現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日本で苦戦も北米でヒット! 小粋な日産 NXクーペの挑戦と挫折【偉大な生産終了車】

ここから本文です

日本で苦戦も北米でヒット! 小粋な日産 NXクーペの挑戦と挫折【偉大な生産終了車】

掲載 更新 12
日本で苦戦も北米でヒット! 小粋な日産  NXクーペの挑戦と挫折【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

かつての帝王は大幅変更で復権なるか 日産エルグランドの苦悩と一縷の望み

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 NXクーペ(1990-1994)をご紹介します。

【画像ギャラリー】本文に載せきれなかった写真も掲載!! 日産NXクーペの写真を見る

文/伊達軍曹、写真/NISSAN

■北米の働く女性をターゲットに誕生したNXクーペ

 北米市場では、当時の言葉で言うセクレタリーカー(働く女性のための通勤車)としてヒットするも、日本では女性セクレタリー(女性秘書)にも、そしてクーペを好む男性ドライバーにもいっさい刺さらず、1代限りであえなく消えていった小ぶりな2ドアクーペ。

 それが、日産NXクーペです。

 日産NXクーペは、1986年に北米でデビューした「NISSAN PULSER NX」の後継モデルとして1990年に登場した、7代目B13型サニーをベースとする小型の2ドアクーペ。ちなみにPULSER NXは、日本市場名で言うところの2代目日産エクサです。

日産 NXクーペ。全長×全幅×全高は4140mm×1680mm×1315mm。緩やかな丸みを基調としたオーバルシェイプのデザイン、窪んだ丸目のヘッドランプが特徴的だった

 1970年代後半から女性の就業率が高まったアメリカでは、1980年代から90年代にかけて女性の社会進出がさらに進み、高学歴女性がオフィスまで通勤するための車=セクレタリーカーの需要が増加しました。

 まぁオフィスで働く女性を「セクレタリー(秘書)」とひとまとめに呼ぶやり方は、現代ではまったく通用しないでしょうが、とにかく当時のアメリカでは「比較的安価で小ぶりな、2人乗りまたは2+2のスペシャルティクーペ」が、女性オフィスワーカーによく売れていたのです。

 その流れのなかで1986年に登場したのが、パルサーをベースにNDI(Nissan Design International。現在はNDA=Nissan Design America)がデザインしたPULSER NXでした。

 そしてその後の社会の伸張につれて、パルサーよりひと回り大きなサニーをベースとする後継モデルとして1990年に登場したのが日産 NXクーペ(アメリカ名はNISSAN 100 NX)。こちらも、デザインはNDI(後のNDA)が担当しました。

 日本仕様のNXクーペの基本部分は7代目のB13型日産サニーと共用で、日本仕様に用意されたパワートレインは1.5L/1.6L/1.8Lのそれぞれ直列4気筒自然吸気DOHC+5MTまたは4速AT。

エンジンの排気量別に3つのグレードが用意された

 エンジンがフロントに横置きされるのは(当然ながら)サニーと同様ですが、エンジンフードを低く抑えるために、補機類の配置などは変更されています。駆動方式はFFのみです。

 3種類のエンジンとTバールーフの有無、足回りのセッティングの違いで計7種類のグレードが用意されましたが、販売はまったく振るわず。1994年4月には早くも販売終了となり、そのまま1代限りの車として消えていきました。

■中古車は高騰も当時は鳴かず飛ばず NXクーペ惨敗の背景

 北米ではセクレタリーカー(この呼称はほんと、ちょっとどうかと思いますが)としてよく売れたNXクーペ(NISSAN 100 NX)が日本市場では惨敗を喫し、発売からわずか4年で販売終了となった理由。

 それは、「日本にはセクレタリーカーなるものの市場がほぼ皆無だったから」ということに尽きるでしょう。

前席のルーフが脱着可能な「Tバールーフ」仕様も発売された

 アメリカというのは、日本とは広さのスケール感がちょっと違いますので、都市部の(俗に言う)キャリアウーマンであっても自家用車で通勤する必要があるケースは多いものです。

 そしてその通勤にあたっては、筆者はアメリカ人女性ではないので「なぜ?」という理由は正直わかりませんが、とにかくなぜか昔は「小ぶりなクーペ」が好まれ、そのことが「セクレタリーカー」という、今となってはちょっとどうなのかという呼称の人気ジャンルを作りました。

