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【ヒットの法則429】パサートCCは質実剛健なフォルクスワーゲンとしては異色のプレミアムサルーンだった

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【ヒットの法則429】パサートCCは質実剛健なフォルクスワーゲンとしては異色のプレミアムサルーンだった

2008年のデトロイトショーでデビューしたフォルクスワーゲン パサートCCは、自ら「コンフォートクーペ」を名乗るスタイリッシュな4ドア4シータークーペ。セダン、ヴァリアントに続く「第3のパサート」は、単なるパサートの派生モデルではなく、プレミアムサルーンとして開発された意欲作だった。ここではドイツ・ミュンヘンで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

CCはクーペカブリオレではなくコンフォートクーペ
GLやGT、RS、あるいはGT-Rなど、クルマの名称にはアルファベットが付き物だが、とくに最近はその傾向が強く、巷は略語の洪水である。聞くところではメルセデスはアルファベットの3文字組み合わせを片っ端から商標登録しているらしい。今回紹介するパサートCCもアルファベットが並ぶモデルだが、この名前「CC」は、これまでリトラクタブルハードトップを装備したプジョーなどが頻繁に使ってきた「クーペカブリオレ」ではなくて「コンフォートクーペ」を意味する。

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なぜコンフォートなのかと言えば答は簡単、ドアが4枚あるのでリアコンパートメントへの出入りが快適であるからなのだそうである。この点は後で検証することにして、まずはこのパサートCCとはどんなクルマなのか、開発意図はどこにあるのかについて考察してみたい。

フォルクスワーゲンのマーケティングでは、欧州向けにはファミリーカーの典型であるパサートを必要としない人たち、すなわちDINKSや子育てから卒業したベテラン夫婦がターゲット、とあまりかわり映えのしない説明をしている。

しかし本当のところは、このCCは総生産台数の60%をアメリカ市場に送り込むことを目指したクルマで、かつてブランドマネージメントを担当していたヴォルフガング・ベルンハルトが企画、さらに今は去ってしまったがチーフデザイナーであったムルナート・ギュナークの手でほぼ完成していた、旧フォルクスワーゲンマネージメントの遺産というべきモデルなのだ。

もちろん彼らが去った後になって新社長のDr.ヴィンターコルン、そして技術担当重役のDr.ハッケンベルク、さらには新たにチーフデザイナーに就任したダ・シルバなどが最終仕上げを行ったことはいうまでもない。

内装にはパサートの面影がほとんど残されていない
フォルクスワーゲン内ではB6と呼ばれている現行パサートをベースにしたこのパサートCCだが、ホイールベースは2711mmと同一ながら、全長4799mm、全幅1855mm、全高1417mmになった。パサートよりも31mm長く、35mm広く、そして55mm低い。

より長く、ワイドにそしてフラットになったのだから、シルエットは全体にスタイリッシュだ。さらに、クーペ風に前後になだらかに流れるルーフライン、サッシュレスのサイドウインドウがエレガントなプロフィールを作っている。

またフロントそしてリアエンドには独自のダイナミックなデザインが与えられているが、残念なのはホイールベースがパサートと同一なので前後のオーバーハングが長く、17インチタイヤが標準でもサイドビューがシーソーのようで安定感に欠ける点だ。

サッシュレスドアを開き、やや低めに位置しているドライバーズシートに腰を落とすと、そこにはパサートの面影はほとんど見当たらない。マルチファンクション付き3スポークステアリングホイール、ウッドとアルミのアプリケーションを与えられたダッシュボードとドアライニング、そしてアルカンタラシートにはベンチレーテッド機能も備わっている。インテリアはまるでフェートンかと思われるほどのアップグレード化が行われているのである。

クルマをスタートさせる前に、気になるリアシートへのアクセスと居心地を試みたが、ルーフ形状がクーペのように後方へ強くスラントしているので、ミニバンに慣れている日本人は小柄な人でも乗り降りに頭を意識して低める必要がある。キャビン内は1.4mのルーフ高ゆえに圧迫感はあるが、四人乗りということもあり、外から見るほど狭くはない。

試乗スタート地点のミュンヘン空港敷地内に設営されたパビリオンから乗り出したのは、3.6Lエンジンを搭載したトップモデルのV6 4モーション。プレスキットによれば、この直噴ガソリンエンジンの最高出力は300ps、最大トルクは350Nmで6速DSGを標準装備、1632kgのボディを100km/hまで5.6秒で加速し、最高速度は250km/hに達する。

走り出す前にちょっとボンネットを開けて驚いたのは、「ラクジュアリーパサート」を標榜するのにエンジンがむき出しであったこと。こんなところにアメリカ向け重視の本音が出ている。

