世界で多く売れたクルマを見ると様々なことがわかる
text:Al Suttie(アル・サティ)
【画像】2019年に世界で最も売れたクルマ ベスト5 全189枚
2019年に世界で最も多く売れた20台のクルマを振り返ってみると、様々なことがわかってくる。
世界のある地域ではクルマの販売台数が成長を続ける一方、別の地域ではこれまで多く売れていたモデルが販売台数を減らしている。
そしてそのトップに君臨するモデルはさらに販売台数を伸ばし、自動車の歴史に新たな記録を刻もうとしている。
今回ご紹介する20台の中には、日本や英国の読者には馴染みのない車名も含まれているだろう。
しかし、ある地域で非常に多く売れているクルマが、世界全体で見てもかなりの台数を占めることになるという事実をわかっていただけるに違いない。
それでは2019年に世界で最も多く売れたクルマを、20位から見ていこう。
データは300を超える公式発表を基に情報を収集・整理したグローバル・オート・データベースの数字を参照にしている。
20位 ヒュンダイ・エラントラ 51万3813台
ヒュンダイ・エラントラは、母国の韓国ではアヴァンテと呼ばれているコンパクト・セダンだ。中国やロシアで非常に多く売れているため、ヒュンダイは現地に工場を構えて生産している。エラントラは他にも、米国や台湾、そして韓国の蔚山にあるヒュンダイの工場などで生産されている。
2019年の販売台数は前年から15.1%減少した。だが、これは既にモデルライフ末期にあたるためと考えられる。
2021年に新型エラントラが発売されたら、2018年から2019年にかけて減少した9万台を取り戻すことができるだろう。
19位 ヒュンダイ・トゥーソン 52万7238台
前年より販売台数は減少したものの、ヒュンダイ・トゥーソンは2019年も20位以内に留まった。世界全体における2019年の販売台数は、2018年から7.2%減とかなりのダウン。
SUV市場は大きく拡大を続けているにもかかわらず、トゥーソンの販売台数は約4万台も減ったことになる。
しかし、ヒュンダイはおそらく焦ってはいないはずだ。同社は2019年の世界自動車ブランド別販売台数順位で6位に入っている。
グループでも2019年にヒュンダイ・キアはグループ合わせて700万台以上を売り上げ、グループ別順位の5位となっている。
18位 スズキ・スイフト 53万9432台
スズキ・スイフトは、世界的な成功を収めているというだけでなく、2019年の販売台数がトヨタ・ヤリス(ヴィッツ)と比べても約1万4000台ほど少ないだけだったということも印象的だ。
スイフトの成功は、主に巨大なインド市場(現在世界で4番目に大きな市場)でかなりのシェアを占めていることによる。
スズキは同国においてマルチ・スズキという子会社で生産・販売を展開している。
スズキは2019年も20位以内に入ったことに安堵するだろうが、スイフトの販売台数は2018年から18.1%も落ちている。2019年のトップ20の中では最も大きく減少したことになる。
17位 トヨタ・ヤリス(ヴィッツ) 55万3950台
トヨタがなぜ世界最大の自動車メーカーなのか、ヤリスを見ればわかるかもしれない。世界で最も多く売れた20台の中に、ヤリスを含め4台のトヨタ車がランクインしているのだ。
しかも、依然として世界36カ国で最も売れているハイラックスが、2019年はトップ20から落ちたにもかかわらず、である。
地域によってはヴィオスという車名で売られているヤリスは、2018年と比べて2019年は11.2%アップ。約5万5000台の販売増加となった。
16位 フォルクスワーゲン・パサート 57万2043台
ホンダ・アコードやトヨタ・カムリなど他のセダンにとっては吉報かもしれない。フォルクスワーゲン・パサートの年間販売台数は、2018年から2019年にかけて13.5%も減少した。
セダンやワゴンも含め、2019年に販売されたすべてのパサートは、前年より約6万台ほど少なかったことになる。
巨大な中国市場でマゴタンという車名で売られているモデルも、パサートの世界販売台数に含まれることが、フォルクスワーゲンにとって多少の救いとなった。
15位 ホンダ・アコード 59万5104台
現行型で10世代目となるホンダ・アコードは、今や世界の多くの市場でベストセラーから姿を消してしまったものの、依然として米国ではかなりの台数が売れ続けている。
2019年にもこのホンダの中型セダンは、米国だけで25万台以上を売り上げた。他にもいくつかの地域で根強い人気を保っているのだ。
2019年の世界販売台数は、2018年と比べて11.6%の増加。これによってアコードは15位に入ることができた。
14位 ホンダHR-V(ヴェゼル) 62万2154台