 しかし日本では、都市部の俗に言うキャリアウーマンの通勤は、主には電車やバスなどの公共交通機関で済んでしまいます。

 そして「自家用車での通勤が必要」というケースでも――もちろん人それぞれではあるのですが、基本的にはクーペではなく「やや小ぶりな2BOXスタイルの軽自動車またはコンパクトカー」が好まれる傾向があったように思えます。

 それゆえ当時の女性からすると、NXクーペ的な車については「あまり興味がない」と言うほかなかったのが正直なところでしょう。

 一方の「野郎」こと男性。これは、クーペスタイルの車を好む人もいまだに多いですし、1990年代前半ぐらいのまで時代であれば、現在よりも断然多かったはずです。

 しかしそういった男性ドライバーが好むクーペは、例えば当時のFD型マツダ RX-7のような「スポーツカー」か、RX-7ほどの動力性能はないにしても、それに準じた性能はいちおう堪能できるS13型日産シルビアのような「スペシャルティクーペ」である場合が多いものです。少なくとも、NXクーペ的なクーペではありません。

 まぁなかには「オレ、北米で言うセクレタリーカーみたいなクーペが大好きなんだよね」という男性もいたことでしょう。しかしそういった男性というのは客観的に見て、かなりの少数派でしかありません。

リアビュー。NXクーペが一代限りで生産終了となると、サニー・ルキノにその座を譲ったが、やはり販売は振るわず、1998年のフルモデルチェンジの際に2ドアクーペの系譜は終止符を打つ

 つまり日産 NXクーペとは、まとめますと「……なんで日本に導入したの?」と、日産の人に聞きたくなるクーペでした。女性ユーザーにも男性ユーザーにも、日本ではほぼ売れないだろうことはあらかじめ見えていたのに、なんでわざわざ売ろうと思ったのか?

 そのあたりは当時の日産の担当者や関係者に取材してみないことにはわかりません。

 ただ、ごく一部に存在する「オレ、北米で言うセクレタリーカーみたいなクーペが大好きなんだよね」というタイプの人に対してNXクーペの中古車は今、そこそこウケている模様です。

 といっても筆者が確認した限りでは全国で3台しか流通していないのですが、一番安い物件でも38万円というまずまずのプライスが付いており、最高値の「実走4万kmの5MT車」には、なんと100万円以上の値札が付いています。

■日産 NXクーペ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4140mm×1680mm×1315mm
・ホイールベース:2430mm
・車重:1030kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1596cc
・最高出力:110ps/6000rpm
・最大トルク:15.0kgm/4000rpm
・燃費:13.4km/L(10モード)
・価格:162万7000円(1990年式 タイプB Tバールーフ)

