メルセデスのジョージ・ラッセルが、自身二度目のポールポジションを獲得した。Q3ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)も1分12秒000というラッセルと同タイムを記録したが、先にこのタイムを出したラッセルが勝負を制した。
1000分の1秒までまったく同タイムのポール争いは、1997年の最終戦としてヘレスで行われた第17戦ヨーロッパGPでのジャック・ビルヌーブ(ウイリアムズ)、ミハエル・シューマッハー(フェラーリ)、ハインツ・ハラルド・フレンツェン(ウイリアムズ)以来27年ぶりとなる。
2024年F1第9戦カナダGP TV放送&タイムスケジュール
今季これまでの8戦では不調が続いたメルセデス。いや、むしろ2021年にレッドブルと激烈なタイトル争いを繰り広げたのを最後に、長く低落傾向にあったと言っていいだろう。
この翌年の2022年シーズンより導入されたグランドエフェクトカー規約に合わせたマシン開発に失敗し、それ以来の優勝は2022年のラッセルによる1勝のみ。今季はまだ一度も表彰台に上がれず、コンストラクターズ選手権では暫定4位。レッドブル、フェラーリはもちろんのこと、台頭著しいマクラーレンにも大差をつけられている。
それが今週末のカナダGPでは、見違えるような速さを見せた。初日は雨が降ったり止んだりのコンディションだったが、ラッセルが総合2番手。そして完全ドライだった二日目のフリー走行3回目では、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が2番手フェルスタッペンに0.3秒以上の大差をつけて堂々のトップタイム。ラッセルも3番手につけた。
その勢いは予選でも衰えず、Q1はフェルスタッペンですら2セットのニュータイヤを投入するなか、メルセデスのふたりは1セットのソフトタイヤで通し、ハミルトンが3番手、ラッセルが7番手のタイムでQ2へ進出。Q2はフェラーリが2台揃ってトップ10入りを逃す大波乱だったが、ラッセル、ハミルトンの順でメルセデスがワンツーでQ3に進んだ。
そしてQ3はラッセルがポールポジションを獲得。ハミルトンは1回目のアタックではセクター2で最速タイムを叩き出したものの、最後のアタックでタイムロス。それが響いて7番手に終わったものの、本人は「自信を持ってドライビングできている」と、久しぶりのポジティブなコメントだった。
ではメルセデスの復調は本物なのか。ジル・ビルヌーブサーキットは長いストレートを低速コーナーでつなぐ典型的なストップ&ゴーのコースで、マシン戦闘力の優劣を評価しにくいのは事実だ。
しかし第6戦マイアミGP以降、エミリア・ロマーニャ、モナコ、そして今回のカナダと、メルセデスはフロアやフロントウィング、足回りなど矢継ぎ早にアップデートを投入してきた。
その目的は主にマシンの予測不可能な挙動や、車高を下げた際のバウンシングを防ぐことにあり、カナダのようなドライバーの思い切りの良さがタイムに直結するコースで、その効果がしっかり出たように見える。
一方でチームとしても、常勝時代を彷彿とさせる戦い方が戻りつつある印象だ。今回の予選でも、雨が確実視された予選Q1でメルセデスの2台だけが遅れてコースイン。
天候悪化と路面コンディションの改善を天秤にかけて後者を選んだことが、ニュータイヤ1セットのみでのQ2上位進出につながった。そしてQ2では一転して真っ先に2台をコースに出し、2セットのソフトを使ってワンツーを叩き出した。
レッドブル、フェラーリ、マクラーレンの三つ巴の戦いからはじき出されたかに見えた今季のメルセデスだが、そろそろ歯車がかみ合い出して来たようだ。
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