2006年のジュネーブオートサロンでデビューした2代目ニュー・オールロードクワトロ。このモデルで2代目となるが、注目は車名が「オールロードクワトロ」から「A6オールロードクワトロ」に変わったこと。日本導入に先立ち、2006年4月にイタリアのボルツァーノ地方で開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年7月号より)
迫力たっぷりな独自のシングルフレームグリル
オールロードクワトロというのは不思議なクルマだ。本来、オフロード走行に対応すべく車高を上げたり、アンダーガードを付けたりしているのだが、そうして実際に出来上がったクルマ総体から受ける印象は、オフロードとはまったくもって無縁と思わせるものだ。そこにはいかにもアウディらしい高品質感が満ちあふれており、それはオフロードのイメージからはかなり遠く、むしろ都会の風景がよく似合う。
【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?
その結果、オールロードクワトロはA6の派生モデルではなく、A6シリーズの最上級バージョンとして捉えられているという側面が強い。そして、アウディはわずか数年のうちに大きく育った「オールロードクワトロ」というブランドを今後、別のクラスでも活かしていこうと考えているのではないかと想像できる。
なぜなら、2000年登場の初代は単に「オールロードクワトロ」というネーミングだったのだが、この2代目は「A6オールロードクワトロ」と呼ばれることになったからだ。
このところのアウディの積極的なモデル展開を考えると、「すぐにでもA4オールロードクワトロが出て来る」ような気がする。そして、このことについて、1日目の試乗後にアウディAGのプロダクトマーケティングマネージャーであるヒルシュフェルト氏と話すことができた。
そのやりとりは非常にシンプルで、「A4のオールロードクワトロはいつ出るんですか?」と投げかけると、「ハッ、ハッ、ハッ(と大きな声で笑いながら)、それは本日、最高のクエスチョンだ。ハッ、ハッハッ」、「で、どうなんですか」、「その計画は今はありません」というものだった。
この質問は誰もが抱くものなので、今年のジュネーブショーに、A6オールロードクワトロが登場して以来、ヒルシュフェルト氏はきっと何回も同じようなことを訊かれているだろう。日本人プレスの試乗会でもそれを覚悟していたに違いない。そして無難なのは「その計画は今はありません」と答えることだと思うに至ったと推察できる。
これは「今はないけど、将来はある」と受け取るのが正解だと思う。ヒルシュフェルト氏の高笑いは実に朗らかなもので、「もうすぐ出しますから、楽しみにしていてください」と、眼が言っていた、と思う。
実車を目の前にして圧倒されるのは、縦格子が強調されたシングルフレームグリルだ。それにしても凄い迫力だが、これは他モデルのようにナンバープレートが装着される部分のパネルが左右に伸び、シングルフレームが上下に分割されていないからだろう。日本のナンバープレートは、欧州のものより高さはあるが、幅はかなり狭いので、よりシングルフレームグリルの迫力は増すことになるだろう。
またホイールアーチは、例によってクラディングパネルで覆われている。これはブラックが標準仕様となり、オプションでボディ同色のものも用意されるが、両者のイメージはずいぶんと違う。ブラックはやはりスパルタンだが、ボディ同色の方はびっくりするほどエレガントになる。さらに前後のステンレス鋼製のアンダーライドプロテクション、サイドシルガードなどがオールロードクワトロらしさを演出する。こうしたエクステリアを仕立てる基本的な手法は、従来モデルと同様だ。新しいのはリアランプにLEDを採用したことで、これはいいアクセントになっている。
インテリアもこれまでのように、オフロードを意識したスパルタンなものではなく、あくまでもアウディらしい優美さを演出する方向で仕上げられており、基本的にA6セダン、アバントと共通となる。また、ダイヤル式コントローラーをもつMMI(マルチメディア・インターフェイス)は、ベーシックバージョンが標準装備となる。オールロードクワトロならではの装備であるエアサスの設定などは、このMMIによって行うことになるわけだ。
エアサスの進化は見事で非常によい乗り心地を実現
さて、最初に試乗したのは「4.2FSI」、A6シリーズとしては初搭載のエンジンだ。この4.2L V8DOHCは、350ps/440Nmというスペックをもち、1880kgと決して軽くはないボディをなり元気よく引っ張ってくれる。フィーリングはフラットトルクで、モーターのようだ。高速道路で合流からアクセルペダルを踏み続けると、いつのまにか思った以上のスピードが出ているという感じだ。
