6気筒エンジンの存在感に心が奪われる
E46型BMW M3 CSLのドアを開くと、スエードで仕立てたれたシートとステアリングホイール、ハンドブレーキ・レバーが迎えてくれる。ドアパネルやセンターコンソールなどは、艶のあるカーボンファイバー製パネルが覆う。
【画像】歴代M3の特別仕様 スポーツ・エボリューション/GT/CSL/GTS 最新のM3とM4も 全77枚
とはいえ、インテリアはブラックとグレーが基調。E36型M3 GTより高級に見えると同時に、ずっとシリアスだ。
キーをひねると、スチールブロックの自然吸気6気筒エンジンが放つ存在感に心が奪われる。オートメーテッド・マニュアル、SMGは、レーシングカーの様相で次のギアを選ぶ。
エンジンが温まるとともに、エグゾーストノートのドライな質感も高まる。サスペンションは、状態の良くない英国郊外の路面とは相性が良くない。それでも油温が上昇しレブカウンターのLED表示が消えれば、CSLの素晴らしい個性を炸裂させられる。
回転数の変化に合わせて6気筒が唸り、幅265mmのミシュラン・パイロットスポーツが路面を蹴る。背中がシートへ押し付けられる。6000rpmを超えると、エンジン・サウンドが迫力を増す。
重み付けの丁度いいステアリングホイールへは、しっかりフロントタイヤが路面を掴む感触が伝わってくる。8000rpmまで使い切れそうな自信が湧いてくる。
変速はスパスパと短時間で完了し、ブレーキの効きも目をむくほど。E30型M3と同様に、当たり前のようにハイスピードで運転できる。標準のE46型M3とは、印象がだいぶ違う。
V8エンジンへシフトしたE92型
その理由はいくつかある。車重は95kgも軽い。カーボンファイバー製のルーフで7kgを削っている。ドアもカーボン製で、荷室のフロアはアルミニウム製ハニカム素材でできている。
リアのバルクヘッドはコンポジット素材だし、リアガラスは薄い。オーディオとエアコンはオプションだった。バケットシートも手動式だ。
サスペンションも専用設定で、アルミ製リア・コントロールアームを採用するなど、通常のM3とは別物。ステアリングラックのレシオは、15.4:1から14.5:1へクイック化されてもいる。
直列6気筒エンジンには、ホットなカムが組まれ、カーボン製インテークマニホールド、専用のエグゾーストなどを装備。最高出力17ps、最大トルク0.5kg-mが上乗せしてある。これらの効果が絶大なのだろう。
V型8気筒エンジンを搭載したM3も、E46型で1度試された。2001年と2002年のアメリカン・ル・マン・シリーズに向けて開発された、M3 GTRだ。公道用モデルも10台が発売されている。
しかし、本格的にM3へ搭載されるようになったのは、2007年にE92型へモデルチェンジしてから。S65と呼ばれるユニットは、E60型M5に搭載された、V型10気筒エンジンから2気筒を削ったもの。アルミ製で、スチールブロックの6気筒より15kgも軽かった。
このエンジンは、様々なレーシングカーへも採用されている。なかでも広く知られているのは、2010年のBMW Z4 GT3マシンだろう。
サーキットの走行会がターゲット
もちろん、今回のオレンジ色のM3 GTSのフロントにも納まっている。カーボン製ルーフも標準装備だった。E46型M3 CSLの流れをくむ、ハードコアな容姿に仕上がっている。
この頃には、BMW M社の重要性も高まっていた。モータースポーツ以外での、公道でのアイデンティティも明確化されていた。それを受けて、GTSもツーリングカー選手権が前提ではなく、ファンによるサーキット走行会へターゲットが向けられていた。
既にパワフルな自然吸気のS65型V8エンジンは、4.0Lから4.4Lへと拡大。30psと4.1kg-mが上乗せされ、450psと44.8kg-mを発揮した。軽量なチタン製サイレンサーを備えたエグゾースト・システムは、素晴らしい咆哮を放った。
パワーアップと同時にリア・サブフレームも強化され、専用サスペンションで車高はダウン。フロントブレーキは、6ポッドのキャリパーが強力に挟む。
ドアを開くと、軽量なバケットシート以前に、ハードコアなロールケージが目に飛び込んでくる。ダッシュボードにはカーボン製トリムが大胆に用いられるが、センターコンソールは飾り気がない。ふんだんなスイッチ類は、2000年代後半のBMWらしい。
E92型M3 GTSのパフォーマンスは巨大。一般的な公道では発揮しきれない。アクセルペダルとステアリングホイールは、過敏にすら感じられる。サスペンションは硬く、常にソワソワと落ち着かない。
公道で乗れるレーシングカーといえるCSL
