2025年F1第18戦シンガポールGPの予選。角田裕毅(レッドブル)は、まさかのQ2敗退だった。
理由は土曜日になって、グリップ力を感じられなくなったからだ。
角田裕毅、予選Q2で敗退「予想外のグリップ不足で苦戦した」旧型ウイングの影響については判断を保留、グリッドは13番手に
「FP3から少し感じていましたが、大きく感じたのは予選が始まってからです」と語る角田は、その症状を次のように説明した。
「フロントもリヤもどちらもですが、どちらかというと、フロントですね」
さらにこう続ける。
「金曜日のFP1とFP2ではそのような症状はありませんでした。金曜日からそんなに大きくセットアップを変更していないのに、今日はむしろグリップが悪化したように思えます」
角田はウイングの角度など、さまざまな変更を行ったが、グリップ力は改善しないまま予選15番手に終わった。
なぜ、角田は土曜日になって、グリップ不足に陥ったのか。考えられるのは、フロントウイングがチームメイトのマックス・フェルスタッペンと異なる仕様だったことだ。
今回、レッドブルはシンガポールGPにアップデートしたフロントウイングを持ち込んでいた。ところが、それはフェルスタッペンにだけ与えられ、角田が使うことはなかった。その理由をフェルスタッペンのレースエンジニアであり、今年からチームのヘッド・オブ・レーシングも兼務しているジャンピエロ・ランビアーゼは、次のように回答した。
「単純に数の問題だ。タイトなスケジュールで開発・製造しているので、2台分のスペアまで作ることができなかったんだ」
今回、フェルスタッペンに投入した新しいフロントウイングは、アッパーフラップが二等辺三角形のように中央部分が上へ張り出した形状となっている。
この新しいフロントウイングはアッパーフラップが変更されただけでなく、ノーズとの接着部分にカラーが付けられているのが特徴だ。これにより、フロントのダウンフォースが増え、もともと低速コースが弱点だったレッドブルのパフォーマンスが上がったと考えられる。
その一方で、角田はフロントが入りにくいアンダーステア症状に悩まされていた。金曜日のフリー走行から何度もフロントウイングのフラップの角度を調整したものの、なかなか改善されなかった。
そのため、「ウエイトなど、いろいろ変えました」(角田)と言う。これは、車両の重量配分を調整したことを意味する。フロントのグリップを失っていった場合の対処法として、重量配分をフロント寄りに変えることで相対的にフロントのグリップを上げることがある。その変更がうまくいけばいいが、それでもアンダーステアが消えないと、フロントとともにリヤのグリップが下がることもある。
低速コーナーでフロントが入りづらいという悪癖を持っていた旧型仕様のフロントウイングを使用した今年の第14戦ハンガリーGPでは、フェルスタッペンをもってしても予選8番手だったのは記憶に新しいところだ。
ランビアーゼによれば、今回のフロントウイングのアップデートは、低速コース用ではなく、RB21の基本的な仕様変更であるため、シンガポールGP以降のレースでも投入する予定だという。「したがって、間に合えば、アメリカGPからユウキにも用意される」(ランビアーゼ)と話す。
ローラン・メキースがレッドブルの代表になってから、フェルスタッペンと同じ仕様のパーツを使うことができるようになった角田。しかし、イタリアGPからの2連勝でレッドブルは再びフェルスタッペンを優先するようになった。これはチャンピオンシップを目指すチームとして当然のこと。いまは与えられた状況のなかで、角田は最善を尽くすしかない。それはメキースも理解しているはずだ。
[オートスポーツweb 2025年10月05日]
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