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ホンダの電動化の鍵は“i-MMD”だ!──自慢のハイブリッド・システムの魅力とは?

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ホンダの電動化の鍵は“i-MMD”だ!──自慢のハイブリッド・システムの魅力とは?

2019年2月28日と翌3月1日、本田技研工業(以下ホンダ)は、創業の地である静岡県浜松市で、「SPORT HYBRID i-MMD Technical Workshop & Experience」と題した取材会を開催した。

初日にスポーツハイブリッドi-MMD搭載モデル数モデルを試乗、翌日の午前中にモーター製造の最新ラインを見学するというスケジュールで、その目的はホンダの電動化に対する取り組みをあらためてアピールしようというものだった。

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東京8時3分発のひかり453号で浜松駅に降り立った取材陣はバスに乗り換えて、浜名湖畔にあるホンダの運転啓蒙施設「交通教育センターレインボー浜名湖」へと移動。ワークショップは、4月から本田技術研究所の社長に就任する三部敏宏氏(このときは副社長)の次のようなお話から始まった。

昨2018年、ホンダはプラグ・イン・ハイブリッドの「クラリティPHEV」、ハイブリッドモデルも設定した「CR-V」、そしてハイブリッド専用モデルである「インサイト」といったi-MMD搭載車を新たに送り出した。

未来を予測することは非常にむずかしいけれど、トランプ大統領の率いるアメリカは別として、中国、欧州は電動化に前のめりで、各国各地域で事情が異なるとはいえ、グローバルで見てCO2に対する規制は今後ますます強化されることは間違いない。

EUが昨2018年12月末に発表した新しいCO2規制は、2030年に販売される新車は2021年比で37.5%低くなっていなければならない、というものだった。

ガチョーン(これは筆者の心情。衝撃的な数字である。10年後に燃費を4割近くも下げなければならないのだから)。

というようなこともあって、ホンダは2030年をめどに4輪車のグローバル販売台数の3分の2を電動化することを目指す。プロダクトの50%をHEV(ハイブリッド)とPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)、15%をZEVにし、ガソリン車は35%に縮小する。ちなみに、2020年は、ガソリン96%、HEV3%、PHEV1%、ZEVは0%というから、かなり野心的な数字だ。

65%EV化プロジェクト推進のためのエースに選ばれたのが、2013年にアコードに搭載されて登場した、ホンダの中型車用ハイブリッドシステム、i-MMD(intelligent Multi-Mode Drive)だったのである。

ホンダには現在、目的に応じて3種類のハイブリッド・システムがある。フィットに代表される小型車用1モーターのi-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)、アコード・クラス用の2モーターのi-MMD、そして、レジェンドとNSXに搭載する3モーターのSH-AWD(Super Handling All- Wheel-Drive)である。このなかで、もっとも効率がよくて、EVへの道につながっているシステムがi-MMDである、と判断された。

発電用のモーターと走行用のモーターをもつi-MMDは、“マルチ・モード・ドライブ”という名称が示すごとく、市街地での発進時はEV走行をする。

坂道や急加速が欲しい状況でアクセルを踏み込むと、エンジンが始動して発電用モーターをまわして、走行用モーターに電気を送ってパワーをあげる。ハイブリッド走行といっても、エンジンは発電用のモーターをまわすことに専念する。

高速巡航時は、ふだんはクラッチで切り離しているタイヤをエンジンと直結にして駆動する。高速時には発電効率の悪い、つまり発電しすぎちゃう発電用モーターはお休みし、より効率の高いエンジンの出番となるのだ。さらに高速巡航時にアクセルを踏み込むと、走行用モーターがバッテリー内にエネルギーのある限り、加勢してくれる。

そういえば、日産のe-POWERもエンジンで発電してモーターで走らせるシステムだけれど、高速巡航時にエンジン直結にするクラッチを持っていない。それでも商品として成り立つのは、コスト・パフォーマンスと、日本の交通環境が、短距離主体で渋滞が多いからである、と日産の広報から聞いたことがある。

昼食をはさんで、いよいよ試乗である。1回1時間の枠が5つ設けられており、そのうちの1コマは「第1回i-MMDインサイトチャレンジ」と題された参加者による燃費コンテスト、1コマは技術コミュニケーションという名のレクチャーが用意されており、残りの3コマで、インサイト、CR-V、オデッセイ、アコード、ステップワゴン、クラリティPHEVのなかから、その都度、好きなクルマを選んで走る。2013年のアコード・ハイブリッドから始まったi-MMDはいつの間にか、6車種に増殖していたのである。