多くの市場において、ホンダHR-Vは最も地味なSUVの1つかもしれない。しかし、2019年の世界販売台数では、前年から8.2%減つまり約5万5000台ほど減ったにもかかわらず、14位に入ることになった。
販売台数が減少した原因は、HR-Vの発表からだいぶ年月が経っていること、そしてトヨタRAV4などの新たに登場したライバルたちに販売を奪われたためだ。
ホンダは2019年の途中でHR-Vにアップデートを施し、2020年には売れ行きの落ち込みに歯止めがかかることを期待している。
13位 フォルクスワーゲン・ゴルフ 64万1322台
世界全体における販売が、地域ごとの販売とどれほど違うかを示す好例である。欧州では文句なしの一番人気を誇るフォルクスワーゲン・ゴルフだが、世界全体でみると13位に過ぎない。
先ごろ発売された8代目の新型は欧州における販売を明らかに後押ししたものの、他の地域ではフォルクスワーゲンの印象が薄まったことは否めない。
欧州で増したゴルフのアピールと、世界全体に対するトヨタ・カローラの訴求力が比較された結果、2019年のフォルクスワーゲン・ゴルフの販売は、前年比12.4%も減少した。
モデルチェンジの過渡期だったことがその一因と説明できるとはいえ、このドイツ車メーカーにとってトップ10入りを逃したことは大きな打撃に違いない。
12位 シボレー・シルバラード 64万2126台
シボレーのシルバラードは米国で3番目に売れているクルマだが、フォードのFシリーズやダッジのラムという2つライバルには差をつけられている。フォードは2019年に、シルバラードの2倍近い台数を売り上げた。
それでもシルバラードは、ほとんど北米における販売数の総計のみで、世界で12番目に売れたクルマの位置を占めた。
2019年のシルバラードの販売は、前年比7.2%のアップだった。米国における販売はわずかに減少したものの、カナダやメキシコでの人気がこれを埋め合わせる以上に増え、結果として2019年の販売台数は2018年から4万3000台ほど増加した。
11位 トヨタ・カムリ 71万701台
トヨタ・カムリは2019年に前年の5.2%増となる販売台数を達成した。つまり、2019年には2018年より約3万5000台ほど多い数のカムリが売れ、過去最高を更新したトヨタの世界販売記録に大いに貢献したということである。
カムリの好調な売れ行きは、新型が発売されたことや、そして過去数年の間、カムリが販売されていなかった欧州の国々に再び導入されたことが後押しした。
とはいえ、世界で販売されたカムリの半数は米国で売れたものであり、同国では依然として最も売れるセダンという地位を築いている。
10位 フォルクスワーゲン・ポロ 72万4508台
フォルクスワーゲン・ポロは、トップ10台のベストセラー車の中で最も大きく売上を落とした。2019年の販売台数は、前年比14.1%も減少。これによって2018年の8位から、2019年は10位まで順位を下げた。
2017年から2018年にかけて大幅に販売台数を増やしたポロが、わずか1年でこれほど落ち込むとは、フォルクスワーゲンにとってにわかに受け入れがたい事態だろう。
2019年のポロは何がいけなかったのだろうか? 大きな原因は見当たらないものの、コンパクトSUVの流行がポロの販売に影響したことは確かだろう。
また、南アフリカなどポロの売上の多くを占める地域で、まだ旧型が販売され続けていることも一因と考えられる。
9位 日産シルフィー 72万9218台
日産シルフィーは、いくつかの国ではセントラという車名で販売されている。さらに多くの地域では、まったく販売されていない。にもかかわらず、アジアでの高い人気によって2019年もトップ10入りを果たした。
ただし、販売台数は2018年から8.6%減少しており、フォルクスワーゲン・ポロよりわずか5000台ほど多いだけだ。
しかし、2019年中頃には新型にモデルチェンジしたため、2020年にはさらなる増加が期待できそうだ。
8位 ダッジ・ラム 75万4172台
2019年にダッジ・ラムは前年比17.6%も売上を伸ばし、親会社のFCAに対し胸を張ることができた。
しかし、販売台数は増えたものの、ライバルのフォードFシリーズには30万台も差をつけられている。
だが、ダッジにとって良い報せは、トップ10台の世界ベストセラー車のうち、ラムが最も大きな成長率を記録したことだ。
これは2019年にラムの新型が導入され、(フォードと同様に)顧客の99%を占める米国で歓迎されたためである。
7位 日産エクストレイル 76万1081台
日産エクストレイルは、依然として多くの市場で最も人気が高いSUVだ。また、日産はそれらの市場に合わせ、仕様の異なる様々なモデルを投入している。
この販売台数は、それらをすべて合計したものである。しかし、2019年は前年比13.3%も減少しているので、もし2020年もトップ10に留まろうとするならば、日産は難しい仕事に挑まなければならない。
