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「グレングラント 65年」がアンベール──1本880万円という稀少なシングルモルトを味わえる人は誰?

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「グレングラント 65年」がアンベール──1本880万円という稀少なシングルモルトを味わえる人は誰?

180年の歴史を誇るシングルモルトスコッチウイスキー「グレングラント」から長期熟成の「グレングラント65年」が世界限定151本でリリース。日本では抽選販売される。

1本880万円のシングルモルトを味わいに香港へ

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お酒の味わいや品質に大きな影響を与える要素として、しばしば、ワインはテロワール、日本酒はつくりだと言われる。ではウイスキーは? と聞かれたら、それはやはり熟成であろう。ウイスキーは樽で眠り続ける長い歳月のうちに、独特の色、まろやかなテクスチャー、味わいの複雑さと深みを得ていくが、それは樽の原料であるオークがフィルターとしてウイスキーに含まれる不純物を吸収し、代わりに糖やタンニンがウイスキーの中にしみ出すという、科学的には解明されていない現象が起こっているから。それゆえに、ウイスキーは熟成年数によってその価値を増していく。10年より15年、15年より21年……と、熟成年数によって価格がおよそ倍々になっていくのはご存知の通りだ。

では65年熟成させたウイスキーはどんな味わいになるのだろうか? このたび、スコットランド、スペイサイドの蒸溜所「グレングラント」が、新たなシリーズ「SPLENDOURS COLLECTION」を発表し、その第一弾として「グレングラント 65年」を世界限定151本のみ販売するという。そのお披露目の場である香港へ出かけた。「グレングラント65年」は1本800万円と庶民には手の届かない価格だが、果たしてテイスティングの機会はあるのだろうか?

華やかで透明感のあるシングルモルト「グレングラント」「グレングラント65年」に言及する前に、まず蒸留所について説明しておきたい。「グレングラント」はスコットランドの北部、スペイサイドで1840年に創業。二代目オーナーであったジェイムス・グラントがポットスチルの改良に着手し、通常よりも首が長い、独自のフォルムの蒸留機を採用することで、雑味のない、フルーティーな味わいをつくりあげた。また、このジェイムス・グラントはこの時代には珍しい旅行家でもあり、アフリカ南部からヒマラヤまで世界中を旅していたことでも知られる。冒険のたびに珍しい花や植物をスコットランドに持ち帰り、蒸留所内に建てたビクトリア朝風の広大なグラスハウス(温室)で栽培していた趣味人でもあったのだとか。「グレングラント」には21年、25年、30年熟成のシングルモルトから成る「グラスハウスコレクション」というシリーズがあるが、これはジェイムス・グラントのパイオニア精神と情熱へのリスペクトをもって名付けられている。

今まではこの「グラスハウスコレクション」が「グレングラント」の最高級レンジとして知られていたが、今回は65年とケタはずれの長期熟成である。それはいったいどんなウイスキーなのだろうか。9代目のマスター・ディスティラーであるグレイグ・ステーブルズは語る。

「今回の新シリーズである『SPLENDOURS COLLECTION』とは、ジェイムス・グラントがつくった庭園の名前にちなんでいます。いま、セラーのなかにある古酒のなかで最高のピークを迎えた1958年の原酒を2023年に瓶詰めしました」

この2023年には「グレングラント」はエリザベス女王の即位70年を記念して、世界に7本しかない「グレングラント デボーション70年」をリリースしている。英国サザビーズのオークションにて8万1250ポンド(当時約1500万円)で落札されたことでも話題になったが、この同じタイミングで1958年の原酒を“発見”したのだろうか。

「発見というわけではなく(笑)、セラーには多くの原酒が貯蔵されているので、それぞれがいつピークを迎えるのか見極めるのもマスター・ディスティラーの大切な仕事のひとつ。このウイスキーはフレンチオークのシェリー樽の中で68年間の旅をして、人のほぼ一生分の時間を凝縮しているわけですが、長年の熟成を経てもなお『グレングラント』独自のキャラクターを色濃く保持する、見事なシングルモルトとして完成しました。今後『SPLENDOURS COLLECTION』では、このような貴重な長期熟成ウイスキーをタイミングを見計らいつつリリースしていく予定です」

アートピースとして存在感を放つデキャンタとクレードル65年という年月を経たこのウイスキーは、180年余に渡って「グレングラント」が受け継いできたウイスキー造りの哲学と革新性の証でもあろう。また、そのボトルも稀少なウイスキーへのリスペクトを表現するのに充分な、アーティスティックな仕上がりとなった。

「ボトルは手づくりで、ラグジュアリーブランドのデザインを数多く手がけるクリエイター、ジョン・ガルビンと、プレミアムガラス工房である『Glasstorm』によって、1本ずつ丹念に仕上げられています。インスピレーションの源は、蒸溜所に広がる美しい庭園。植物が種から芽吹き、やがて育まれていく生命のサイクルを、造形美で表現しました」

ボトルを支えるクレードル(飾り台)は上質なチェリー材でメビウスの輪のような立体的フォルムを描き、永続性を象徴。その中心に収められた手吹きのデカンタは、植物の命の始まりである「種」を表している。さらにデカンタの表面には、かつてジェイムス・グランドがヒマラヤから持ち帰った「ヒマラヤン・ブルーポピー」が繊細な彫刻であしらわれているが、これは、稀少な生命への愛情と長い歳月をかけて生まれるウイスキーづくりを象徴的に表現しているのであろう。1本880万円という価格もさることながら、アートピースとして充分存在感のある佇まいだ。

さて、気になるテイスティングは……なにしろ貴重な液体なので、ほんの少々をその場にいたジャーナリストたちで分け合ったわけだが、まずは深みのあるマホガニー色の液色に魅せられた。さらに鼻をグラスに近づけるだけで甘やかに香る花の蜜のようなアロマ、さらに貴重な香木のようなウッディさが感じ取れる。そして口に含めば、熟したベリーやジャムを思わせる芳醇な果実感、英国でクリスマス・プディングと呼ばれるドライフルーツ入りのケーキ、さらにはチョコレート……ひと言では表せないフレーバーが次々に立ち上り、口中でうわんうわんと共鳴しあうさまは、まさにこのシングルモルトが今、ピークを迎えていることの証だと感じた。ほんのひと口ではあったが、その余韻は10分以上続いただろう。未練がましくも飲み干したグラスを手放せず、しばし嗅ぎ続けた。

その味わいは、単純に「おいしい」というものではなかった。65年という自分自身の年齢をはるかに(いや、少々なのか?)超えた歳月を、オーク樽のなかで静かに息づき、そのポテンシャルを最大に引き出されたシングルモルトの生命体としての刹那の姿だ。そしてそれは今もまだ生き続けている。この「グレングラント65年」を飲むとき、人は自分自身のこれまでと、それからこれからへの賛歌を聞くだろう。

グレングラント 65年原酒:フレンチオーク性シェリー樽熟成のシングルカスク
¥8,800,000(希望小売価格)

https://theglengrant.jp/にて抽選販売
抽選期間:2025年4月22日~2025年5月25日

文・秋山都 編集・岩田桂視(GQ)

文:GQ JAPAN 秋山都
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