アルミホイールを履いていましたが、本来の純正ホイールを探すのには苦労しました」

「燃費は飽きれるほど悪いですが、週末にしか乗らないので、あえて計算していません」。とハワースが笑う。これまで、目立ったトラブルには見舞われていないそうだ。

他方、R129型SLをライバルに見立てたブルックランズ・エースは、完全には並べていないことを実感する。現オーナーのパトリック・モイニハン氏のように献身的なマニアでなければ、今日での状態の維持は難しいだろう。

「フォードの部品には、ベース・モデルの年式に準じたナンバリングが与えられています。しかし、それ以外の部品はわからないことも多いんです。サスペンションのボールジョイントが古いジャガー420由来だと、最近自分で発見しました」

モイニハンは、刺激的なカーライフを楽しめるとも話す。2000年に注文したジャガーをキャンセルし、この1997年式を購入したことへ後悔はしていないという。

カリスマ性を感じる英国製グランドツアラー

ACカーズは1993年から1996年の4年間に、ブルックランズ・エースを46台しか販売できなかった。約5万ポンドの価格で、年間300台から400台を生産するというオートクラフト社の読みは甘すぎた。当初から財政的には厳しかった。

破綻後、1997年からも再起をかけて提供は続いたが、12台をラインオフしたところで力尽きている。同時期に、TVRとアストン マーティンからグランドツアラーが発売されたことも影響を及ぼしたはず。歴史ある英国ブランドの挑戦は、短く終わってしまった。

他方、メルセデス・ベンツはコンピューター制御の時代を迎え、大量生産の体制を整えていった。R129型は絶え間なく小改良を受け、2度のフェイスリフトが施され、ツインスパークで気筒あたり3バルブのV6とV8エンジンも投入。2001年まで生産は続いた。

それから20年以上が経過した今でも、当時に目指された最高の洗練性や動力性能が生む訴求力は揺るがない。唯一といえる威厳を、端正なボディが漂わせている。

それでも、英国製のグランドツーリング・ロードスターとして、ブルックランズ・エースにある種のカリスマ性を感じずにはいられない。設計水準は低くなく、多少の欠点はあるとしても、グレートブリテン島の田園地帯をクルージングするのに完璧だと思う。

協力:オールド・レッド・ライオン・リッチボロー

メルセデス・ベンツSL 500とAC ブルックランズ・エースのスペック

AC ブルックランズ・エース(1993~1997年・1997~2000年/英国仕様)

英国価格:4万9995ポンド(1993年時)/4万ポンド(約700万円)以下(現在)
販売台数:58台
全長:4420mm
全幅:1870mm
全高:1300mm
最高速度:231km/h
0-97km/h加速:5.9秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1440kg
パワートレイン:V型8気筒4942cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:263ps/5250rpm
最大トルク:44.1g-m/3250rpm
ギアボックス:5速マニュアル/4速オートマティック/後輪駆動

メルセデス・ベンツ500 SL(R129型/1989~2001年/英国仕様)

英国価格:4万9995ポンド(1993年時)/4万ポンド(約700万円)以下(現在)
販売台数:21万3089台
全長:4470mm
全幅:1812mm
全高:1303mm
最高速度:252km/h
0-97km/h加速:5.9秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1892kg
パワートレイン:V型8気筒4973cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:330ps/5500rpm
最大トルク:45.8g-m/4000rpm
ギアボックス:4速オートマティック/後輪駆動

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