それでも滑らかな環境に出れば、M3 GTSの本領に迫れる。V8エンジンがエネルギーを爆発させ、タイトなシャシーが目覚ましいグリップ力を発揮し、デュアルクラッチATが迅速にシフトチェンジを繰り返す。
4.4LのV8エンジンは期待するより静かだが、レブリミット間際で響かせる雄叫びには酔いしれてしまう。特別なM3 GTSをすべてを発揮するには、サーキットが必要だ。2010年の発売と同時に、135台という限定数はすぐに売り切れたという。
1986年以来、BMWは20万台以上のM3を販売してきた。Mモデルへの信仰の厚さを物語る数字だといえる。
E36型のGTとE92型のGTSも、それぞれの時代背景を反映し、完成度は高い。とはいえ、BMWモータースポーツ社による実戦に向けたシリアスさを堪能できたE30型は、歴代のM3でもひときわ特別だろう。唯一、E46型のCSLを除いて。
公道で乗れるレーシングカーといえる性格付けが、他では得られないスリリングな体験を与えてくれる。しかも、過去最高と評すべきストレート6が納まっている。自宅へ連れて帰りたいM3は?と聞かれたら、E46型のCSLだと筆者は答えるだろう。
E30型からE92型まで 特別なM3のスペック
BMW M3 スポーツ・エボリューション(E30型/1989~1990年/欧州仕様)のスペック
英国価格:3万4500ポンド(新車時)/18万ポンド(約2880万円)以下(現在)
販売台数:600台(スポーツ・エボリューションのみ)
全長:4345mm
全幅:1680mm
全高:1370mm
最高速度:247km/h
0-97km/h加速:6.1秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1200kg
パワートレイン:直列4気筒2467cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:238ps/7000rpm
最大トルク:24.4kg-m/4750rpm
ギアボックス:5速マニュアル
BMW M3 GT(E36型/1994~1995年/欧州仕様)のスペック
英国価格:9万1000マルク(新車時)/8万ポンド(約1280万円)以下(現在)
販売台数:356台(GTのみ)
全長:4433mm
全幅:1710mm
全高:1366mm
最高速度:275km/h
0-97km/h加速:5.9秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1430kg
パワートレイン:直列6気筒2990cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/7100rpm
最大トルク:32.8kg-m/3900rpm
ギアボックス:5速マニュアル
BMW M3 CSL(E46型/2003~2004年/英国仕様)のスペック
英国価格:5万8455ポンド(新車時)/10万ポンド(約1600万円)以下(現在)
販売台数:1383台(CSLのみ)
全長:4492mm
全幅:1780mm
全高:1365mm
最高速度:259km/h
0-97km/h加速:4.8秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1425kg
パワートレイン:直列6気筒3245cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:360ps/7900rpm
最大トルク:37.5kg-m/4900rpm
ギアボックス:6速オートメーテッド・マニュアル
BMW M3 GTS(E92型/2010年/英国仕様)のスペック
英国価格:11万5215ポンド(新車時)/18万ポンド(約2880万円)以下(現在)
販売台数:135台(GTSのみ)
全長:4645mm
全幅:1804mm
全高:1387mm
最高速度:305km/h
0-97km/h加速:4.4秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−
車両重量:1530kg
パワートレイン:V型8気筒4361cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/8300rpm
最大トルク:44.8kg-m/3750rpm
ギアボックス:7速オートメーテッド・マニュアル
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