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【スバルSTI、なぜ今アメリカ重視?】S209は北米専用 商品価値観の違いが背景 日本への影響は?

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【スバルSTI、なぜ今アメリカ重視?】S209は北米専用 商品価値観の違いが背景 日本への影響は?

北米専用「S209」を直接感じながら

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】S209、もっと見る S208との違いは?【比べる】 全96枚

なぜ、日本では発売しないのか?

STIファンが注目する、最新コンプリートカー「S209」は北米専用モデルである。

東京都三鷹市のSTI(スバルテクニカインターナショナル)本社に隣接する、STIギャラリーでは今年(2020年)7月から、S209開発の舞台裏に関する企画展示がおこなわれている。

筆者が取材で現地を訪れた際、STIの平岡泰雄社長からS209の特長を詳しく聞いた。

その中で、平岡社長が強調したのが、フレキシブルドロースティフナーだ。

車体の前後に装着されているが、リアシートの後方位置にある状態を指さしながら「これがあるのとないのでは、明らかにクルマの挙動が変わる」と平岡社長は自信満々の表情をみせた。

フレキシブルドロースティフナー単体での展示もあった。これはSTIの走りのチューニングの統括者であり、ニュルブルクリンク24時間レース参加チームの総監督でもある辰巳英治が自ら溶接をして作り上げた試作品だ。

その他、S209にはSTIがこれまで築き上げてきたスバル車に対するノウハウが詰め込まれている。

となれば、日本のユーザーもS209が欲しくなるかもしれない。

だが、エンジンは米国使用WRX STI専用のEJ25をベースとするなど、あくまでもアメリカ向けとして開発された。

なぜ、STIはこのタイミングでアメリカ市場にこだわるのか?

ブランドイメージを築くため

アメリカでは、STIのブランド力がまだ弱いから。

それが、STIがアメリカ市場強化に動く理由である。

平岡社長の言葉を借りるならば「STIは(モデル)グレードとしての認知に留まっている」のだ。

日本でも、モデルのグレードとして、STIスポーツは人気が高い。なかでもレヴォーグは新車販売の約3割にまで及ぶ。

そうなっているのは、STIというブランド自体の認知度が高いからこそ、またSシリーズというコンプリートカーの存在感が大きいからこそ、実現できているのだ。

一方のアメリカでは、いわゆるエンスージァスト(熱狂的ファン)のみがSTIを理解している状況だ。

日本のスバルファンのように、STIがどのようなバックグランドがあるのかを、ネットの情報等を通じて知っている。

だが、一般のクルマユーザー、またはスバルのユーザーにとって、STIをよく知らない人が多く、仮に知っていても、前述にようにグレード名称という認識しかないのが現実だ。

原因は、STIが現在進めているブランド戦略が、日本国内スーパーGTや、アメリカ人にとって馴染みの薄い独ニュルブルクリンク24時レースに起因しているためかもしれない。

もちろん、北米でもこれまで、STIの名前を掲げたモータースポーツ活動はおこなってきたが、三鷹のSTI本社の直接的なオペレーションでない場合が多い。

きっかけは「ワイルドスピード」?

STIとアメリカとの関係を、もう少し詳しく知るために、時計の針を少し戻してみよう。

アメリカ人の中でSTIが話題に上ることが増えたのは、90年代末だ。

米西海岸を震源として、日系チューニングカーブームが始まったのだ。その模様をドキュメンタリー的なタッチで描いたのが、映画「The Fast and the Furious(邦題:ワイルドスピード)」である。

当時、筆者はロサンゼルス近郊に居住し、スバル「WRX」を所有していた。また、仕事の関係でスバルの北米事業会社であるSOA(スバル・オブ・アメリカ)の幹部らとの接点もあった。

SOAは「WRX STI」の北米導入を検討していた。ライバルである三菱「ランサー・エボリューション」がひと足早く、アメリカでの販売を始めたからだ。

だが、WRX STIがアメリカで売れるのかについて、SOAは半信半疑だった。

なぜならば、日系チューニングカーや、日系ハイパフォーマンスカーに興味があるアメリカ人の多くは、STIの存在をソニープレイステーションのグランツーリスモを通じてしか知らなかったからだ。

アメリカでラリーはマイナー競技であり、STIの本質がユーザーに伝わりにくい環境にあった。

さらに、当時のスバルは弱小日系メーカーであり、スバルブランド自体の認知度も低かった……。

販売数が急増も STIまだ浸透せず

その後、2000年代半ばには、アメリカでの日系チューニングカーブームは冷めきってしまい、STIファンも一定数で留まっていた印象がある。

ところが、2000年代後半から2010年代にかけて、スバル全体の販売が急激に伸びていく。

北米市場を強く意識した商品作りと、「ラブキャンペーン」と名付けたマーケティング戦略が奏功した。

それまで、降雪地帯の生活四駆車としてのイメージが主流で、そこにハイパフォーマンス系のイメージが少し加わった程度だったスバルが、トヨタ、ホンダ、日産に次ぐ、第4のメジャー日系ブランドへと成長していったのだ。

そうした中で、STIについても北米仕様などを盛り込んできたのだが、前述のように2020年時点では、ユーザーからはモデルグレードという認識が強い。

そこで、スバル本社の戦略として、スバル車の販売台数が世界で最も多い北米市場において、スバルブランド全体をけん引するシンボルとして、北米専用S209を位置付ける。

その上で、北米でSTIブランドを確立することを狙う。

こうした海外戦略で得られた成果は当然、日本市場にもフィードバックされる。

「WRX STIF J20ファイナルエディション」のさらに先へと、STIを導くことになるだろう。

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みんなのコメント

3件
  • スバルの利益の半分以上は北米で稼いでいるから、北米重視になるのは必然。
  • そりゃ、WRX/STIの3分の2が北米で売れているのですから、重視するのも当たり前ですよね。
    色々騒ぐわりに買わない日本と違って。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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