巨大なモニターは必要? 時間をかけて作られた確かさ
バッテリーEVへのシフトと同時に、クルマのハイテク化が止まらない。一方で、熟成を重ねてきた歴史あるモデルの場合は、課題も引き起こしている。フォルクスワーゲン・ゴルフより誕生が古い、9代目となるパサートも、その1台といえるだろう。
【画像】期待通り!の熟成 VWパサート 欧州の大きめステーションワゴン ID.7とアルテオンも 全146枚
パサートには、相応の熟成を期待する人は多いはず。機能的で、地に足がついたような、落ち着いた雰囲気を求めるのではないだろうか。周囲へ影響を与え、余計なものをまとわない、フィルターで濾したような深い味わいを。
チャットGPTへ対応した、15インチものインフォテインメント用モニターを、強く期待するファンは少ないと思う。9代目パサートのダッシュボードを見た途端、本当に必要なのか疑問を抱いてしまった。
ただし、やや前方視界を遮るほど巨大な画面は、ディスカバー・プロ・マックスと呼ばれるシステムに含まれるオプション。標準は12.9インチと、ひと回り小さい。最新モデルとして、この手の装備が売りになることも理解はできる。
実は、このシステムはパサートと並行して販売される、同社のID.7と基本的に同じ。メニュー構造を理解しやすく、ショートカット・アイコンも便利だ。実際に押せるハードボタンはないが、操作性は優れる。
恐らく、筆者は記憶にあるパサートを欲しているだけなのだろう。既存のイメージを守りながら、変化の激しい時代に適応させるというバランス取りは、難しいに違いない。9代目には、時間をかけて作り込まれたような、確かさがあることは事実だ。
秀でた実用性は期待どおり 驚くほど広い荷室
9代目パサートが基礎骨格とするのは、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォーム。8代目と異なり、市場を問わずサルーンは提供されない。今回試乗した、ステーションワゴンのみとなる。
スタイリングは、8代目ゴルフへ似た雰囲気を漂わせる。筆者の目には、フロントのオーバーハングが少し長すぎ、バンパーの下部が外へ張りすぎているように映る。ハンサムなことは、間違いないけれど。
ID.7も存在するため、パワートレインの選択肢は狭められた。英国市場の場合、電圧48Vのスターター・ジェネレーター(ISG)が組まれた、1.5L 4気筒ガソリンターボのマイルド・ハイブリッドと、プラグイン・ハイブリッドという展開になる。
ただし、後者は2024年後半の発売が予定されている。ディーゼルターボも、四輪駆動も導入されない。Rパフォーマンス仕様の登場を、期待して待とう。
秀でた実用性は、従来からのファンの期待へ応える。全長は先代より約150mm長くなったから、そのぶん車内空間も大きい。
高身長の大人でも、後部座席へ足を伸ばしてゆったり座れる。若干高さ方向は限られるものの、パノラミック・ガラスルーフを選ばなければ余裕が出るはず。開放感は減るかもしれないが。
テールゲートを開けば、初見なら驚くほど広い荷室が姿を表す。特に奥行きが深い。
滑らかな1.5LマイルドHV 受け継がれた強み
最高出力150psを発揮する、1.5Lのマイルド・ハイブリッドは滑らか。7速デュアルクラッチATも同様だ。ステアリングは、条件を問わず正確に反応する。ドライバーの気持ちを刺激することはないものの、パサートとして、これが正解だろう。
エンジンはスルスルと回転し、1572kgのボディを不足なく走らせる。ただし、高速域では少し息苦しく感じられ、第一級の洗練性を備えるわけではない。積極的に回りたがるユニットでもない。
姿勢制御は一貫して安定。サスペンションはやや硬めながら、乗り心地はしなやかで落ち着いている。DCCプロと呼ばれる、オプションのアダプティブダンパーが、質感を引き上げていることは明らかだ。
9代目へ進化しても、従来どおり熟成された仕上がりにある、ステーションワゴンのパサート。プレミアム・ブランドのユーザーを引き付けるのにも不足ない、インテリアの上質感やデジタル技術も魅力だろう。
優れた実用性や快適性など、基本となる強みも受け継がれている。合理的なフォルクスワーゲンのクルマ作りは、2024年も健在のようだ。
◯:実用性に長けた車内空間 洗練されたインテリア 一層向上した快適性
△:内燃エンジンの選択肢が限られる 内装の一部に見られる安っぽい素材 大画面はドライバーの集中力を削ぐ可能性アリ
フォルクスワーゲン・パサート 1.5 eTSI 150 R-ライン(英国仕様)のスペック
英国価格:4万8440ポンド(約916万円)
全長:4917mm
全幅:1849mm
全高:1497mm
最高速度:222km/h
0-100km/h加速:9.2秒
燃費:17.8-18.5km/L
CO2排出量:124-128g/km
車両重量:1572kg
パワートレイン:直列4気筒1498cc ターボチャージャー+ISG
最高出力:150ps/5000rpm
最大トルク:25.3kg-m/1500-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(前輪駆動)
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みんなのコメント
ハイテク化との記載だがウ~んやね。