【画像ギャラリー】本文に載せきれなかった写真も掲載!! 日産NXクーペの写真を見る

こんな記事も読まれています

[サウンドシステム設計論]高度な「パッシブシステム」を組んで1ランク上のサウンドを満喫!
[サウンドシステム設計論]高度な「パッシブシステム」を組んで1ランク上のサウンドを満喫!
レスポンス
【MotoGP】バニャイヤが直面する新たな課題……マルケス加入後のチームの手綱を握れるか? 「和を乱すな」と今からアピール
【MotoGP】バニャイヤが直面する新たな課題……マルケス加入後のチームの手綱を握れるか? 「和を乱すな」と今からアピール
motorsport.com 日本版
スペインGPで大失速のRB、オーストリアGPのFP1で2台のマシンで比較テスト実施へ。角田裕毅「明確な説明が得られればいいんですが……」
スペインGPで大失速のRB、オーストリアGPのFP1で2台のマシンで比較テスト実施へ。角田裕毅「明確な説明が得られればいいんですが……」
motorsport.com 日本版
ホンダ「新型ヴェゼル」登場! めちゃ精悍「“スポーティ”仕様」がカッコイイ! デザイン刷新の「フル無限カスタム」も設定
ホンダ「新型ヴェゼル」登場! めちゃ精悍「“スポーティ”仕様」がカッコイイ! デザイン刷新の「フル無限カスタム」も設定
くるまのニュース
VW新型「ゴルフR」世界初公開! 333馬力・最高時速270kmの最強ゴルフは「光るVWエンブレム」初採用
VW新型「ゴルフR」世界初公開! 333馬力・最高時速270kmの最強ゴルフは「光るVWエンブレム」初採用
VAGUE
マツダとヤマハ発動機、認証不正で出荷停止のロードスターRFなど 7月以降に順次生産再開へ
マツダとヤマハ発動機、認証不正で出荷停止のロードスターRFなど 7月以降に順次生産再開へ
日刊自動車新聞
VWゴルフGTIのセダン版『ジェッタGLI』に改良新型、228馬力ターボに6速MT…米国発表
VWゴルフGTIのセダン版『ジェッタGLI』に改良新型、228馬力ターボに6速MT…米国発表
レスポンス
【公式動画】アストンマーティン F1アロンソの熱望から誕生したQ By Aston Martinビスポークのヴァリアント・ヴェラールが新たな系譜に加わる
【公式動画】アストンマーティン F1アロンソの熱望から誕生したQ By Aston Martinビスポークのヴァリアント・ヴェラールが新たな系譜に加わる
Auto Prove
トヨタ「アルファード/ヴェルファイア/プリウス」オーナーに朗報! 純正ナビのテレビ視聴やナビ操作が便利になるTVキットが新登場
トヨタ「アルファード/ヴェルファイア/プリウス」オーナーに朗報! 純正ナビのテレビ視聴やナビ操作が便利になるTVキットが新登場
Auto Messe Web
3週間ぶりのMotoGP! オランダGPのFP1はバニャイヤがトップタイム。来季チームメイトのマルケス2番手続く
3週間ぶりのMotoGP! オランダGPのFP1はバニャイヤがトップタイム。来季チームメイトのマルケス2番手続く
motorsport.com 日本版
ブガッティの新たなハイパースポーツカー「トゥールビヨン」が登場。V16エンジン+3モーターで1800psを発生!
ブガッティの新たなハイパースポーツカー「トゥールビヨン」が登場。V16エンジン+3モーターで1800psを発生!
Webモーターマガジン
[15秒でわかる]BMW『M2』改良新型…小さな車体でも中身は狂暴
[15秒でわかる]BMW『M2』改良新型…小さな車体でも中身は狂暴
レスポンス
本州―四国「しまなみ海道」高速バス攻めの“特急化” 運行ルートがらり変更! 新幹線接続 JR松山駅は“廃止”
本州―四国「しまなみ海道」高速バス攻めの“特急化” 運行ルートがらり変更! 新幹線接続 JR松山駅は“廃止”
乗りものニュース
7年ぶり全面刷新! 新型「迫力顔SUV」初公開! 斬新グリル&直6エンジン搭載の「大きめ高級車」! 豪華内装の「X3」欧州で発表
7年ぶり全面刷新! 新型「迫力顔SUV」初公開! 斬新グリル&直6エンジン搭載の「大きめ高級車」! 豪華内装の「X3」欧州で発表
くるまのニュース
テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
テオ・プルシェールがインディカーで残した爪痕。復帰への道筋と後任ノーラン・シーゲルの才能
AUTOSPORT web
ゴルフにポロにルポにup!に……VWの「GTI」はやっぱり熱いぜ! 時代時代のクルマ好きを歓喜させた歴代モデルとエキサイティングなその中身
ゴルフにポロにルポにup!に……VWの「GTI」はやっぱり熱いぜ! 時代時代のクルマ好きを歓喜させた歴代モデルとエキサイティングなその中身
WEB CARTOP
アルファロメオからセアトにVWまで! 凄腕デザイナー「ワルター・デ・シルヴァ」独自の手法と名車5台
アルファロメオからセアトにVWまで! 凄腕デザイナー「ワルター・デ・シルヴァ」独自の手法と名車5台
WEB CARTOP
新型電動ミニバン『L380』は航続824km、LEVCが中国発売…グローバル展開も計画
新型電動ミニバン『L380』は航続824km、LEVCが中国発売…グローバル展開も計画
レスポンス

みんなのコメント

12件
  • エクサの方が好きだな。
  • 変なクルマには熱狂的なファンが一定数います。その人たちには売れていない方が希少価値が高くなります。CMが秀逸でした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

113.6189.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

195.0195.0万円

中古車を検索
NXクーペの車買取相場を調べる

日産 NXクーペの中古車

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

113.6189.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

195.0195.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村