ブランドの特色の核心を突いたM2
BMWの小さな高性能クーペ、M2が2代目へ進化する。彼らが誇るMモデルとして、発売から約1年も前にプロトタイプへの試乗が許された。だが、一部の技術的な質問には答えてもらえなかった。まだ明かせない理由があるのだろう。
【画像】BMW M2 クーペ 次期G87型と先代のF87型 欧州の同セグメントモデルとも比較 全125枚
近年、自動車メーカーは早期の話題喚起のため、プロトタイプへの試乗機会を設けることが多い。自動車メディアとしても、新モデルの情報をいち早くお伝えできるから喜ばしい。ただし今回は、車重や燃費など一部の情報はお伝えできない。
新しいBMW M2は、クルマ好きにとって期待の新人といえる存在だろう。最新の技術が搭載され、パワフルでありながら、ボディサイズはコンパクト。先代は世界中で多くの熱狂的なファンを獲得した、高性能なスポーツカーだ。
すこぶる速いだけでなく、伝統のあるBMWとして純粋さも残されていた。モデル・ヒエラルキーとしては底辺に位置するものの、ブランドの特色としては核心を突いた個性が与えられていた。
次期M2の開発へ関わっている技術者やデザイナーなどは、その重要性を理解しているはず。実際、G87型と呼ばれる新しい2シリーズの開発では、早い段階でM2にも取り組む必要性を認識していたようだ。
ちなみに先代のF87型と呼ばれた2シリーズのクーペは、後輪駆動のF22型2シリーズ・クーペをベースとしていた。さらには後輪駆動だったハッチバック、1シリーズとも距離が近かった。
新プラットフォームで増えた車重とサイズ
しかし新しいG87型では、BMWの大型モデルが共通して採用する、クラスター・アーキテクチャというプラットフォームをベースとしている。全長が5m前後ある、8シリーズ・クーペやSUVのBMW X7と同じものだ。
この変化は、技術的にも大きな影響を与えたらしい。「プラットフォームの違いが、サイズや車重の増加につながることは理解していました」。と、Mモデルの開発主任技術者、スヴェン・エッシュ氏は話す。
「その重量とどう戦うか、早いステージで決定する必要がありました。軽さを求めるには、多くの犠牲が必要になります。反対に車重を受け入れ、最高の技術を自由に搭載することで、パフォーマンスを最大化することも可能でした」
「最終的には、その決断は比較的難しくないものでした。多くの妥協を受け入れれば、開発中のクルマ(M2)が、より多くの能力を発揮できることも理解していました」
「一方で、よりパワフルで速く、先進的で一体感のある完全なモデルを作ることもできます。1つのトレードオフだけで」。ちょっとした言葉の綾にも聞こえる。スポーツカーの場合、車重が増えることでのメリットは限定的といえるからだ。
BMW側も、仕上りには強い自信を持っていないのかもしれない。「これから数kmの体験では、マイナス要因が見えるかもしれません」。と、エッシュは続けた。
次期M2の正確な車重を伝えることには、明らかに積極的ではない。少なくとも、先代のM2の1575kgと新しいM4クーペの1725kgとの、間に収まることは想像できる。
ドライブトレインはM3やM4譲り
前後アスクルやシャシーの補強ブレース、トランスミッション、アクティブLSDなど、ドライブトレインの由来は教えてくれた。ターボチャージャーで過給されるS58型の直列6気筒エンジンも。
「(増えても良いという)重量に関する決定で、M3やM4が搭載するコンポーネントを自由に使用することが可能になりました。実際、わたしたちはそれを実施しています。非常に優れていると知っていたので」。エッシュが微笑む。
「エンジンは若干デチューンされています。最高出力はM4と同じではありません。先代のM2 CSと同じ水準(450ps)だと考えてください」
「ステアリングとリアのディファレンシャル、スタビリティ・コントロールは、設定を変更しています。M4より110mm短い、M2のホイールベースへ対応させるために」
「フロント側には引き締めた専用のサスペンション・スプリングを組み、ターンイン時の反応を鋭くしています。またリアにも柔らかいスプリングを組むことで、コーナー中ほどでの挙動を機敏にしています。楽しいと感じられるように」
ハードウエアの大きな変更点は、このスプリング程度のようだ。「M3ツーリング用に開発したアダプティブダンパーも採用しています。柔らかいリア・サスペンションに掛かる横方向の負荷を受け止めることが目的です」
彼の説明を聞くと、M2はM4よりひと回り小さい、双子の兄弟のように聞こえてしまう。開発に数年掛かるという事実が、不思議に思えてしまう。
ボンネットが長い従来的なフォルム
だが、試乗コースとなったサーキット、オーストリアのザルツブルクリンクでM2を目の当たりにすると、容姿は明らかにM4とは異なる。ボディラインもプロポーションも、独自性が強い。しっかり偽装されていても伝わってくる。
M2のフォルムは、アグレッシブさが抑えられた従来的なクーペに見える。フェンダーラインが強く膨らみ、ギュッと引き締められた面構成が特徴といえる。
先代のM2ほどコンパクトではないし、M1クーペのように好戦的でもないようだ。それでも充分小さく感じられ、ボンネットが長くキャビンがタイトにまとまっている。
全体のスタンスから、高いエネルギーを放出する高性能な後輪駆動マシンだということを感じ取れる。ワインディングをさっそうと走りそうな、雰囲気が漂っている。
新しいM2が生産されるのは、2シリーズ・クーペと同じメキシコの工場。そこから英国へは、2023年4月頃から届けられる予定だという。
モデルの構成はシンプル。四輪駆動のxドライブは用意されず、後輪駆動のみ。450ps前後と予想されるエンジンの最高出力にも、バリエーションは設けられない。
トランスミッションはクラッチペダル付きの6速マニュアルか、トルクコンバーターによる8速オートマティックから選べる。こちらにはシフトパドルも付く。現在の市場では数少ない、FR+MTという組み合わせが選べるモデルになる。
この続きは後編にて。
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