日産のとってわずかな慰めとなるのは、発表から既にかなりの時間が過ぎているエクストレイルが、順位で1つ上のフォルクスワーゲン・ティグアンと比べて、1万台も差をつけられていないことだろう。
6位 フォルクスワーゲン・ティグアン 77万84台
フォルクスワーゲン・ティグアンの2019年の世界販売台数は、前年比4.2%ダウンだった。2018年から約3万4000台ほど減ったことになる。
これまで非常に堅調だった欧州の国々やロシアで前年より販売を落としたことがその一因だ。
ティグアンにとって良い報せは、それでも依然として単一モデルとしてはフォルクスワーゲンで最も売れているということだ。このSUVはポロより4万5000台、ゴルフより13万台も多く売れたのだ。
5位 ホンダ・シビック 81万7902台
スモール・ハッチバック・セグメントでトヨタ・カローラに迫る唯一のライバルと言えるのが、ホンダ・シビックだ。2019年はわずかな逆風に遭い、前年比1.9%と少しだけダウンした。
それでも世界的な市場では依然として強く、このクラスでシビックより売れているクルマはカローラのみ。20以内に入ったもう1台のフォルクスワーゲン・ゴルフは13位と、大きく引き離されている。
2019年に販売されたシビックの台数は、2018年より約1万6000台ほど少ない。ホンダ全体の売り上げから見れば、大した数ではない。しかし、強敵カローラにこれ以上、差を付けられたくないとホンダは思っているに違いない。
4位 ホンダCR-V 82万3237台
ホンダCR-Vの売れ行きは、世界的にSUVの販売が伸びている証拠の1つを示している。
2019年の販売台数は前年比12%アップ。2018年の7位から4位にまで順位を上げた。
フォルクスワーゲン・ティグアンより5万台も多く売れたことが、CR-Vの人気を表していると言えるだろう。
まだトヨタRAV4の圧倒的な販売実績には届かないものの、CR-Vのモデルチェンジが行われた2018年から、大幅に増えた2019年の販売実績は、ホンダの自信を証明することになった。
3位 トヨタRAV4 96万1918台
トヨタRAV4の2019年における世界販売台数は、もう少しで100万台に届きそうだった。大台まであと4万台以下。2位のフォードFシリーズまであと11万台以下というところにまで迫っている。
前年の16%も増加した2019年の販売実績に、トヨタはさらに勢いづけられるに違いない。
RAV4の販売台数が100万台に届かなかったのは、その重要な市場である中国で、新型の導入が遅れたからだ。
同国における新型の発売が反映される2020年は、おそらく新型コロナウイルス流行の影響も最小限に留めることができるだろう。
2位 フォードFシリーズ 107万348台
2019年の販売台数が100万台を越えたのは、トヨタ・カローラとフォードFシリーズだけだ。Fシリーズの販売台数は2018年と比べると1.7%ほど落ち込んだものの、3年連続で100万台を越えたことで、フォードは胸をなでおろしたに違いない。
その代表的モデルといえばF-150だが、他にも写真のF-250キングランチなど、より大型のモデルもシリーズにはいくつか含まれる。
フォードにとって気がかりなのは、Fシリーズの販売の99%が米国とカナダという北米市場に依存していることだ。この地域で新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻化すれば、2020年は後ろから迫るトヨタRAV4に2位の座を明け渡すことになるかもしれない。
1位 トヨタ・カローラ 148万2932台
2019年はトヨタ・カローラにとって良い年だった。全タイプ合計の販売台数は前年を上回り、世界で最も多く売れたクルマの地位を確実なものとした。
しかも、他のクルマに大差をつけての1位である。わずかとはいえ前年を下回ったフォードFシリーズに対し、販売を増やしたカローラは4万台以上も引き離すことができた。
新型カローラのシャープなルックスと高級感を増したインテリアは、世界中で歓迎された。これまでオーリスという車名で販売されていたいくつかの地域で、モデルチェンジを機にカローラという名前に統一されたことも追い風となった。
また、中国という巨大な市場を席巻したことも大きい。さらに言えば、今回のトップ5に入ったクルマの中で、カローラは唯一、世界の5大陸すべてで生産されているのだ。
1966年に初代が発売されたトヨタ・カローラは、まもなく累計生産台数50万台を達成しようとしている。
世界ベストセラー車の地位は、ますます揺るぎないものとなるだろう。まさに世界を股に、いや4輪にかけたクルマである。
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