空力フォルムの流行により、減少の一途を辿った四角いクルマ。しかし、流行には必ず揺り戻しがある。力強さ、個性、機能性をアピールした四角いデザインが人気を取り戻しつつある。ここでは過去から現在までいろいろなジャンルの四角いクルマを見ていこう。
※本稿は2023年7月のものです
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年8月10日号
レクサスGXもカクカクボディで登場!! 今アツい個性光る「四角いクルマ」列伝!
■今、四角いクルマが熱くてカッコいい!!
新型レクサスGXはクルマ界で最新の四角いクルマだ。カクカクしたデザインは野暮ったいどころか、スリークで洗練された力強さと高級感がミックスされている。全長4950×全幅1980×全高1870mmの大型SUVが世界を席巻するのは確実
2023年6月5日に世界初公開されたランクルプラドのレクサス版となるレクサスGXの新型モデルは、近年のランクルやプラドのデザイン傾向を含め、予想外に四角いエクステリアで登場した。
20世紀、いやもっと言えば昭和の時代に比べると四角いクルマは激減しているだけに、四角いクルマは目立ち、人気車も意外に多いが、人気が復権している理由のひとつは丸いクルマが増えた反動で新鮮に見えることだろう。
また、四角いクルマが人気になっている大きな理由は機能性に優れる面が多いのも大きい。具体的にはちょっと考えただけでも、四角いクルマは取り回しの際の見切りがいい、キャビンやラゲッジスペースといったスペースが広く取れるなど、実用的なメリットが大きい。
さらにSUVやクロスオーバーのジャンルに属するモデルであれば、この種のモデルらしい力強さやたくましさを演出しやすいというのも四角いエクステリアが選ばれる大きな理由だろう。
そんなことも考えながら、ここでは現行、過去の四角いクルマを四角さのジャンルや魅力などなども交えながら見ていく。
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■個性際立つ四角いクルマ:現行モデル編
メルセデスベンツ Gクラスは三世代にわたって四角いデザインを踏襲しているが、現行はリングが付いたヘッドライトなどにより、大きく洗練された
現行の四角いクルマとしてピックアップしたモデルを見ていこう。
ジムニー、Gクラス、ラングラーといったクロカンSUVは、四角さがアイデンティティとなっているところもあるのに加え、前述した機能性もあり、四角いデザインなのは妥当なところだろう。
ハスラーとタフトという軽クロスオーバーは、四角さにより車内が想像より広く、四角いデザインによる恩恵を強く受けている。
N-BOXは初代モデルから四角いデザインで、これは現行ジムニーも同様だが、四角いデザインによって押し出しの強さや「軽乗用車にしては大きく見える」という点が強調されており、大ヒットした一因になっている。
デリカミニとスペーシアギアという軽ハイトワゴンのクロスオーバーは、eKクロススペースとスペーシアをベースにしながらも別のクルマのようなイメージに仕上がっている点が見事だ。
●スズキ ジムニー/ジムニーシエラ
スズキ ジムニー/ジムニーシエラ
現行モデルで原点回帰の四角いデザインとなったのも大ヒットの理由のひとつ。軽の維持費の安さを持つジムニー、機能に優れよりカッコいいシエラで迷う。
●ジープ ラングラー
ジープ ラングラー
ラングラーの四角いデザインも世代を重ねるごとに、洗練されたものになっている。ラングラーをピックアップとしたグラディエーターの存在感は強烈だ。
●三菱 デリカD:5
三菱 デリカD:5
四角いプロポーション自体は2007年の登場時から変わらず。2019年のビッグマイチェンでフロントマスクとリアビューの存在感が増し、いまだ高い人気を誇る。
●ダイハツ タフト
ダイハツ タフト
ハスラーと直接的なライバルとなるタフトだが、ハスラーよりさらに四角さを強調したデザインだ。フロントマスクはガーニッシュの有無があり、どちらの仕様もよく似合う。
●スズキ スペーシアギア
スズキ スペーシアギア
スペーシアは標準車、押し出しの強いカスタム、クロスオーバー風のギアを揃え、ギアは明るい雰囲気に加え、価格が意外に安いこともあり大きな柱に成長。
■1980年代以降の四角い珍車・名車を厳選! 懐かしのモデル編
トヨタ セリカ(3代目・1981年)。セリカとしては最後となるFR車。2ドアクーペはリアシート付近が一体感に欠ける、3ドアリフトバックはヘッドライト以外XXにソックリなデザイン
振り返ってみると、主に1990年代までの当時の言葉でいうRV、セダンとスポーツ系でも昭和までなら四角いクルマがこれだけあったことに改めて驚かされる。
