世界トップのシェアを誇る日本の二輪メーカーですが、モータースポーツの世界においても圧倒的な成績を収めています。
実際、二輪ロードレースの世界最高峰であるMotoGPでは、1975年以降日本の二輪メーカー以外のマシンがシリーズチャンピオンを獲得したのは2007年と2022年のドゥカティのみであり、それ以外はすべてホンダ、ヤマハ、スズキのいずれかが栄冠を手にしています。
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そのほか、モトクロスやトライアルといったほかのカテゴリーのレースの世界選手権でも、日本の二輪メーカーのマシンが大活躍を見せています。
一方、ホンダやヤマハ、スズキ、カワサキといった日本の二輪メーカーが、バイクの生産を本格的にはじめたのは戦後になってからです。欧米の二輪メーカーの多くが戦前に創業していることを考えると、日本の二輪メーカーの歴史は決して長いとは言えません。
実際、ホンダが日本の二輪メーカーとしてはじめて「マン島TTレース」に参戦したのは1959年のことですが、このレース自体は1905年から開催されているなど長い歴史を誇っています。
ただ、参戦初年度にもかかわらず、ホンダは団体優勝を果たしています。1961年に初のグランプリ優勝を獲得して以降は快進撃を見せ、日本の二輪メーカーの技術を世界に知らしめました。
また、1962年にはスズキもマン島TTレースの50ccクラスで初優勝を飾っています。加えて、当時の世界選手権ロードレース(現MotoGP)では、メーカーチャンピオンと個人チャンピオンの両方を獲得したほか、1964年まで4年連続でメーカーチャンピオンに輝いています。
ヤマハもまた、1965年から1968年にかけて、マン島TTレースの125ccクラスで4年連続のチャンピオンを獲得しています。
1966年に史上初のWGP全クラス制覇を達成したホンダは、翌1967年シーズンをもってWGPへの参戦から一時的に撤退します。
一方、継続して参戦を続けたヤマハやスズキは、その後もWGPで好成績を収め続けました。
歴史の浅い日本の二輪メーカーが、1960年代から1970年代にかけて、これほどまでに圧倒的な成果を見せた理由はどこにあるのでしょうか?
その最大の要因のひとつが、戦後の日本が置かれた状況にあると言われています。
1945年に敗戦国となった日本は、アメリカを中心とした連合国軍による統治のもと、復興を目指すことになりました。そのなかで、航空機の製造など軍事産業に関連するものが制限されることになり、それらに携わっていた技術者が二輪車の開発という新たな仕事に就くことが増えました。
元来高い技術を備えている日本の技術者たちですが、そのなかでも航空機開発の技術者たちの腕は一級品と呼べるものでした。そうした優秀な技術者たちが二輪開発を行なったことで、日本の二輪メーカーは高い性能を持つバイクの開発に成功したと言われています。
一方、モータースポーツに対する並々ならぬ熱意があったことも、大きな要因のひとつに数えられます。
ホンダの創業者である本田宗一郎氏は、マン島TTレースで活躍することが、日本の技術の発展やホンダの世界進出に大きく貢献できると考えました。
ただ、1954年にマン島TTレースへの参戦を表明したホンダですが、実際に参戦したのは1959年のことです。その間、ホンダは国内のレースへ参戦したり、新たな超高回転エンジンの開発を行なったりと、万全の準備を行いました。また、過去のマン島TTレースの記録を入念に調査したりもしました。
そして1959年、海外渡航が容易ではなかった時代に初めて参戦したマン島レースTTレースの場で、ホンダチームのメンバーたちは、必死にライバルたちの写真を撮り、その後のマシン開発に活かしたといいます。
同じように、スズキやヤマハも、マン島TTレースをはじめとするモータースポーツの場で自社のバイクをアピールすべく、研究開発に勤しみました。
優れた技術に加えて、こうした「チャレンジャー精神」や「ハングリー精神」によって、日本の二輪メーカーは世界を席巻していったと言えます。
※ ※ ※
ただ、MotoGPをはじめとするモータースポーツへの参戦は、企業にとって大きな負担を与えるのも事実です。実際、スズキは2022年シーズンをもってMotoGPから撤退しています。
モータースポーツが二輪メーカーの技術開発に大きな役割を果たすことは言うまでもありませんが、時代が変わったいま、モータースポーツに対してどのように向き合うのか、各二輪メーカーの姿勢が問われています。
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