鋭く方向転換し、グリップ力にも不足はない
執筆:Mike Duff(マイク・ダフ)
【画像】復刻版 DB5とDB4 GTザガート ワンオフのヴィクター V12スピードスターも 全93枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アストン マーティンDB5は、操縦性や安定性も非常に高い。タイヤはエイボン社製のクロスプライで、幅は185。ホイールサイズは不足のない15インチだ。
オーナーの要望でモディファイを受けたDB5も、オリジナル・モデルと同じくらい鋭く方向転換し、グリップ力にも不足はない。ロックトゥロックは4回転半で変わらない。ブレーキは4本ともに先進的なディスクタイプ。不足ない制動力を引き出せる。
このDB5には、タイヤ・シュレッダーと呼ばれる機能も付いていた。ホイールの中央、ハブから飛び出す回転するブレードだ。ただし、スポーティな装備とはいえないだろう。
走行性能を確かめている途中、思いがけない驚きがあった。シフトレバーのグリップ上部に配された赤いボタンは、追加されたオーバードライブのセレクターではなかったのだ。
ボタンを押すと、シートエジェクターと表現すべき機能がオンになる。ルーフが開き、人間ごと助手席を空へ打ち出すことが可能だという。どんな目的で装備されているのか、筆者には想像が難しい。
筆者はうっかり押してしまった。同乗し試乗評価を手伝ってくれていた同僚は、幸いにも無傷で済んだようだ※。
DB5に追加された特殊装備の中には、子どもっぽく映るものもある。だが少なくとも、特別なミッションの完遂を目的としていることは間違いないだろう。金塊と毒ガスにまつわる危機から救うために。
※シートエジェクターは実際には機能しません。
攻撃的で、しばしば噛み付く男のクルマ
オリジナルのアストン マーティンDB5は、非常に素晴らしいクルマだ。今後の購入希望者も、今回試乗したDB5と同等の機能を望む可能性は十分にある。筆者の唯一の不満は、ファーン・グリーンと呼ばれる単調なボディカラーくらいだ。
ある人物の依頼によってモディファイされたアストン マーティンDB5。1964年の試乗内容を、修正するほどの違いは感じられなかった。
むしろ秘密兵器の数々は、その結論をより強固なものにしていたといえる。このストン マーティンDB5はワイルドで攻撃的で、しばしば噛み付く、男のクルマといえるだろう。
コンティニュエーションとして小道具を再現
さて、アストン マーティンのコンティニュエーション・モデルは、正確なコピーとして製作される復刻版だ。だが今回試乗した最新のDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは、従来とは違う内容だといえる。ボンドカーのレプリカだという点で。
映画「007ゴールドフィンガー」に登場したボンドカーの場合、秘密兵器は撮影時に機能すれば良い小道具だった。しかし一般に販売されるコンティニュエーションの場合、繰り返し何度も機能することが求められる。
同時に、安全性が担保される必要もあった。アストン マーティンの顧問弁護士たちは、その点に強くこだわったという。
完成したDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーションでは、特殊装備のほぼすべてが再現されている。監修したのは、特殊効果デザイナーのクリス・コーボールド氏だ。
彼は最新作の「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」を含む、15本以上の007シリーズに関わった人物。オスカーの受賞経験も持つ。
機関銃や回転式のナンバープレート、車載レーダー、防弾リアスクリーン、オイルやスモークなどが実際に稼働する。1964年の「007ゴールドフィンガー」では活躍しなかった、伸びるオーバーライダーも機能する。
真新しいDB5を所有できるという魅力
映画に登場したDB5の機関銃は、空砲を用いていた。コンティニュエーションでは、高輝度LEDとスピーカーで発射を再現している。発射の反動で動くバレルは電動で対応。空砲は実際にはうるさすぎ、多くの地域で違法のため、搭載は見送られたという。
路面に撒くオイルは、水を代用。タイヤ・シュレッダーは別のケースに入っている。取り付けて走行はできない。助手席の上にはサンルーフが付いているが、助手席を打ち出すこともできない。
シフトレバー上部に仕込まれた赤いボタンを押しても、シートが振動するだけ。すべて、コンプライアンスに関わる理由で。
アストン マーティンは、オーナーがガジェットの動きを見て楽しめるように、リモートコントローラーを用意。特に機関銃の動きは、実際に見ると感心してしまう。ウインカー・レンズが倒れてバレルが姿を表すと、少し興奮してしまった。
グリコールを用いたリアスモークは、風がなければクルマを隠すだけの雲を作ってくれる。とはいえ、これらの装備が目新しいと感じるのは初めのうち。騒がしいおもちゃのように、案外すぐに飽きてしまいそうではある。
しかし、アストン マーティンの工場でできたてホヤホヤの、真新しいDB5を所有できるという魅力は大きい。ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは公道を走れないと強調されているが、デモ車両は英国のナンバーを取得している。
少なくとも英国に限っては、VIA、型式登録されていないクルマの認証テストを、DB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーションはクリアできるようだ。
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