この記事をまとめると
■トランプ大統領の発言を機にアメ車不在
【試乗】これがアメ車? キャデラック5台一気乗りで感じた良い意味での裏切り
■アメ車を代表するキャデラックのSUV・XT5は旧来のイメージを覆す仕上がりだった
■中国製部品やBEV展開から見える現代アメ車の複雑性が垣間見える
いまアメリカ車はよくも悪くも日本で注目の存在
いま、アメリカ車がある意味日本で注目されている。いわゆる「トランプ関税」騒動のなか、ドナルド・トランプ大統領が、「アメリカでは日本車が数多く走っているのに、日本ではアメリカ車が走っていない」というような発言をしていると連日マスコミが報じている。「全然走っていない」はトランプ大統領自身なのか報じるメディアなのか少々話を盛りすぎだが、確かに日本でアメリカ車を見かける機会は少ない。
終戦後駐留したアメリカ軍関係者が本国からもち込んだアメリカ車が、そのまま日本国内で中古車として流通し企業幹部専用車やハイヤーなどで使われた時代がかつてあったともいわれている。しかし、70年代後半あたりから有名プロ野球選手など富裕層の間で「脱アメリカ車」のような動きが起こる。
当時はオイルショックや深刻な公害問題もあり、大排気量で燃費性能が極端に悪いアメリカ車からドイツ車へと「富の象徴」が世界的に変わっていった。富裕層なので燃料代というよりは世間的なイメージという部分が変化をもたらしたのかもしれない。
そんな話題となっているアメリカ車の代表ともいえるキャデラックブランドの「XT5」に試乗する機会を得た。XT5はそれまでのSRXから車名を変え、2017年モデルとしてフルモデルチェンジを実施したのが初代であり、日本での現行モデルとなる。そしてなぜか中国市場でのみ2代目がデビューしているのだが、本国アメリカでも2020年にアップデートされた初代がいまもってラインアップを続けている。
アメリカでは2リッター直4ターボがおすすめユニットとなり、3.6リッターV6も用意されているといった表現が似合うようなラインアップとなっている。イメージとしては2リッターユニットのほうがキビキビしているように思えるのだが、「プレミアム」と「プレミアムラグジュアリー」にしか設定されず(それぞれV6も選ぶことができる)、「スポーツ」というグレードにはV6ユニットしか用意されていないことはなんだか不思議だなあとも感じている。
日本では、3.6リッターV6のみを搭載する「プラチナム スポーツ」(AWD/970万円から)のみのモノグレード構成となっている。日本の自動車税をはじめとする事情を考慮すれば2リッター直4に絞ってもいいように思えるのだが、弟分となるXT4が日本市場でもラインアップされており、こちらが同一の2リッターユニットを搭載しているので、差別化の意味もあってXT5は日本市場でもあえてV6が選ばれたのかもしれない。
XT5は全長4825×全幅1915×全高1700mm、抜けのよい広い場所に置くとそれほどでもないのだが、路地裏などに駐車すると幅が2メートルに近いこともあり、「さすがに大きいなあ」と思わず感じてしまった。ちなみに3列6名乗車となる(XT5は2列5名乗車)XT6になると、その全長は5メートルを超えてしまう。
アメ車らしさも残るなかで洗練された走り
しかし、実際にXT5を運転してみると、想像以上に小まわりがきくことに驚いた。ステアリングを切ると、「あれっ」というほど想像以上にタイヤが切れ込んでくれるのだ。昔のGM(ゼネラルモーターズ)車といえば、握りが細く少し径の大きいステアリングが特徴だったのだが、いまどきのGM車は径が小さめで握りも太めのステアリングとなっている。
日本国内でラインアップされているキャデラック車はBEV(バッテリー電気自動車)のリリックのほかはICE(内燃機関)車となり、XT4、XT5、XT6、エスカレード(唯一6.2リッターV8OHV搭載)となっている。このなかでXT5とXT6だけが計器盤がいまもなおアナログ式、つまり針となるスピード&タコメーターとなっている。一方、中国で販売されている2代目は「これでもか」とばかりに助手席側までディスプレイが続く、フルデジタルメーターとなっている。設計年次の古さはこのあたりで隠せなくなってしまっているようだ。
アナログかデジタルかというのは個々でその好みは異なるのだが、やはりいまどき1000万円近いクルマでアナログメーターというのは少々寂しさを感じてしまう。
アメリカ車といっても、いまどきは5リッター以上のV8エンジンはOHC、OHV問わず搭載車種は極めて限定的となっている。そして、V6はさらに輪をかけるように減ってきている。そのV6エンジンをスタートさせると、アメリカ車らしいやや深みのあるエンジン音が伝わってきた。Dレンジにいれアクセルを踏むと、想像以上に軽やかに加速していく。
