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「あれを経験してからプレッシャーを感じなくなった」スーパーフォーミュラ初タイトル懸かる牧野任祐が明かす、ターニングポイント

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「あれを経験してからプレッシャーを感じなくなった」スーパーフォーミュラ初タイトル懸かる牧野任祐が明かす、ターニングポイント

 2024年のスーパーフォーミュラは、いよいよ最終ラウンドを迎える。11月9日、10日に鈴鹿サーキットで行なわれる第8戦・第9戦の2連戦で雌雄が決するが、現時点ではVANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔が86.5ポイントでリーダー、それをDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐(72ポイント)、TEAM MUGENの野尻智紀(70ポイント)らが追いかけるという展開だ。

 レースウィーク金曜日にはランキングトップ3ドライバーによる記者会見が実施され、それぞれが意気込みを語った。

■鈴鹿サーキットを無人マシン”A2RL”が走った。アブダビでの初イベントから半年……格段に進歩した印象

■スーパーGTとの2冠も見える坪井翔「こういう環境でレースできるのは幸せなこと」

 今季からTOM’Sに移籍した坪井は、富士戦での3連勝で大きくポイントを稼ぎ、ライバルにふた桁の点差をつけてシリーズをリード。スーパーフォーミュラ参戦6年目にして初の王者に近付いている。また坪井はスーパーGTでもTOM’Sに所属しており、こちらもシリーズタイトル連覇に王手。国内トップカテゴリーでの2冠にも近付いている。

「今シーズンはチーム移籍という大きな環境の変化があったシーズンになったので、再スタートのような年になったと思います。開幕戦ノーポイントでかなり痛いスタートを切ってしまいましたが、そこからは全てトップ5でフィニッシュできていますし、尻上がりに良くなっている最中だと思いますし、すごく流れは良いと思います」とシーズンを振り返る坪井。ふた桁点差のリードを築いているが、今週は2レースフォーマットで最大46点稼げるということもあり、「差はあるようでない」と気を引き締めていた。

 また、来たるレースが楽しみだと語った坪井に対して、王座獲得に向けたプレッシャーはあるかと質問が飛ぶと、彼は「ないと言えば嘘になる」としつつ、それ以上に今ある環境でモチベーションを高く持てている部分が大きいと語った。

「こういったチャンピオン争いができる機会はなかなかありませんし、こういう環境でレースができるのは幸せなことです。だからこそモチベーションも上がります」

「モチベーション高く最終戦に迎えるという意味で、先ほどの“楽しみだ”という言葉に繋がったのだと思います」

■「プレッシャーはあまりない」と語る牧野。その理由は

 前述の坪井のコメントに続いて、「プレッシャーに関しては、正直あまりありません」と答えたのが、こちらもスーパーフォーミュラ参戦6年目での初タイトルを狙う牧野だ。

 牧野は今季第2戦オートポリスで、悲願のスーパーフォーミュラ初優勝。その後は第5戦もてぎで2勝目を飾った上、全戦5位以内という高い安定感を見せ、タイトルコンテンダーとして最終戦に乗り込んできた。

「6年目でやっと初優勝できて、自分の殻を割ることができたのかなと思っています」と語る牧野。レース界では「1勝すると変わる」などとよく言われるが、実際に初優勝以降はより一層力強いレースを見せている印象のある牧野。自身で何か変化を感じているかと問うと、彼はこう答えた。

「個人的には何も変わっていないつもりで過ごしているのですが、ふとした時に『表情柔らかくなったね』と言われたりして、自分が思っていた以上に背負っていたものが大きかったのかなと感じています」

「やっぱり自分のチームメイトが勝っていく中で、それを気にしていなかったと言ったら嘘になります。ただ自分の中でも気にしないようにしていたところもありましたが、勝ってひとつ肩の荷がおりた時に、やっぱりめちゃくちゃ気にしてたんだな……って」

「それがなくなってからは、のびのびやれているんじゃないかと思います」

 そして前述の「プレッシャーはあまり感じていない」というコメントについて牧野は、これまで“修羅場”を掻い潜ってきたことがその理由になっていると語る。特に2021年のスーパーGTでの経験が大きかったようだ。

「僕はそれなりに色んな修羅場を潜り抜けてきたと個人的に思っていますが、一番プレッシャーを感じたレースが2021年のスーパーGT最終戦なんですよね」

「あの年僕は開幕戦を欠場していて、どうやっても僕が(ドライバーズ)チャンピオンになる条件がなく、かかっているのは(山本)尚貴さんとチームの2連覇だけでした」

「そのレースのスタートが人生で一番緊張していました。ここでチャンピオンのかかっていない自分が何かやってしまったら、尚貴さんとチームと同じテンションで落ち込めないというか、すごく複雑な状況でした」

「それを経験してから、あまりプレッシャーというものを感じなくなったんですよね。それがあまりにもキツかったので。だから僕はのびのび悔いなくレースができたらと思っています」

■3度目の王座なるか。「この先5年くらいのキャリアがかかっている」野尻智紀。強力なライバルに「勝てると思っている」

 ランキング3番手から追いかけるのは、2021年、2022年のシリーズチャンピオンである野尻。今季は開幕戦鈴鹿と、雨で途中終了しハーフポイントとなった第3戦SUGOで勝利を飾ったが、10月の富士2連戦で6位、7位と失速し、やや後手に回る格好となってしまった。

 比較的涼しいコンディションでの鈴鹿戦には相性が良いという野尻は、「自分たちのパフォーマンスを上げるという意味では難しくないかなと思っている」としつつも、この会見場にいないライバルたちも強力であることから、「自分が優勝するんだという気持ちをより強く持って過ごしたい」と意気込んだ。

 また、野尻はタイトルコンテンダーの中で唯一のスーパーフォーミュラ王者経験者だが、坪井も牧野もスーパーGTのGT500クラスでタイトルを獲得した経験があることから、「どれだけ山場を乗り越えてきたかが強さになっていると思う。かなり手強いと思っています」と語った。

 そして、これまでのタイトル争いと心境の部分で違いはあるかと問われた野尻は、こう答えた。

「追いかける側かそうじゃないか、というところは大きな違いかなと思います。僕がかかっているものと言えば、自分のこの先5年くらいのキャリアになるんじゃないかというくらいで。そこは自己責任の部分ですし、とにかく今はこの強力なライバルたちに勝てると思っているので、それが楽しみで仕方ないなという感じです」

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