ジャンルごとに見ていくと、昭和までのセダンはスペースの確保と大きく見えるデザインのため四角いデザインを採用していたと思われ、空力のためスペースを犠牲にしていた昭和末期のアウディ各車と比べると対照的で面白い。
スポーツモデルの四角いクルマは、1980年代後半以降成功したモデルが浮かばないというのが率直なところ。ただ、アルシオーネのCd値は日本車で初めて0.3を切り、その値は0.29と低い。「四角いデザインだから空気抵抗が大きい」とも言い切れないことを教えてくれた。
RV関係と軽乗用車はスペースを重視したいのもあり、四角いデザインを採用する傾向が昔から根強いことが、ピックアップした車種を見るとよくわかる。
●スバル アルシオーネ(1985年)
スバル アルシオーネ(1985年)
アヴァンギャルドさが目立つエクステリアではあるが、もう少し車高が低ければよりカッコよかったかも? インテリアもアヴァンギャルドなものだった意欲作。
●日産 サニーRZ-1(1986年)
日産 サニーRZ-1(1986年)
トラッドサニーのキャッチコピーを使った6代目サニーの3ドアクーペで、デザインは賛否あったが、筆者は武骨さしか浮かばないという印象だ。
●三菱 デボネア(2代目・1986年)
三菱 デボネア(2代目・1986年)
「走るシーランカス」と呼ばれた初代ほどの四角さではないが、四角さにより広さとフォーマルさを備えていた。AMGは四角さがより強調されていた。
●日産 サファリ(1987年)
日産 サファリ(1987年)
ランクルのライバルとなるラージクロカンSUVだったが、サファリの四角さは同時期のランクル60や80に対し武骨過ぎ、一般ウケせず伸び悩んだ。
●スズキ ワゴンR(初代・1993年)
スズキ ワゴンR(初代・1993年)
「サイズが限られた軽乗用車で広いクルマを作るには全高を上げるしかない」という発想と、エクステリアも四角という合理主義も大ヒットの理由だ。
●日産 ラシーン(1995年)
日産 ラシーン(1995年)
7代目サニーをベースにした今風に言えばクロスオーバーで、時代を先取りしていた。機能的に目立つところはなかったが、デザインを含め和みのある雰囲気により、いまだ愛されている。
●トヨタ メガクルーザー(1996年)
トヨタ メガクルーザー(1996年)
「和製ハマーH1」と言われた自衛隊向け高機動車の民生用で、2170mmという全幅ながら四角さによる見切りのよさと4WSにより、取り回しは意外に悪くなかった。今見ても存在感は別格。
●日産 キューブ(2代目・2002年)
日産 キューブ(2代目・2002年)
初代モデルに比べると角が取れた2代目キューブだったが、角と丸が絶妙にバランスされ、左右非対称のCピラーのデザインは好評。名は体を表す典型的なモデル。
●ホンダ クロスロード(2007年)
ホンダ クロスロード(2007年)
今ならカローラクロスやZR-Vに相当するクロスオーバーSUVで、3列シートを持ち、四角いボディもあり短い全長のわりに3列目が意外に使えたのは素晴らしかった。
●ダイハツ ムーヴコンテ(2008年)
ダイハツ ムーヴコンテ(2008年)
ムーヴをボクシーにしたエクステリアを持つ軽ハイトワゴンで、カスタムはクセを感じるスタイルだったが、標準はいい意味で万人受けするもので成功を収めた。
■四角いクルマは今後も登場する!?
編集部が厳選した四角いクルマの数々。まだまだ掲載できなかった車種もあり、そこが心残りではある。だが、嘆くことはない。今は四角なクルマに追い風が吹きまくってる時代。今後も新たな四角い人気車が登場する可能性は充分ある。令和、なかなかいい時代だ。
【番外コラム】個性が光る四角い輸入車たち
●ボルボ 240ワゴン(1974年)
ボルボ 240ワゴン(1974年)
FR時代のボルボは四角いデザインが象徴で、240はレースでも活躍。別名空飛ぶレンガ。
●フィアット パンダ(初代・1980年)
フィアット パンダ(初代・1980年)
四角いデザインはコスト低減のためもあるが、合理性というカッコよさも感じさせた。
●ランドローバー ディフェンダー(初代・1990年)
ランドローバー ディフェンダー(初代・1990年)
初代ディフェンダーの四角さは、クロカンSUVらしい機能美を感じるものだった。
●ルノー カングー(初代・1997年)
ルノー カングー(初代・1997年)
商用車ベースのハイトワゴンで、四角さもありボディサイズのわりに広さは抜群!
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昭和のデザインの方がカッコいいと
トヲタから言われている