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今季初勝利も、課題を残したARTA。優勝16号車は給油ミスであわや、8号車は不可解な第2スティントで戦略狂う

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今季初勝利も、課題を残したARTA。優勝16号車は給油ミスであわや、8号車は不可解な第2スティントで戦略狂う

 鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーGT第5戦。優勝したのは16号車ARTA MUGEN NSX-GTの福住仁嶺、大津弘樹組だった。16号車は開幕からピット作業ミスなどによるペナルティに泣かされていたため、決勝前にはドライバーが勝利の鍵として「ペナルティを食らわないこと」を挙げるほどであったが、実際のレースではペナルティもなく、ポール・トゥ・ウィンを飾った。

 しかし、その舞台裏ではあわや勝利を失いかねないミスがあった。スタートドライバーの大津が最初にピットインした際、給油した燃料が想定よりも少なくなっていたのだ。幸い、この時はFCY(フルコース・イエロー)宣言直前にピットインしたため大きなマージンを得たが、第2スティントでの大津は「2周分以上の燃料」を稼ぐための燃費走行を強いられ、ペースを落とさざるを得なかった。

■23号車MOTUL AUTECH Z、スキッドブロック規定違反により車検不合格。暫定2位となるも失格に|スーパーGT第5戦鈴鹿

「今週は持ち込みからクルマが良かったので、ミスさえなければ勝てる力があると思っていました。今回16号車が勝ちましたが、色々ミスもありつつ……」

 レースを振り返り、そう切り出したのは、2台のARTAのメンテナンスを請け負う無限(株式会社M-TEC)の田中洋克氏。鈴木亜久里監督の下、チームディレクターとしてチームの舵取りも行なう存在だ。

「(給油ミスは)幸い致命的ではありませんでしたが、FCYのタイミングでピットインできたという幸運もありました。あのマージンがあったので、燃費走行ができました」と振り返る田中ディレクター。第2戦富士では8号車にファイナルラップ直前でガス欠症状が発生したが、この時の問題とは全く別物だという。

「富士で燃料が足りなかったのはクルマの方で根本的に問題があり、条件によっては想定量(の燃料)が入らないという症状が出ていましたが、それは解決されました。今回は給油量を間違えた、というところです」

 また8号車に関しては、16号車同様に週末を通して速さをアピールしていたが、最後まで流れを掴みきれずにレースを終えた。

 予選では大湯都史樹がQ2のアタックでミスし、4輪脱輪により7番手に。ただ、逆転を期したレースでは最初のスティントからペースに手応えがあり、77周のレースの10周にも満たないタイミングでピットインして、クリーンエアで走る戦略を選んだ。

 残り70周近くをあと1回の給油で走り切らなければならないため、作戦としては燃費的に非常にタイトだったのではないかと問うと、田中ディレクターはギャンブル的要素はなかったと語る。

「あれは全然ギャンブルではなく、元々そういうスケジュールを組んでいました」

「あの(予選)ポジションですし、8号車もレースペースには自信がありました。その中で前に出るにはクリーンエアで走る必要があるので、フューエルウインドウのミニマムで入ることを考えていました。ある程度の燃費走行は必要になりますが、そこまで必死にやらなくても大丈夫な状況でした」

 しかしながら、ピットアウトした8号車は全くペースが上がらず、逆にライバルたちの先行を許す展開に。8号車は僚機16号車と比べてもソフトなコンパウンドのタイヤを履いたため、ウォームアップにも懸念はなく、チームにとっては実に不可解だったようだ。

 スタートドライバーを務め、第1・第2スティントを走った野尻智紀はこう振り返る。

「ピックアップもすごかったし、ちゃんとタイヤがついていないのではないかと思うくらいでした。セカンドスティントで最初から最後までペースを上げられなかったのは痛かったですね」

「履いたのはファーストスティントと同じタイヤでしたが、内圧が低い時の車高がフィットしなかったのか……かなりグリップが感じられなかったです」

 その後、内圧をかなり上げるようにという野尻のアドバイスもあってか、大湯にドライバー交代してからのペースは安定していた。しかし大湯は37号車Deloitte TOM'S GR Supraと入賞圏内の10番手を争う中でヘアピンで接触。タイヤをパンクさせてしまい、万事休すとなった。

「速いんだけど、結果に繋がってないですからね。なぜか、どちらかがやらかしちゃうという……。噛み合ったら最強なんですけどね」と苦笑する田中ディレクター。しかし、“勝てるスピード”を見せ、“勝てる雰囲気”を醸し出していることはせめてもの救いだと語るが、次戦SUGOが8号車にとって優勝がマストなのは言うまでもない。

 また、8号車にはスーパーフォーミュラ2連覇中の野尻と一瀬俊浩エンジニアというパッケージがあり、そのデータ解析力と修正力はスーパーフォーミュラでも証明済みのため、田中ディレクターは8号車の浮上を信じてやまない。そして今季ここまでメカニックのミスが取り沙汰される中でも、自分が干渉する必要はないとして、チームメンバーへの信頼を示した。

「うちのメカニックはひとりひとりが責任を持ってやってくれています。自分が口うるさく言わなくても、何か問題が起きた時はどうしたらいいかを自分たちで考えてくれる子たちです」

「ミスをして、とぼけているような子はここに入れないですから。良いメンバーに恵まれたなと思っています」

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