ところで、このCCから4モーションの4WDシステムが改良されている。これまで前後の回転差によってクラッチのオンオフが行われていたが、新システムでは最大30バールのプレッシャーを発生する電磁ポンプがコントロールユニットからの信号に応じて必要な圧力をクラッチユニットに送り込む。その結果、前後のトルク配分がより正確に行われ、フル加速時における前輪の空転が避けられるようになった。

走り出して気になったのはこのV6エンジンの回転が意外にラフなことだ。低回転域から十分なトルクがあるので、スロットルを緩め、流すようにドライブしてようやくスムーズさが得られた。ちなみに帰路にテストした140psのTDIは終始スムーズであった。

一般国道を流しながら、あらためて様々な快適安全装備を試してみる。CCDカメラを備えるレーンアシストシステムにより、車線を逸脱するとステアリングに修正が入る。その入力は強すぎず弱すぎずで、日本製、たとえばホンダよりはやや弱いと思った。ただしこの感覚は主観的なもので、同乗していたドイツ人は「やや不自然で慣れが必要だ」と言っていた。

ドイツでは事故の14%が不用意な車線逸脱に起因しているといわれるので、このシステムは重宝されるだろう。ところで、逸脱を3度繰り返すと、ドライバーが意図しているとみなして、このシステムはキャンセルされる。

またアダプティブシャーシコントロール(DCC)が路面状況を常にチェックし、ダンパーフォースだけでなくステアリングサーボの特性も制御して最良の乗り心地とドライバビリティを監督している。制御に関しては、コンフォート、ノーマル、そしてスポーツの3つのプログラムからセッティングを選ぶことも可能だ。

ちなみに今回のドイツにおけるアウトバーンや一般道路を含むルートでは、ノーマルセッティングで十分満足できた。このほかパークアシストやオートマチッククルーズコントロールまで備わり、まさに満艦飾だ。

新ランフラットタイヤをコンチネンタルが開発
最後になるが、ユニークで有効な標準装備である、コンチネンタル製のランフラットタイヤはぜひとも紹介したい。

フォルクスワーゲンがモビリティタイヤと名付けた新しいタイヤは、BMWなどに採用されているサイドウォールを強化したタイプではない。このタイヤには、コンチネンタルが開発したコンチシールと呼ばれる粘着性の高い特殊シーリング物質がタイヤプロフィールの内側に貼られており、たとえ釘などが刺さっても、穴はすぐに復元され空気が漏れない。しかもこのコンチシールはサイドウォールの強化や特殊リムを持ったホイールなどを要求しないので、乗り心地の悪化には繋がらない。さらにタイヤ製造工程で一度準備すれば、タイヤの寿命とほぼ同じ期間、効力を発揮し続けるという。

このテストに参加していたコンチネンタルのエンジニアによれば、この良いこと尽くめのシステムでこれまで起こったパンクチャーの85%はカバーできると語っていた。ただし残念なことに、このタイヤはしばらくの間、フォルクスワーゲンの車両に限って採用される。一般車両あるいはアフターマーケットに出回るには、少なくとも2年は待たねばならない。

さて、このパサートCCだが、もちろんアメリカ以外にも広く市場を求めている。日本の市場もその重要ポイントのひとつである。ただし日本ではメルセデス・ベンツCクラスとBMW3シリーズ、そしてアウディA4で輸入車Dセグメントは飽和状態である。目安となるパサートの販売台数が3400台程度では、たとえスタイリッシュなCCでも新たなユーザー獲得は難しく、価格設定によってはパサートを食ってしまう可能性が高い。

パサートCCは従来のパサートユーザーを簡単に引き寄せてしまうほどの高い価値観と魅力を持ったクルマなのだ。それゆえに共食いを避けるためにパサートという名前を付けない方が良いと思ったほどである。

パサートCC V6 4モーションの価格は4万8000ユーロ(約655万円)と、パサートの3.2L V6 4モーションとの差はわずか4325ユーロ(約70万円)と発表されている。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年6月号より)



フォルクスワーゲン パサートCC 3.6FSI 4モーション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4799×1855×1417mm
●ホイールベース:2711mm
●車両重量:1632kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3597cc
●最高出力:220ps/6600rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5300rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速MT
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.6秒
※欧州仕様

フォルクスワーゲン パサートCC 1.8TSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4799×1855×1417mm
●ホイールベース:2711mm
●車両重量:1430kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/5000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4200rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT
●最高速:222km/h
●0→100km/h加速:8.6秒
※欧州仕様

[ アルバム : フォルクスワーゲン パサートCC はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • アルテオンは斬新なスタイルだが、早くもデビューから6年。6気筒がなく、今ではパサートCCの3600が良いと感じる。
  • CCレモン♪
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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