ポルシェ356のランニングギアを組む夢
ダネンハウアー&シュタウス(D&S)は、マーク・レイノルズ氏が30年前にヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン博物館を訪問した際、心が奪われたモデルだったらしい。たくさんの写真を撮影したと話す。
【画像】VWビートルがベース D&SスポーツカブリオレとWDデンゼル1300 356とビートルも 全84枚
彼は、これまでに200台以上のフォルクスワーゲンとポルシェを所有し、英国では空冷フラット4とフラット6の第一人者と呼べる人物。両ブランドの殆どのエンジンに関わった経験を持つが、D&Sは初めてだった。残存するスポーツカブリオレは、19台のみだ。
レイノルズは、シュツットガルトで自動車修理工場として今も営業を続ける、D&S社のワークショップを訪問。歴史的な価値を判断し、事業を起こしたカート・シュタウス氏の娘、ジセラ・シュタウス氏へスポーツカブリオレを引き継いでもらうために。
一方のジセラは、自社の歴史に関心を寄せる人物と出会い、興奮したそうだ。レイノルズへ、D&Sの当時の看板やボディ成形に用いた木型などをプレゼントした。数十分前に届けられたばかりの、D&Sスポーツカブリオレも。
彼女の父は、ポルシェ356のランニングギアを組みたいと、以前から口にしていたという。ジセラは、レイノルズがスポーツカブリオレを父が描いた完璧な状態にできる人物だと考えたのだった。
ほぼすべてのスポーツカブリオレと同様に、レイノルズのクルマにもフォルクスワーゲンのエンジンが載っていた。当時はチューニングも施していたが、殆どがオリジナルの30psのままだった。
タイプ1比で50%以上もパワフルな46ps
そこでレイノルズは、1955年のプレAと呼ばれる356用エンジンを搭載したビーチバギーを入手。ポルシェの部品を買い揃え、カートが夢見ていたクルマを作り上げた。ボディは、彼の会社の向かいにある、FHエリス・コーチワークス社がレストアした。
ボディの状態自体は悪くなかったが、シャシーは変形し左右で長さが変わっていたため、別のタイプ1のものへ交換されている。若干手が加えられたダッシュボードに並ぶポルシェ用メーターは、ビーチバギーから抜き取られた。
スポーツカブリオレは、グレーでボディが再び仕上げられ、ブラックのコノリーレザーで内装が仕立てられた。見事に、カートが思い描いていた理想のD&Sが完成した。
トランスミッションもポルシェ356譲り。リビルドされたばかりで馴染んでおらず、まだシフトフィールは渋い。それでも一度ギアが噛み合わされば、同時期のタイプ1より間違いなく加速は鋭い。オリジナルのD&Sよりも。
最高出力は46psと驚くほどではないが、タイプ1比で50%以上もパワーアップしている。778kgの車体を公道で走らせるのに、まったく不足は感じられない。
ステアリングホイールを回していくと、印象はタイプ1と重なる。敏捷性は程々でも、運転自体が楽しい。ブレーキも356用の部品で組まれており、ドラムながらよく止まる。
安全性を担保するため、マスターシリンダーは1970年代のタイプ1に搭載されていた高性能なものを用いている。目立たないよう、フロントの荷室の裏側に隠してあるが。
少量生産モデルとしては例外的に高い品質
ボディは1950年代らしいグレーが美しい。しっかりしたドアキャッチャーではなく、簡素なラッチで噛み合わさるリアヒンジのドアは、まさにスーイサイド(自殺)・タイプ。それでも、金庫の扉のようにガッシリ閉じる。
フロントとリアのハッチも、立て付けが素晴らしい。ハンドルを引いて引き上げると、自動ラッチによって、開いたままの状態を保てる。少し持ち上げてラッチを解除すれば、スッと正しい位置に戻る。見た目のとおり、質感の高い開閉といえる。
少量生産のモデルとしては、例外的な精度といって良い。この高品質な仕上がりは、D&Sの特長でもある。1950年代のビートル・ベースのスポーツカーとして、価格価値は優れていたといえる。
折りたたみ式のフードの設計にも、こだわりを感じる。ワンモーションの滑らかな動きで上下し、ボディやフロントガラスにピッタリ納まる。雨が降り出してから数分間、あれこれ格闘することになる英国製ロードスターとは大違いだ。
ところが、この高品質こそD&Sを傾ける原因にもなった。20人にも満たない従業員とともに、丁寧に時間を掛けて、1台1台スポーツカブリオレを製造していた。原寸大の木型から、すべてのパネルが職人の手で打ち出された。
ボディにプレス成形のパネルはなく、ドアと前後のリッドが1枚ものとして加工された。それ以外の部品は、溶接でつなぎ合わされられていた。その結果、1台の完成に800時間から1000時間が必要だったらしい。
ドイツのユニークな時代の生き証人
創業者のゴットヒルフ・ダネンハウアー氏とカートは深夜まで働いたが、得られる収益は極わずか。自らの1台を持つ余裕すらなかったようだ。
多忙を極めたためか、製造記録も残っておらず、実際に販売されたスポーツカブリオレの台数も正確にはわかっていない。80台から135台の間だと推定されている。
さらに1955年、タイプ1をベースにした2ドアクーペ、フォルクスワーゲン・カルマンギアが登場。D&Sの購買層は、本家のスポーツカーへ流れてしまった。
ごく僅かな台数が生産された、ダネンハウアー&シュタウス・スポーツカブリオレ。空冷フォルクスワーゲンをベースとした多くの派生モデルのなかでも、その希少性は突出している。
レイノルズのカブリオレは、5台が生き残っているスプリット・ウィンドウの1台。生産後期には、1枚ものの湾曲したフロントガラスが与えられ、固定ルーフのクーペも作られた。ワーゲン・マニアの間でも、知る人ぞ知る存在といっていいだろう。
さらに、ドイツの多くのコーチビルダーが独自モデルを製作していた、ユニークな時代の生き証人でもある。ポルシェが掴んだ成功とは、逆の運命を辿ったことが、数奇な時代でもあったことを物語っている。
協力:ジャスト・キャンパーズ社
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