昔から同系統のV6エンジンであっても、シボレーやビュイックなどに搭載したものはやや鈍重に感じたものだが、キャデラックチューン(?)になると軽快になるという流れはいまも変わっていないようだ。キャデラックの車名はいまアルファベットと数字の組み合わせが多いが、たとえばBEVの「リリック」はフランス語で冗談や洒落といった意味があるなど、フランス語に由来する車名が過去にも多かった。その名前どおり、乗り味もフランス車に近いソフトな印象が目立ち、ダラッとしていない独特の雰囲気を醸し出している。
1990年代ぐらいまでのオールドスタイルのアメリカ車では、「舟をこぐ」といった表現が似合うほど加減速時などは前後によく揺れたのだが、そんなオールドスタイルのアメ車のような印象もない。外で走り出すところを見ていると、エキゾースト音も心地よく、思わず聞きほれてしまった。
アメリカのクルマとはいえ中国製パーツの使用は免れられない
XT5を停め、しばらくエクステリアを見ていると、ガラスの刻印が気になった。日本車などでは「AGC=旭硝子」というような刻印のあるところが、「FUYAO」となっていたのである。調べてみると、これは中国・福建省にある「福耀玻璃工業集団股份有限公司/FUYAO Glass Industry Group Co,. Ltd」という中国企業製のガラスだった。
XT5では、リヤサイドとリヤガラスはプライバシーガラスとなっており判別できなかったが、フロントと前席サイドガラスはFUYAO製であった。ただし、フロントサイドの両側にあるクオーターウインドウには「SAINT GOBAIN」というフレンチブランドのガラスが使用されていた。「米中貿易戦争」などと最近は騒がれているが、対立相手の中国ガラスメーカーの製品をアメリカ車を代表するキャデラックが採用しているところを見ると、実際の話はそれほど簡単なものでもないことを感じた。
そして、ボンネットを開けると「MADE IN MEXICO」という部品も発見した。メキシコとも当然ながら関税問題は存在する。ただ、GM(ゼネラルモーターズ)系自動車部品ブランド「AC DELCO」の部品やバッテリーが搭載されているのを見ると、「やっぱりアメ車なんだな」と妙にうれしくなってしまった。ラゲッジルームの床下には、「カリフォルニア州民向け」と英語で書かれた袋のなかに、盗難防止用のホイールナットが入っていた。日本でも使えればユーザーも安心することができるだろう。
アメリカでの車両価格をみると、だいたいレクサスRXと同レベルとなる、BMWだとX3、メルセデスベンツだとGLCが該当する価格帯だ。
乗ってみると、いま風のクロスオーバーSUVスタイルでFFベースと、ここだけ見ればレクサスRXとは変わらない。実際ステアリングを握ると「アメリカ車だなあ」と感じるのだが、そもそも日本人のほとんどはアメリカ車(しかもコテコテの)の運転経験がない。筆者の記憶もオタクとしてのものなので、はっきりいって信用度には「?」がついてしまうが、筆者のなかでは、「おっ、アメ車魂残っているな」と感じたのは確かであるし、これはXT4を以前運転した時には感じなかったものだ。
日本におけるキャデラックは、イタリアやフランス車を軽く超えるような極めて趣味性の高いクルマとなってしまっているように見える。というよりは、インポーターはあえてそのようなモデルや仕様を日本国内に導入しているようにも見える。この流れはICE車だとなかなか変えることはできない。
日本国内でのジープ・ラングラーの販売台数は、本国アメリカに次ぐ台数と聞いたことがある。あそこまで独特のオーラを発するキャラクターとなると、もはやアメリカ車かどうかといった話は関係なく受け入れられている。しかも、過去のアメリカ車のネガティブイメージをもたない若い世代が好んで乗っているというのも興味深い動きとなっている。
筆者は、「シン・アメリカ車」としてBEVの存在は極めて大きいと感じている。テスラはすでにアメリカ車というイメージがないなか、スンナリ世界市場に受け入れられている。キャデラックではリリックが日本でも発表となったが、ICE車は別として「BEVブランドでございます」とどこまで新しい風を日本に入れられるかで、古いイメージがいつまでもついてまわるアメリカン3(旧ビッグ3)ブランドであっても、十分大化けするポテンシャルはもっているものと考えている。
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みんなのコメント
いやいや売れない要素積み上げてどうすんだよ…