GQ JAPANチームはたまたま1コマ目が「インサイトチャレンジ」だった。浜名湖沿いの一般道を走って、高速道路に1区間だけ乗り、ふたたび一般道で戻ってくる、というおよそ28kmのコースが設定されている。

オドメーターで28km以上走行し、45分以内に戻ってこないと10秒あたり0.2km/ℓのペナルティが課される。高速道路は80km/h以上、エアコンは25℃でAUTOを設定しなければならない。燃費データはECUモニターの値とする。

という厳格なルールが設けられていた。2018年12月に販売開始された3代目インサイトのカタログ燃費は、17インチ・タイヤを装着するグレード「EX」の場合、JC08モードで31.4km/ℓ。2018年10月から切り替えられた新燃費表示のWLTCモードで25.6km/ℓである。

果たして……ということなのだけれど、筆者は新型インサイトに乗るのが初めて、ということを口実にあえて燃費走行はしないことにした。達人の集まりのなか、自分が勝てるとはつゆほどにも思えない。それだったら自由に走る方がいいではないか。

インサイトは、シビックのプラットフォームに1.5ℓエンジンとi-MMDを搭載したハイブリッド専用車である。4ドア・クーペ風のエッジを効かせたエクステリア・デザインは、「大人の審美眼に応えるセダン像」なのだそうだけれど、う~む、初代インサイトはよかったなぁ~、と筆者はつぶやくにとどめる。

215/50R17サイズのタイヤのせいなのか、乗り心地はいい路面ではいいけれど、凸凹路面では素直に凸凹であることをドライバーに伝える。アクセルを踏み込むと、EVモードからハイブリッド・モードに転じ、1.5リッターエンジンが俄然その存在をガサツな音で主張し始める。

EVモードの静かさと比べると、その落差が大きい。おまけに、ステアリングの応答が実用車然としていて、カタチからスポーティさを期待すると裏切られる。前輪駆動の小型車、といってもインサイトのホイールベースは2700mmもある。現代のCセグメントの標準といっていい数字ではある。おかげで室内は広い。

i-MMD専用モデル、というのに、i-MMDの静かでシームレスなモーター特有の加速がストレートに味わえない。乗り心地と静粛性がCR-Vのi-MMDとはレベルが違う。主な要因は1.5リッターエンジンにあるのかもしれない。価格のせいで、こんなになっちゃったわけではないことは確かだ。試乗車EXの車両価格は349万9200円もするからだ。

最近の国産車は価格が急騰しているとはいえ、350万円はお安いとはいいがたい。私的には不思議なほど、ピンとこないクルマだったけれど、現行シビックが好きな方にはアピールするのではあるまいか。プラットフォームがおなじだけに、乗り心地はよく似ている。

次にクラリティPHEVに乗った。2016年に販売開始されたフューエルセル専用車(766万円)から燃料電池を取り外し、i-MMDベースのプラグ・イン・ハイブリッド・システムを搭載したモデル。バッテリーの高容量化とコンバーターの高出力化が図られている。価格は588万600円と、クラリティより200万円ほどお求めやすい。

ホイールベースは2750mmと、インサイト比50mm長いだけだけれど、全長は4915mmとインサイトの4675mmに対して、240mm長くて、車重は1850kgある。インサイトは1390kgしかない。

チューンは若干異なれど、同じ1.5リッターエンジンで、i-MMDの走行用モーターはクラリティPHEVが184psと315Nmであるのに対して、インサイトのそれは131psと267Nmにおさえられている。リチウムイオン電池はというと、クラリティPHEVは168個が床下に敷き詰められ得ているのに対して、インサイトは60個が後席の下におさめられている。

電池はそのままコストである。仮にリチウム電池1個5000円とすると、168個だと84万円になる。1個1000円だったら16万8000円。電池のコストを下げたい理由がよくわかる。この168個が直列でつないである。パワーがあるはずだ。

315Nmのトルクを0~2000rpmで生み出す強力なモーターが、重いボディをシームレスに加速させる。モーレツに速くはない。でも、静かで厳かで悠然と走る。電池の容量が大きい分、EVでの走行距離は長くて、カタログ上114.6 kmとされる。高速道路でも、日本の交通法規内であれば、EV走行を維持し、聞こえてくるのは風切り音ばかり。さらに踏み込んで、エンジン直結モードに切り替わっても、インサイトとは違って遮音がよいのだろう、厳かな空間は保たれ、未来感を味わうことができる。

