輸入車 [2024.08.17 UP]
フェラーリは名前だけで物語がある【フェラーリ プロサングエ】【九島辰也】
文●九島辰也 写真●フェラーリ、ランボルギーニ、フォード
BYD 新モデル「SEAL」日本上陸 ブランドの魅力と実力を兼ね備えたフラッグシップEV
久しぶりにプロサングエに乗りました。フェラーリ初の4ドアモデルです。最後に乗ったのはいつでしょうか。昨年2月にイタリアの雪山でテストドライブしたのを覚えていますが、その後は一度くらい東京で走らせたような。フェラーリですからね、そんなもんです。フェラーリ専門誌にでも携わっていなければ、そう何回もステアリングを握ることはありません。
ですが、不思議とスッと走らせられるのもフェラーリの凄さかもしれません。特に近年のモデルはそんな感じです。GTC4ルッソとかF8トリブートあたりかな。扱いやすさを感じます。
プロサングエはその延長線上にあります。なので、気負いなくエンジンをかけ走らせられます。ただ座った瞬間だけ脳がバグるのは確か。フェラーリなのに目線が高いからです。他のフェラーリでこれはありませんからね。「あ、そうか」となるまで0.1秒くらいかかります。
フェラーリ プロサングエ
それにしてもこのクルマにはフェラーリ初の装備やオリジナルのストーリーが溢れています。プロサングエという名前からそうです。これはイタリア語で“サラブレッド”や“純血”を意味するそうですが、フェラーリらしくありません。これまでのパターンで言えば、排気量やシリンダーの数を表す数字や地名が使われていたからです。488GTBの数字は1気筒あたりの排気量を、458イタリアは4.5リッターの排気量とV8を示します。でもって、地名は、最近だとローマやポルトフィーノ、カリフォルニア、それとモデナやマラネッロといったフェラーリに関連する地名が使われたりします。イタリアやスーパーアメリカのような国名を付けることも。屋根開きをカリフォルニアやアメリカと命名するのは、そこでたくさん売るため。とてもシンプルなネーミングです。
なんて考えると、プロサングエはやはり異質。フェラーリの中では異端児な気がします。
この文脈でのネーミングはランボルギーニを思い出します。馬ではなく闘牛にちなんだ名前が連なります。アヴェンタドールはかつてスペインの闘牛場で活躍した雄牛だし、ムルシエラゴやレヴェントンもそうです。ディアブロは悪魔の意味を持ちますが、こちらも19世紀に実存した闘牛だとか。ちなみに、ミウラはそんな闘牛を飼育していたスペインの牧場の名前。日本語の三浦とは関係ないのでお間違えないように。
ランボルギーニ ミウラ(1969年)
ランボルギーニが闘牛の名前にこだわるのはとても筋道が通っています。そもそもエンブレムが“ファイティングブル”なのですから納得です。となると、逆にフェラーリの方がへそ曲がりのような気がしなくもありません。エンブレムが跳ね馬(カヴァリーノ・ランバンテ)なのですから、馬にまつわるネーミングが付いても不思議ではありません。馬の種類はたくさんありそうですから。
フォード・マスタングだってそうです。エンブレムは“ギャロッピングホース”、つまり駆け抜ける馬を意味します。そしてマスタングは北米種の馬。もしフェラーリが創業から馬の名前をモデル名に取り入れていたら、フェラーリ・マスタングなんて車名が誕生していたかもしれません。なんともユニークな。
フォード マスタング(1964年)
映画「フォードvsフェラーリ」を観てもわかるように、この2社はいろいろと因縁がありますからおもしろい。近年ではフェラーリが“F150(エフ・ワン・フィスティ)”というネーミングを付けたかったのですが、フォードが商標を持っているため実現しませんでした。そりゃそうですよね。フォードF150は北米でナンバー1セールスのピックアップトラックですから無理もありません。いくらフェラーリがレーシングカーにF150のコードネームを使っていたからといっても、市販車に命名するのは不可能でしょう。もし実現しても、アメリカ人は「フェラーリがトラックを作った!」と勘違いするだけです。
フェラーリ プロサングエ
プロサングエの話をしようと思いながら名前だけで脱線してしまったので、それ以外はまたの機会にします。それにしてもクルマって不思議ですよね。名前だけでいくらでも話が広がります。誰か止めてくれないと、ずっと続けちゃいそうです。
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