歴史を創り上げたラリーカー4台
text&photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)
【画像】オートモビルカウンシル2021企画展【会場レポート】 全8枚
今年で6回目の開催となる「オートモビルカウンシル2021」が、千葉県・幕張メッセで開催された。
主催者によるテーマ展示は「時代を進めたラリーカーの戦闘美」と題され、WRCで大活躍した3台のランチアと1台のフィアットのラリーカーが登場。
いずれも日本国内のコレクターが所有する車両で、どれも完璧といえる素晴らしいコンディションに保たれていた。
それでは栄光の4台をご紹介しよう。
ランチア・フルビア・ラリー1.6HF
ランチアの競技部門である「HFスクアドラ・コルセ」は、レース用マシンからラリーカーまで手掛けてきた。
1960年代後半からフルビア・クーペでラリーに挑み、当初ラリー1.3HFで闘う。
のちに戦闘力を高めるために1.6Lに拡大したラリー1.6HFを投入し、1972年はモンテカルロ・ラリーでの優勝を皮切りにモロッコ、サンレモを勝ち取る活躍を見せた。
展示されたのは、18台製造されたワークス・ラリーカー最後の1台。
1974年のサファリ・ラリーで、後にサファリ・マイスターとなるシェカ・メッタ/マイク・ダウティ組が駆り、11位でフィニッシュした個体である。
ランチア・ストラトスHFグループ4
ランチアがラリー制覇のために開発した「パーパスビルド・マシン」がストラトスだ。
回頭性を高めるためにホイールベースは2180mmと短くされ、全長3710mm、全幅1750mmという特殊なディメンジョンを持つ。
パワーユニットはディーノ用のV6 2.4Lをミドに搭載。デビューするや本領を発揮し、1974年から3年連続でWRCのマニュファクチャラーズ・チャンピオンを獲得する強さを見せつけた。
展示されたのは、1981年のスペイン・ラリー選手権を戦い、シリーズ・チャンピオンを勝ち取ったストラトスHFグループ4後期型2バルブ仕様である。
フィアット131アバルト・ラリー・グループ4
フィアットの首脳部は、ストラトスで優勝してもプロモーション効果が薄いため、直接セールスにつながるファミリーセダンのフィアット131をベースとしたラリーカーにスイッチすることを決める。
開発を担当したのはアバルト。公認後に改造できないサスペンションやボディワークを大きく変更し、実戦に焦点を合わせた改装が行われた。
デビューするや1977年、1978年、1980年にワールド・チャンピオンをフィアットにもたらす大活躍を遂げる。
展示されたのは、1977年開幕戦のモンテカルロ・ラリーでターマックの名手ジャン-クロード・アンドリュー/ビシェ組が、ムナーリ駆るストラトスに2.16秒まで追い上げて2位でフィニッシュしたマシンそのものである。
ランチア・ラリー・エボリューション2
1982年から発効されたグループB規定に合わせて製作されたのが、ランチア・ラリーだ。
義務生産台数が200台に引き下げられ、先鋭化した専用マシンを製作し易くなった。フィアットはランチア・ブランドで参戦することにし、開発はアバルトが担当し、コンベンショナルなミドシップ後輪駆動を採用。
ミドに積まれる2L直4エンジンはラグのないスーパーチャージャーで武装したのが特徴だ。
デザインはピニンファリーナが担当し、最も美しいラリーカーと評された。
デビューした1982年は熟成に徹し、翌1983年は開幕戦のモンテカルロ・ラリーを皮切りに勝利を重ね、WRCのマニュファクチャラーズ・チャンピオンを勝ち取った。
今回展示されたのは、EVO-2として製作されたワークスカー。1984年のアクロポリス・ラリーを、アッティリオ・ベッテガ/セルジオ・クレスト組が4位で入賞したヒストリーを持つ。
現オーナーは日本で登録を済ませ、アルペン・クラシック・ラリーのSSで本気に走らせる熱血漢である。
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