これぞ和製シトロエンCX、21世紀のアヴァンギャルドである。ステアリングが妙に重いのが最初は気になったけれど、やがて慣れる。シトロエンのセルフセンタリング・ステアリングもヘンテコだったもんなぁ。

続いてオデッセイ・ハイブリッドに試乗した。2.0リッターエンジンとi-MMDを搭載した、ホンダを代表するミニバンである。価格は393万3600円と、これまた安くはない。145psと175Nmを発揮するエンジンはクラリティPHEVよりも強力で、184psと315Nmを発揮するクラリティPHEVと同じ走行用モーターをまわすための電気エネルギーをせっせとつくり出す。

スタート・ボタンを押すと、バッテリーの残量が少なかったのだろう、いきなりエンジンが始動した。内燃機関に慣れ親しんだ筆者としてはそれもまた好ましく、走り出すと、クラリティほど静かではないけれど、乗り心地はこちらのほうがどっしりしていて上質に感じる。

2.0リッターエンジンと電池72個、それに自然吸気3.0リッター並みのトルクを発揮するモーターの組み合わせのバランスが、たびたび例に持ち出して申し訳ないけれど、インサイトよりもよいのだろう。ホイールベース2900mm、全長4840mm、車重1820kgの実用ミニバンが過不足なく走る。

次のコマの「技術コミュニケーション」でi-MMDの開発秘話を聞いたあと、最後のコマでCR-Vのハイブリッドに乗ることにした。

EX マスターピース4WDという、本革シートが奢られた1番高価なグレードで、フロアマットとドライブレコーダーのオプション込みで、440万4240円もする。2017年に登場したオデッセイ・ハイブリッドはFFのみだったけれど、2018年秋に販売開始されたCR-Vハイブリッドはi-MMD初の4WDもある。それがこれだ。高いモノにはわけがある。

CR-Vはホイールベース2660mm、全長4605mmのミドルサイズのSUVである。にもかかわらず、ひとつ上のクラスのオデッセイとおなじ2.0リッターエンジン+i-MMDが搭載されている。モーターも電池の数もオデッセイと同じで、車重は1700kgと120kg軽い。

結局、4台のi-MMD搭載車に乗って、1番よかったのがこのCR-Vのハイブリッドだった。乗り心地はやや硬めながら、オデッセイと遜色ないレベルで、オデッセイより静かで、オデッセイより軽快にモーター独特のシームレスな加速が味わえる。

エンジンとモーターの連携も、ドライバーがナチュラルに感じられるようなチューニングになっていて、アクセルを全開にするとエンジン音が高まりながら加速する。ガソリン・エンジン車の古典的なフィールとEVの新感覚をうまくミックスして、頑迷な保守派にもアレルギーを起こさせない。

i-MMDだからよいわけではない。同じi-MMDでも、当然といえば当然のことながら、クルマごとに大きく異なる。というのが今回のi-MMD搭載車イッキ乗りで得た筆者の感想である。CR-Vはホンダのグローバル戦略車としてクルマのデキがよい。だから、そのハイブリッド・モデルもデキがよいと感じるのである。ホンダ・レーシング・スピリットはいまやミニバンに宿っている。

この日の夜の懇親会で、第1回i-MMDインサイトチャレンジの結果が発表された。GQ JAPANチームは平均燃費20.28km/ℓで、参加19チーム中、圧倒的最下位だった。

燃費運転を心がけていなかったのだから当然とはいえ大半の方が25km/ℓ以上の値を出しておられたのだから赤面である。EV走行はわずか46.06%、ハイブリッド走行は41.34%、エンジン直結走行は12.6%だった。

成績結果を見ると、エンジン直結走行12.45%というライバルが存在していた。こちらはEV走行が58.59%で、燃費は26.83km/ℓと9位の好成績だった。20.28km/ℓとは大きな開きがある。走行時間は彼らも私たちも39分とおなじだ。i-MMDマルチ・モード・ドライブにおいてはインテリジェントにマルチ・モードをドライブすることが肝心なのである。

ホンダ・スポーツ・ハイブリッドi-MMDは、アクセルを全開にすれば、気持ちいいというものではない。じんわり扱わないとシームレスな、どこまでも加速していくモーター独特の快感は味わえない……と、思ったのだけれど、世の中というのは何が幸いするのかわからない。

全開走行したおかげで、GQ JAPANチームは「エンジン直結賞」をいただいてしまった。無欲の勝利というほかない。

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