2022年シーズンFIMエネルMotoEワールドカップの最終戦サンマリノ大会がミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われ、2022年シーズンを終えた。MotoEはMotoGPに併催で行われ、最終戦もMotoGP第14戦サンマリノGPのレースウイークに開催された。このサンマリノ大会で2022年のMotoEチャンピオンに輝いたのが、ドミニク・エガーターだ。
MotoEはこれまで、エネルジカ・モーターカンパニーの電動バイク『エゴ・コルサ』によって争われてきた。ただ、エネルジカのマシン供給に関しては、2022年をもって終了。2023年からはドゥカティがサプライヤーとなることがすでに発表されている。2019年から始まったMotoEは、ある意味で2022年が区切りのシーズンになったと言っていいだろう。
【順位結果】2022MotoE第6戦サンマリノ大会 レース2
その2022年シーズンのチャンピオンシップをけん引し続けたのがエガーターである。エガーターは第2戦フランス大会以降、ランキングトップを維持してきた。最終戦を迎えたとき、チャンピオン獲得の可能性があったのは、エガーターと、17.5ポイント差で追うランキング2番手のエリック・グラナドのふたり。今季のMotoEでは1戦2レースが行われるが、とはいえエガーターにとってかなり有利な状況であることに間違いなかった。
金曜日の予選ではエガーターがポールポジションを獲得し、グラナドが4番グリッドスタート。結果的に、土曜日に行われた決勝レース1で、エガーターにかわされ2番手を走行中だったグラナドが転倒を喫し、大きく後退。エガーターが2位を獲得したことで、エガーターが2022年のMotoEチャンピオンに輝いた。
エガーターはレース1後に行われたチャンピオン会見の中で、「いつもみたいに優勝争い、表彰台争いをすることが目標だった」と、笑顔を浮かべてレースを振り返った。
「エリックが転倒したとわかるまで、優勝争いをしようと思っていた。でもその後、優勝できる可能性があるならトライはするとしても、リスクは冒さないことにしたんだ。それに僕の後ろには3人くらいのライダーがいた。1レースを残してタイトルを獲得するために、表彰台を獲得したかったんだ」
「エリックがクラッシュして、少しナーバスになり、どのくらい攻めたらいいかわからなかった。でもただ集中して、正しい、クリーンなレースをしようとしたんだ。ラインを閉じ、(トップのマッティア・)カサデイの後ろのポジションを守ろうとしたよ」
今季のエガーターの安定感は抜群だった。最終戦を含む全6戦12レースで、3勝を含む10度の表彰台を獲得していた。MotoEのレースは6周から8周という短い周回数で行われるが、いったんポジションを下げても終盤にはトップ3争いを展開するレースも少なくなく、とにかく強かった。
そして付け加えたいのが、エガーターはスーパースポーツ世界選手権(WSS)にも参戦しており、まだシーズン中であるWSSでも強さを誇っているということだ。WSSでは開幕戦アラゴンのレース2から第5戦イギリスまで9連勝。レースでも度々優勝争いを展開するロレンソ・バルダッサーリとタイトルを争っており、第7戦フランス終了時点でランキングトップにつけている。なお、2021年にもエガーターはMotoEとWSSに参戦し、MotoEでは最終戦までチャンピオン争いを展開してランキング2位、WSSではチャンピオンを獲得した。
そこで、こうしたMotoEとWSSのダブルエントリーが、双方のレースにどう影響しているのか、と質問した。日本のメディアだと名乗ると、エガーターはまず、「鈴鹿8耐に行けなくて残念だったよ。日本がちょっと恋しい。WSSでもMotoEでも日本には行かないから」と語ってくれた。それから質問にこう答えている。
「もちろん多くの週末、バイクで走っていることは(チャンピオンシップを戦うのに)役立つよ。レースに参戦するので、(練習で)全サーキットに行く必要がないんだ。実際のレースでは限界近くで走るから、トレーニングよりもずっといいと思う」
「すごく忙しいときもあるけどね。ヨーロッパを旅することは問題ないよ。普通は月曜に家に戻り、リラックスする。そして火曜日にトレーニング。水曜日には次のレースに行く。水曜日と木曜日は準備だ。これが僕の生活だよ。今年は(MotoEとWSSを合わせて)40レース(※WSSも1戦2レースが行われる)くらいに参戦すると思うんだけど、この生活が気に入っているよ」
また、別の質問に対してはこうも回答している。
「家にいる家族、スポンサー、トレーナー、理学療法士たちがシーズンをいい形でスタートする準備を手伝ってくれる。そしてふたつの家族がサーキットにいるんだ。ひとつはMotoE。MotoEではすごくいい自信とフィーリングがある。そしてもうひとつは、スーパースポーツのテンケイト・レーシング。ただレースに集中できることが大事なんだ」
電動バイクと内燃機関のバイクという乗り換えはあれど、MotoE、WSSという多くのレースに参戦すること、また、その環境を含めてエガーターにとっていい効果を生んできたということなのだろう。MotoEは、そんなエガーターがシーズンを席巻する形で2022年の幕を下ろした。
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