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カリフォルニアン・ポルシェ 356と911(930型/964型) スピードスター3台を乗り比べ 後編

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カリフォルニアン・ポルシェ 356と911(930型/964型) スピードスター3台を乗り比べ 後編

ベースはカレラ3.2 カブリオレより10kg軽量

930型ポルシェ911 スピードスターでベースとなったのは、カレラ3.2。英国の場合、通常のナローとターボ用のワイド、2種類からボディは選択できた。

【画像】カリフォルニアン・ポルシェ 356と911のスピードスター 992型タルガとカブリオレも 全103枚

空冷の水平対向6気筒エンジンは、オーバーヘッドカムで230psを発揮。ワイドボディでは、サスペンションもターボ同様に引き締められていた。車重は1210kgで、911 カブリオレより10kg軽量だった。

初代の356 スピードスターに準じて、2代目のスピードスターでもメカニズム上の変更は小さい。排気量は3164ccのままで、まだ目新しかった5速MTが組み合され、最高速度244km/h、0-100km/h加速6.0秒がうたわれた。

サイドウインドウは手巻き式で、フロントガラスもコンパクト。簡素とはいえフードが備わっていたにも関わらず、オーダー時には車内が防水ではないことへの免責書類へ、サインが求められたという。

一方でこのスピードスターは、気軽なサンデーレースは意図されていなかった。当時の911 カレラ・カブリオレの英国価格が4万1710ポンドだったのに対し、5万2850ポンドもしたのだ。

カーコレクターの投資目的としても、想定はしていなかっただろう。現在、4万8200kmの走行距離を持つシルバーのスピードスターには、18万4995ポンド(約3090万円)という価格が付いている。

2代目のスピードスターは2103台が生産されているが、1942台がワイドボディ。珍しいナローボディだったら、一層のプレミアムが加算されるはず。

古い911らしく人間工学は完璧ではない

今回の3台目が、964型の末期に追加された911 スピードスター。1992年から1993年に生産され、ターボ風のワイドボディが15台、ナローボディは930台が売れている。

このクルマは、オーナーのビル・ロビンソン氏が20年前にテキサス州で購入したという。厚みのあるバンパーとハイマウント・ストップランプ、ステアリングホイールのエアバッグなどが、欧州仕様とは異なる。

パワーウインドウとエアコンが備わり、4速ATのティプトロニックという点がアメリカらしい。一方、脱着できるフードがリアデッキ内に格納され、ボディカラーと同色に塗られたシェルのRSバケットシートは標準装備。これは、スピードスターらしい。

エンジンは空冷で3.6Lの水平対向6気筒。最高出力は250psへ若干高められているが、車重は130kgも重い。

まずは、930型の911カレラ 3.2スピードスターから運転してみよう。筆者の身長は170cmを少し超えるくらいだが、低いフロントガラスの上から頭が出てしまう。

古い911らしく、人間工学は完璧ではない。フロアのペダルはストロークが長く、左にオフセットしている。ダッシュボードのレイアウトにも、慣れるまでに時間がいる。

スピードメーターには、肉厚なステアリングホイールが掛かる。針が160km/h付近を指している時は、頭を傾けないと確認できない。 とはいえ、それは些細なこと。レッドで仕立てられたインテリアは見た目に素晴らしく、居心地もいい。

英国郊外の一般道を流し始めると、911 ターボ同様に引き締められたサスペンションで乗り心地は硬い。スチール製のルーフがないため、ボディには細かな振動も生じる。

あらゆる点で930型より優れる964型

パワステのないステアリングは、コミュニケーション力が豊か。リアエンジンのモデルとしては重めなものの、正確に反応する。

3.2Lのフラット6は、スピードスターの喜び。グレートブリテン島の南部、サセックス・ウィールドの原野に排気音がこだまする。G50型と呼ばれる5速MTも操作が楽しい。シフトレバーのストロークは長いが、オイリーな質感でタイトにゲート間を動かせる。

世代の新しい964型のスピードスターは、更に洗練されている。そもそも964型の911自体が従来から大進化を遂げており、サスペンションには前後ともコイルスプリングが与えられている。

