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【ミドV8にマネッティーノ】トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95へ試乗 前編

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【ミドV8にマネッティーノ】トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95へ試乗 前編

シザーズドアのシリアスな高性能マシン

執筆:Richard Bremner(リチャード・ブレンナー)

【画像】限定18台 アレーゼRH95 イタリアンV8ミドシップの代表といえば 全93枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


「EJECT(緊急脱出)」と記されたボタンは、日常でも引きたくない。実際に押す場面は、緊急事態の航空機に乗っている時くらいだろう。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ・アレーゼRH95にも、そう記されたハンドルがドアにある。この場合も、あまり押したくはない。素晴らしいクルマとの旅が、終わりを告げることになるからだ。

アレーゼRH95との旅は、美しいカーボンファイバー製ボディに包まれた、670psのスリルと喜びに満ちた時間。華やかなシザーズドアと、彫刻的なボディ後半のドーサルスクープが、期待させる通りに。

クルマの操作系へ、洒落た名称が与えられている。それに気付くだけでも楽しい。同時に、アレーゼRH95は、相当にシリアスなパフォーマンス・マシンでもある。細部に至るまで見事なフィニッシュからも、その事実を感じ取れる。

カーボンファイバー製ボディは、極めて美しく造形してある。ガラスのように表面は滑らか。普段は目にすることがない、その内側も。

リアヒンジのクラムシェル・エンジンリッドを開けば、マットブラックで仕上げられた裏面に、誇り高きカロッツエリアらしい丁寧さを確かめられる。優れた職人は、見えない部分にも手は抜かない。

ボディを観察していくと、フェンダーやドアを横断するシルバーのラインは、削り出されたアルミニウムだとわかる。ドアやバンパーなどのカットライン、すべての三次曲面、ライトやエアインテークまで、隙なくデザインされている。

大きなカーボンファイバー製パネルも、寸分の狂いがない。思わず見入ってしまう。

言葉を失う美しいインテリア

インテリアにも言葉を失う。オーナーによってコーディネートされた内装は、ベージュとブラウンのアルカンターラで仕立てられている。黄色の糸で繊細に施されたステッチが、コーディネートを引き締めている。

シートの座面に施された繊細なステッチ・パターンは、翼を広げたトゥーリング・スーパーレッジェーラ社のロゴがモチーフ。ベージュやイエローの組み合わせと聞くと、雰囲気に疑問を感じるかもしれないが、写真をご覧いただければ理解できるだろう。

左右で別れた構造のコクピットに、上品な色合いの素材が展開されている。非常にエレガントで、座っているだけで豊かな気持ちになる。さらに、躍動的な走りが待っているのだから、笑みを抑えることは難しい。

果たして、突然現れたアレーゼRH95がどんなクルマなのか、トゥーリング・スーパーレッジェーラ社がどんな組織なのか、疑問に思う読者も多いだろう。恐らくこのカロッツエリア名をご存知なのは、ご年配か、相当な自動車ファンに限られると思う。

トゥーリング・スーパーレッジェーラ社の起源は、1926年に創業したコーチビルダー。当初はカロッツエリア・トゥーリング社として、カルロ・フェリーチェ・ビアンキ・アンデルローニ氏がミラノに立ち上げている。

ほどなく、コンクール・イベントで彼の手掛けたモデルは高い評判を獲得。アルファ・ロメオやイゾッタ・フラスキーニ、ランチアにBMWなど、多くのブランドがカロッツエリア・トゥーリング社へデザインを依頼した。

ディスコヴォランテ、エアロ3に続く第3段

創業から40年ほどの間に、スーパーレッジェーラと呼ばれる先進的な軽量ボディの製造技術も確立し、特許を取得。細い金属製パイプで格子状のベース構造を作り、その上に薄いアルミニウム製ボディパネルを被せることで、強度を確保するものだ。

軽く高剛性なことが特長で、手作業でのボディ製造に適していた。マセラティやブリストルなど、多くの有名メーカーがその技術を採用している。アストン マーティンのDB4やDB5、DB6も同様だ。

ところが、シャシーとボディが一体となったモノコック構造が登場。専用ボディの搭載が難しい時代へ突入し、トゥーリング社の経営は悪化する。倒産は免れたものの、1966年に事業を終了してしまった。

それから40年後の2006年にトゥーリング社は再起。カロッツエリアの伝統として、美しく少量生産の特注モデルを製造している。

今回ご紹介するアレーゼRH95も、その1台。2016年に発表されたアルファ・ロメオ・ディスコヴォランテと、2020年のスーパーレッジェーラ・エアロ3に続く、第3段のモデルになる。

デザインチーフを務める、ルイ・ド・ファブリベッカーズ氏が解説する。「これまでの2台はフロントエンジンでしたが、これはミドシップのプロポーションを模索する、初めての例。機敏な操縦性を備えます」

「これまでの3台は、ビクトリー・グリルや水平基調のテールライト、滑らかで優雅な、女性的なボディ曲面などの特長で共通性を持っています。縦長のエグゾーストや主張の強いヘッドライトなど、ディティールの組み合わせでも」

この続きは後編にて。

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