感心したのは乗り心地の良さだ。メカニカルサスをもつA6には、ちょっとゴツゴツして硬いという印象を持っていたのだが、これはまったく違う。MMIでエアサスの設定を「ダイナミック」、「コンフォート」と交互に変えてみたが、どちらもいい範囲に設定されている。ダイナミックは硬過ぎず、コンフォートは柔らか過ぎない。
サスペンションモードには5つの設定がある。オンロード時には「ダイナミック」と「コンフォート」に加えて、基本設定がその間の車高となる「オートマチック」モードがある。このモードは120km/h以上で一定距離を走行すると、「ダイナミック」モードに切り替わる。文字どおりオートマチックなわけだ。アウディが通常のオンロード走行で推奨しているのは、このオートマチックモードなのだろう。
さらに2つのモード、「オールロード」と「リフト」は、オフロードを想定したもので、もっとも車高を上げると最低地上高は185mmになる。一番低いダイナミックモードとは60mmも違う。この差は歴然としていて、運転席から見える景色が明らかに変わるほどだ。
従来からある技術で目新しくはないが、これまでのものとはまったく違うレベルの効果を発揮する。ここ数年で様々な制御技術が進んだために、そう感じさせるものがいくつかあるが、エアサスもそのひとつだろう。オールロードクワトロのエアサスも、かなりよくなっていることが実感できた。耐久性も向上しているに違いない。
クワトロシステムは、Q7で採用された前後40対60を基本とする第3世代ではなく従来どおりのもの。通常走行時は前後のトルク配分が50対50で、必要に応じて最大75%のトルクを前、または後に伝えるタイプだ。このエアサスにFRに近いフィーリングだという第3世代クワトロを組み合わせたら、かなりファンなドライブフィールになるだろうと想像できるが、それにはまだ時間がかかるようだ。
試乗会2日目はあいにくの雨だった。3.2FSIに乗ったが、さすがに前日のV8 4.2Lと、このV6 3.2Lのパワー差ははっきりしている。しかし、それを感じるのは追い越しなどで急加速をするときだ。通常走行では3.2の方がエンジンノイズがちょっと大きい印象を受けるくらいで、パワー不足を感じることはない。
それよりも、悪天候の中であらためて感じたのは、オールロードクワトロというクルマのもつ絶大なる安心感だ。大雨の高速道路でも、ぬかるんだ泥道でも、このクルマなら大丈夫だと全幅の信頼を寄せることができる。そして、このコンセプトはやはりA6だけに留めておくべきではないだろうと思った。近いうちに「A4オールロードクワトロ」が登場するに違いないと、悪天候の中での試乗を終えて、再度、確信したのだった。
なお、日本へは、4.2FSIと3.2FSIの2モデルが導入される予定だ。従来モデルは、A6アバントよりも、オールロードクワトロの方が売れたというから、このモデルを待っているユーザーは多いだろう。日本への上陸は10月ごろになるそうだ。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2006年7月号より)
アウディA6オールロードクワトロ 4.2FSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4934×1862×1519mm
●ホイールベース:2833mm
●車両重量:1880kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:350ps/6800pm
●最大トルク:440Nm/3500pm
●トランスミッション:6速AT
●0→100km/h加速:6.3秒
●最高速: 250km/h(リミッター作動)
※欧州仕様
アウディA6オールロードクワトロ 3.2FSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4934×1862×1519mm
●ホイールベース:2833mm
●車両重量:1800kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3123cc
●最高出力:255ps/6500pm
●最大トルク:330Nm/3250pm
●トランスミッション:6速AT
●0→100km/h加速:7.7秒
●最高速: 240km/h
※欧州仕様
[ アルバム : アウディA6オールロードクワトロ(2代目) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
2.7Tの方が良いエンジンでしたし、作りこみ全てが上質でしたよ。
2代目の3.2リッターエンジンは普通ですね。
故障が多くて乗るのやめましたが…