今となっては珍しい「直8」
新しいエンジンレイアウトが一度人気になると、非常に長く支持され続ける傾向がある。しかし、8本のシリンダーが一列に並んでいる直列8気筒エンジンは、珍しい例外である。
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直8のレイアウトは第一次世界大戦直後に導入され、欧州と北米で市販車および競技車両(コンペティションカー)の両方に広く採用された。
直列8気筒エンジン
今ではこのようなレイアウトを見ることは非常に稀である。それにはエンジンが長いというパッケージングの問題や、すべてのシリンダーに効率よく均等に燃料を供給することの難しさなど、さまざまな理由がある。しかし、直8ほど素晴らしいサウンドを奏でるエンジンは他にない。
あらゆるエンジンレイアウトの中でも群を抜いて壮大な直8に敬意を表し、これを搭載した29台の市販車と、その後に登場したコンセプトカーを年代順に紹介しよう。
イソッタ・フラスキーニ・ティーポ8(1919年)
一般に販売された最初の直列8気筒エンジン搭載車として認知されているのが、ティーポ8(Tipo 8)だ。イタリアのイソッタ・フラスキーニ(Isotta Fraschini)社は排気量5.9Lの直8エンジンを開発し、第一次世界大戦後初の自動車として発売。ライバルであるロールス・ロイスやイスパノ・スイザに対抗する高級車であった。
排気量は後に7.4Lに拡大され、ティーポ8Aと8Bに搭載されたが、後者は1930年代の世界恐慌によって市場を失った。
レイランド・エイト(1920年)
イソッタ・フラスキーニが直8の新たなライバルとして迎えたのが、英国のレイランド(Leyland)が投入したエイト(Eight)だ。後に陸上速度記録を樹立し、記録挑戦中に事故死したジョン・パリー=トーマス(1884~1927年)をチーフエンジニアに迎えて誕生したエイトは、当初6.9Lエンジンを搭載していた。
イソッタ・フラスキーニ社と同様、レイランドも排気量拡大の必要性を感じ、1921年には7.3Lへ拡大したが、その2年後には生産を中止した。
デューセンバーグ・モデルA(1921年)
米国車として初めて直8を搭載したモデルA(Model A)は、当初は単に「ストレート・エイト」と呼ばれていた。排気量4.3Lで、1気筒あたり2つのバルブを使用するオーバーヘッドカムシャフトを備えている。
デューセンバーグ(Duesenberg)は後のモデルJで、1気筒あたり2つのカムと4つのバルブを備えた7.0L直8を導入する。後継車に駆逐されたとはいえ、モデルAは当時、高速の高級車として高く評価されていた。
ブガッティ・タイプ30(1922年)
直8ブガッティの最初のモデルは、1921年のタイプ29グランプリ(Type 29 Grand Prix)である。その2.0Lエンジンは翌年、市販車として初めてタイプ30に採用された。
レイランドやイソッタ・フラスキーニのような高級車ではなく、高性能車であったタイプ30は1926年まで生産され、後継のタイプ38にバトンを繋いだ。他の直8ブガッティ(そのうちの1台は後述)は、1950年代に本家が衰退するまで、さらに数年間生産された。
パッカード・エイト(1924年)
米国メーカーの間でV12エンジンの一時的なブームを巻き起こし、それが衰退していくのを目の当たりにしたパッカード(Packard)は、1924年に方針を転換した。ツイン・シックスに代わる同年の最上級モデルはシングルエイト(Single-Eight、後に名称変更)で、ボディスタイルは9種類あるが、エンジンはすべて新しい直8で、排気量は当初5.9Lだった。
パッカードは、ポンティアックを除くどの米国メーカーよりも長く、直8のレイアウトに忠実であり続けた。最終的にV8を導入する前年、最後のパッカードが生産される3年前の1954年まで、直8を提供していた。
オーバーン8(1925年)
オーバーン(Auburn)の直8エンジンは、ライカミング社によって生産されていた。ライカミングは1927年、オーバーンを所有する実業家エレット・ロバン・コード(1894~1974年)に買収されることになる。このエンジンは、まず8-63に搭載され、その後スピードスター(写真)を含む複数のモデルで使用された。
排気量は4.6Lまたは4.9Lで、1937年にオーバーンが倒産するまで同社の主力パワートレインとして活躍した。
ハップモービル・シリーズE(1925年)
