オープンカーに乗っていると、風とか匂いとか、太陽の光とか街のノイズとか、いろんな刺激が飛び込んできて、脳ミソが活性化する。他者の視線も感じるから、しゃきんと背筋が伸びる。たとえ同じモデルであっても、クーペとカブリオレでは見える景色はまるで違う。オープンカーに乗ると毎日の生活が変わる、かもしれない。
よくできたスポーツカーにオープンを組み合わせると最強だ
現代コーチビルドの最高峰。世界に1台の蘇った“黒いクルマ”とは?
青山通りに面したアストンマーティン青山ハウスをヴァンテージ・ロードスターで出発して数分、「これってある意味、エコカーかも?」と思った。
排気量4ℓのV型8気筒ツインターボエンジンは、右足にほんの少し力を込めただけなのに弾けるように回転を上げる。車線変更だけでもうっとりするぐらい、ハンドル操作に対する反応は正確だ。だから、青山通りを30km/hで流しているだけでも豊かな気持ちになるのだ。腹いっぱい食べないと満足できないジャンクフードのように、イマイチのクルマだとぶっ飛ばさないと気分が高まらない。
スイッチ操作で7秒足らずでフルオープンになる幌を開けると、五感が研ぎ澄まされたように感じる。丸子橋を渡るだけでも、多摩川の匂いがする涼風を首筋で感じたり、濁りのない乾いた排気音がダイレクトに鼓膜を震わせたり、運転中に感知する情報量が増えるからだろう。五感がフル稼働するからドライブ体験が濃くなるのだ。
ひと昔前だったら「スピード=いいクルマ」だった。いまでもスピードがクルマの魅力の一部であることに変わりはないけれど、その割合は小さくなっているように思える。男らしさが変化しているように、いいクルマの定義も、豊かな時間を過ごすということにシフトしつつあるのではないか。豊かな時間を過ごすための乗り物だと考えると、手足のように動いてくれるスポーツカーに、ドライブ体験を濃厚なものにしてくれるオープンを組み合わせると最強だ。
アストンマーティン・ヴァンテージのドライブモードを最もレーシィな「トラック」にセットすると、アクセルペダルを戻したときに「バラッパラッ」と盛大にバックファイヤーのような音が響き、足まわりもしゃきっとタイトになる。そのとき、このメーカーがただの高級ブランドではなく、自動車の黎明期にサーキットで名を馳せ、2021年に再びF1の最前線に戻ってきたレーシングの名門だという事実に思い至る。
ジャガーFタイプは、ハンドルを切ってから曲がりはじめるまでの、一瞬のタメが気持ちいい。これはレスポンスが鈍いというわけではなく、相手に飛びかかる寸前の肉食獣が筋肉に力を蓄えているような自然なフィーリングだ。1950年代のル・マン24時間レースで名声を得たブランドだけあって、クイックならいいというわけではないことをご存じだ。どうすれば心に響くスポーツカーになるのか、ツボを押さえている。
動物の体温を感じさせるジャガーと違って、BMWのZ4は気持ちがいいくらい冷徹な精密機械だ。歯車やボルトがわずかな隙もなく、正しく組まれていることが伝わってくる。無駄や曖昧さがない。
こうしたメーカーごとのキャラの違いが手に取るようにわかるのも、屋根が開いていることで五感が鋭敏になっているからだ。2シーターのオープン、たたずまいはクラシックだけど新しいじゃないか。時代が1周まわって、屋根が開く2座のスポーツカーが、再び存在感を放つようになった。
Aston Martin Vantage Roadsterヴァンテージはアドヴァンテージと同じ意味で、アストンマーティンでは歴史的に「強化されたエンジンを積むモデル」を指す。2018年に登場した現行ヴァンテージも、V8ツインターボを搭載するピュアなFRスポーツカー。撮影車はVANED(水平翼)グリルのキットを装着した仕様で、より洗練された表情に。
SPEC 全長×全幅×全高:4465×1942×1273mm
ホイールベース:2704mm 車両重量:1628kg
エンジン:4ℓV型8気筒ツインターボ
最高出力:510ps/6000rpm
最大トルク:685Nm/5000rpm
乗車定員:2名 価格:¥21,599,000~
Jaguar F-type1950年代のサーキットを席巻したCタイプ、Dタイプ、そしてエンツォ・フェラーリに「最も美しいスポーツカー」と言わしめたEタイプなどの系譜を受け継ぐのがFタイプ。2020年の大がかりなマイナーチェンジを受け、従来型よりロー&ワイドで精悍な雰囲気となった。電動式のソフトトップは、約10秒で開き、約13秒で閉じる。
SPEC 全長×全幅×全高:4470×1925×1310mm
ホイールベース:2620mm 車両重量:1670kg
エンジン:2ℓ直列4気筒ターボ
最高出力:300ps/5500rpm
最大トルク:400Nm/1500~2000rpm
乗車定員:2名 価格:¥11,010,000~
BMW Z4コンパクトなFRのオープン2シーターである3代目Z4。2代目が採用した格納式ハードトップを初代と同じソフトトップに戻し、さらにホイールベースを短くするなど、豪華路線から初心に立ち返った。ただしソフトトップになっても屋根を閉じればクーペ並みの静粛性を誇るなど、上質さは変わらず。電動開閉式の幌は約10秒で開閉する。
SPEC 全長×全幅×全高:4335×1865×1305mm
ホイールベース:2470mm 車両重量:1490kg
エンジン:2ℓ直列4気筒ターボ
最高出力:197ps/4500rpm
最大トルク:320Nm/1450~4200rpm
乗車定員:2名 価格:¥6,910,000~
Photos Utsumi / Words サトータケシ Takeshi Sato
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みんなのコメント
買ってよかった。。
色々事情はあると思うけど、車好きなら一度は試して欲しいよ