スーパーGT第3戦が行なわれている鈴鹿サーキットでは、決勝日の5月29日(日)にプロモーターのGTアソシエイション(GTA)による定例会見が実施され、そこで第2戦富士での事象に関する検証結果や今後の対応について語られた。
100周の予定でスタートしたゴールデンウィークの富士戦は、レースが59周目を迎えた時にホームストレート上で大事故が発生した。3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの高星明誠がスロー走行中のGT300クラス車両、50号車Arnage MC86を交わす際にスピンし、コース左側のガードレールに激突。マシンはモノコックだけを残してほとんどバラバラになるというショッキングなシーンとなった。
■「安全には限界がない」スーパーGTで発生した大事故に関連し、スーパーフォーミュラが安全対策に持論
幸い高星は無事だったものの、このアクシデントについては様々な議論を呼ぶこととなった。
当時、3号車は複数台がスリップストリームを使いながら走行する集団の中におり、首位39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra、2番手に3号車Z、3番手に37号車KeePer TOM'S GR Supraという順でホームストレートを走っていた。そして39号車は前にいる50号車のスリップストリームを使おうとしたところ、スローダウンに気付いて咄嗟に避けた。しかし、39号車の後ろにつけていた3号車の目の前には突然スローダウン車両が現れた形となったため、避け切れずにスピン状態に陥った。
会見にはGTAの坂東正明代表、そして服部尚貴レースディレクター(RD)が出席。この件に関する報告においては、映像を用いながら報告が行なわれた。
服部RDは開口一番、今回発生した事故が“レースアクシデント”なのか、“インシデント”なのかという部分については、当初からレースアクシデントだと判断しているという見解を示した。その上で、どのような要因で事故が発生したのか、そしてそれに対してどういった対策をとっていけばいいのかについて説明を始めた。
まず、50号車のスローダウンに関して。トラブルにより50号車は最終的に130km/h前後まで車速が落ちていたため、ピットレーン入口付近にある、進行方向左側にあるポストでスローダウン車両の走行を示す白旗が掲示された。
この白旗が出された際、GT500のトップ争いの先頭にいた39号車は、31号車apr GR SPORT PRIUS GTのスリップについていたこともあって、フラッグが認識できない位置にいたのではないかというのが服部RDの見解。だからこそ、ピットウォール側にあるメインフラッグタワーで即座に白旗を掲示するべきだったが、その準備ができていなかったと指摘した。
そして50号車はスロー走行時、レコードライン外のホームストレートイン側に寄って走行していたが、これについても服部RDは、ハザードランプもしくはウインカーを出して後方にスロー走行を知らせたり、イン側の白線を跨ぐくらいまで寄ることができたのではないかと話した。
また関口雄飛がドライブする39号車の車載映像も公開されたが、関口は50号車の存在を認識した後、ブリッジ付近でスロー走行であることに気付いたはずだと服部RDは語る。この関口の動きについては、反応が遅かったのではないかとの意見も見られたが、服部RDは中継カメラの見え方の問題でそのように見えた部分もあるのではないかということ、そしてGT500のトップ争いの最中で、関口は首位の座を守るか失うかという状況にある中で、どうしても後方により意識がいってしまったのではないかということを指摘した。
そしてもうひとつの要因として服部RDは、3号車の高星は50号車が視界に入る直前、39号車の関口のスリップから抜け出すためにわずかにステアリングを右に切っていることを挙げた。車体が右に動こうとしている中で、急激な左へのステア、そしてブレーキングによる荷重移動により、激しいスピンになったのではないかと語った。
これら様々な要因を踏まえた上で、服部RDは「どうしたらこれが二度と起こらないか、というのが一番大事」として再発防止策について述べた。
まずは運営側としては迅速にスロー車両の存在を伝えられるような体制の強化、そして50号車のようなトラブル車両においてはウインカーやハザードを活用してスロー状態であることを明確に知らせること、39号車のようにそれを追い越す側の車両は、プロのドライバーとして危機察知のアンテナを張り巡らせること、そして危険な車両を認知した場合は、“仲間を守る”動きに切り替えてその車両の後ろにつかないこと、それらが重要であると示した。
会見ではこれら一連の報告の後、記者から様々な質問が飛び交い、1時間強の長時間の会見となった。その内容についても今後詳しくお伝えする。
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