ハップモービル・シリーズE(Hupmobile Series E)は、ハップ・モーター・カンパニー(Hupp Motor Company)社としては異例の高級車であると同時に、4.0Lの直列8気筒エンジン搭載車としては異例なほど安価でもあった。価格は1795ドル(現在の約3万1000ドルに相当)からで、デューセンバーグの半分以下だった。
その後、ハップモービルの直8モデルは複数登場したが、同社は1939年に閉鎖され、今日ではあまり知られていない。
スタッツ・バーティカル・エイト(1926年)
1926年型スタッツ(Stutz)に搭載された新型4.7L直8は、宣伝用資料に「振動を排除したエンジン」と記述されていた。よほど自信があったのだろう。また、「90馬力以上」のパワーを発生するとも謳われていた。
さらにパワーを求めたスタッツは、後に排気量を5.3Lに引き上げ、デューセンバーグと同様にオーバーヘッドカムシャフトとバルブの数をそれぞれ4本と32個に増やした(それまでは2本と16個)。このバージョンのエンジンは1931年に発表され、最高出力156psという圧倒的な出力を誇った。
ブガッティ・ロワイヤル(1927年)
控えめなサイズの直列8気筒を発表した5年後、ブガッティはまったく別の方向に進み、市販車用としては最大級の12.8L直8エンジンを開発した。この巨大なエンジンは、ブガッティ史上最長の自動車であるタイプ41(別名:ロワイヤル)に搭載された。
しかし、非常に高価であったため、大恐慌に見舞われた1930年代には苦戦を強いられた。ロワイヤルはごくわずかしか生産されなかったが、エンジンは活路を見出し、1950年代までフランスの鉄道車両に使用された。
メルセデス・ベンツ・ニュルブルク460(1928年)
メルセデス・ベンツ初の直列8気筒エンジンはニュルブルクに搭載された4.6Lで、その車名は完成したばかりのニュルブルクリンク・サーキットで大規模テストが行われたことに由来する。1928年当時としては背が高く、ファッショナブルではなかったが、翌年末までに車高を低くエレガントに見えるように再設計された。
1931年には排気量が4.9Lに拡大され、キャブレターの変更とともに最高出力が80psから100psに引き上げられた。1930年代の終わりには、その5倍以上の出力を持つスーパーチャージャー付きの直8が、史上最強のグランプリカーに採用されるようになった。
スチュードベーカー・プレジデント(1928年)
プレジデント(President)は1926年に5.8L 6気筒エンジンを搭載して発売されたが、スチュードベーカーの最高級モデルには直列8気筒の方がふさわしいと思われた。案の定、1928年には6気筒に代わって、小排気量だが間違いなくファッショナブルな、最高出力100psの5.1L直8エンジンが採用された。
同年の7月と8月には、8気筒を搭載した4台のプレジデント(ロードスター2台とセダン2台)がアトランティックシティ・スピードウェイで19日間走行し、平均時速63.99マイル(約103km/h)から68.37マイル(約110km/h)で3万イルを走破した。
ウーズレー21/60(1928年)
21/60は、ほぼ同じ排気量の直6と直8エンジンが用意された珍しいモデルで、どちらも2.7Lだった。特に高価なモデルでなくても8気筒を搭載できることを実証したが、金融危機に陥っていた同時としてはやり過ぎであった。
6気筒の21/60は1935年まで存続したが、人気の低かった8気筒はわずか536台が販売されただけで1931年末に生産中止となった。
コードL-29(1929年)
実業家エレット・ロバン・コードの名を冠した短命ブランド、コード初のモデルはライカミング製4.9L直8を搭載している。同じエンジンを使用するライカミングとオーバーンはともにコードの所有だったため、当然の選択だろう。
エンジンはおなじみのものだったが、L-29の前輪駆動レイアウトは驚くほど革新的であった。しかし、販売にはそれほど繋がらず、わずか4400台を出荷して1932年以降に生産終了となった。
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みんなのコメント
という方程式が成立してた頃の古典的価値観だな。
今じゃパッケージ優先のV型もあるし、そもそもエンジンが過去の遺物。
スポーツならキャブフォワードのミッドシップにはロングノーズじゃ太刀打ちできない。
過去の徒花。