スピードスターでも、あらゆる点で930型より優れている。精彩に欠ける4速ティプトロを除いて。

ステアリングホイールは軽く、スピード上昇と同時に手応えが増していく。乗り心地はしなやかでありつつ、高速域での姿勢制御は優秀。ボディ剛性も明らかに高い。

964型のスピードスターは、大通りを流すタイプかと想像していたが、間違いだった。ずっと運転が楽しく、スタイリングも魅惑的だ。

英国の夏には雨がつきもので、取材中は3台とも慌ててフードを被せる場面が何度かあった。バスタブにならないよう、356ではファブリック製の、930型と964型では樹脂製のトノカバーを手で開いて、身体を濡らしながら。

雨がちな地域で楽しむなら、カブリオレを選ぶ方が正解だろう。スピードスターは、本来は純粋にオープンドライブの喜びに浸るために作られている。実用性は二の次といえる。

レス・イズ・モアを体現した356 スピードスター

そして、その初代の356 スピードスター。車内は至ってシンプル。3スポークのステアリングホイールは、純正品ではないようだ。

クロームメッキで縁取られた3枚のメーターと、幾つかのスイッチがダッシュボードに並ぶ。ラバー・マットがフロアを覆う。ドアは驚くほど軽いが、シャットラインへきれいに閉まる。車内は質素でも、すべての操作系には一貫した質感が備わっている。

今回の例では、水平対向4気筒エンジンが1.9Lへ拡大されているだけあって、70年前のオリジナルより遥かに威勢良く走る。エグゾーストノートも、3台の中では最も大きい。5000rpmに迫るとエッジの効いたトーンが高まり、聞き惚れてしまう。

レッドラインは6500rpm。少し引っかかりのある、感触の曖昧なシフトレバーを倒す。

現代的なタイヤを履いており、車重794kg程度のスピードスターにはグリップ力が有り余る。そいれでも、軽くダイレクトなステアリングを傾けると、興奮が湧き出てくる。減衰力特性は素晴らしく、ボディ剛性にも不足は感じられない。

現在の価値で、40万ポンド(約6680万円)以上もするクラシック・ポルシェへ、操る自信を与えてくれる。レス・イズ・モアという思想を、唯一体現したスピードスターであることを実感する。

930と964も素晴らしいポルシェではある。だが、どこかトリビュート・バンドのような印象が否めなかった。オリジナルの純粋さには、及ぶことができないようだ。

協力:ポルシェ・クラブGB、パラゴン社

356と930、964 スピードスター3台のスペック

ポルシェ356 A スピードスター(1955~1958年/北米仕様)のスペック

北米価格:2995ドル(1955年)/40万ポンド(約6680万円)以下(現在)
販売台数:3676台(合計)
全長:3950mm
全幅:1669mm
全高:1320mm
最高速度:159km/h
0-97km/h加速:13.9秒
燃費:13.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:794kg
パワートレイン:水平対向4気筒1582cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:59ps/4500rpm
最大トルク:11.1kg-m/2800rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ポルシェ911 カレラ3.2 スピードスター(930型/1988~1989年/英国仕様)のスペック

英国価格:5万2850ポンド(1988年)/20万ポンド(約3340万円)以下(現在)
販売台数:2103台
全長:4291mm
全幅:1775mm(ワイドボディ)
全高:1280mm
最高速度:244km/h
0-97km/h加速:6.0秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1210kg
パワートレイン:水平対向6気筒3164cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:230ps/5900rpm
最大トルク:28.8kg-m/4800rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ポルシェ911 スピードスター(964型/1992~1993年/北米仕様)のスペック

ドイツ価格:13万1500マルク(1992年)/20万ポンド(約3340万円)以下(現在)
販売台数:945台
全長:4275mm
全幅:1775mm(ワイドボディ)
全高:1280mm
最高速度:260km/h
0-97km/h加速:5.7秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1360kg
パワートレイン:水平対向6気筒3600cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:250ps/6100rpm
最大トルク:31.4kg-m/4800rpm
ギアボックス:5速マニュアル/4速オートマティック

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みんなのコメント

1件
  • >まずは、930型の911カレラ 3.2スピードスターから運転してみよう。筆者の身長は170cmを少し超えるくらいだが、低いフロントガラスの上から頭が出てしまう。

    この記者アホか?そこがスピードスターのカッコいいところじゃん。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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