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A.マルケス&エネアの勝利要因はアジアの気温? ギリギリ攻めるタイヤ内圧/MotoGPの御意見番に聞くマレーシアGP

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A.マルケス&エネアの勝利要因はアジアの気温? ギリギリ攻めるタイヤ内圧/MotoGPの御意見番に聞くマレーシアGP

 11月10~12日、2023年MotoGP第18戦マレーシアGPが行われました。初日はヤマハが好調でしたが、2日目からはドゥカティが圧勝。今回はスプリントでアレックス・マルケス、決勝でエネア・バスティアニーニが勝利しました。また、レース後にはタイヤ内圧違反が5人出て、累計14人となっています。

 そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第23回目です。

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※ ※ ※ ※ ※ ※ 

--今回はスプリントも決勝レースも上位4台がドゥカティという、まさに独壇場という感じでしたね。

 確かに結果的にはそういう事だね。それでも初日のFP1ではヤマハのふたりが揃ってベスト5に入るし、予選を振り分けるプラクティスではKTMやアプリリアも上位に食い込んできたから、ここまでは予想通りの展開だったんだけどね。

--それが公式予選になったらドゥカティが6位まで独占するという圧倒的な速さを発揮しましたが、いつもと少し顔ぶれが違いましたよね。

 それはアレックス・マルケス選手とエネア・バスティアニーニ選手の事だね。

 失礼な物言いかもしれないけど、最強のドゥカティ軍団の中では、パッとしないふたりというイメージが定着しているからね。その証拠に直前のランキングはマルケス選手が11位でバスティアニーニ選手が19位という体たらくだし、このふたりがスプリントとレースで優勝を分け合うなんて誰も想像できないサプライズだよ。

 バスティアニーに選手はここ数戦で少し復調の兆しが見えたけれど、マルケス選手に至ってはリタイア続きで、アウェイのレースでここまで獲得したポイントが僅か9ポイントだからね。

--決勝レースで独走優勝したバスティアニーニ選手もQ1を勝ち上がってQ2で3番手、スプリントで4位とチームメイトのフランセスコ・バニャイア選手のお株を奪うような躍進でしたが、何が有ったんでしょうかね。

 もともと力があるからドゥカティのファクトリーライダーになった訳で、シーズン前半の怪我による欠場の影響でここまで歯車が噛み合わなかったという事かな。それに昨年乗っていたマシンとかなりキャラクターが違う事に戸惑っていたようだから、バニャイア選手のようにスムーズに適応できなかったというのもあるかもしれないね。

 後は気温の高いアジアラウンド向けにミシュランタイヤが用意した硬めのコンストラクションが彼のスタイルにはマッチしたのかもしれない、ヤマハのファビオ・クアルタラロ選手もそのようなコメントをしていたような……

--さきほど言われたように最初のセッションでは、ヤマハのふたりが揃ってトップ5入りという幸先の良いスタートだったので驚きましたが……

 プラクティスではクアルタラロ選手がQ2直接進出を決めて、モルビテリ選手も11位だったから、Q1から勝ち上がる可能性は十分あったんだけどねえ。

--そこであのマルク・マルケス選手の後追い事件が起きたと(笑)

 一言でいうと、最高峰のレースに相応しくない滑稽で残念なシーンだったと言わざるを得ない。

 あれを“Cat & Mouse”とかタイトルを付けて放映するドルナのセンスにも呆れるよ。

 まあ、猫にいたぶられる鼠役のモルビデリ選手は不運だったけれど、あそこでマルケス選手を後ろに付かせておいて、後でぶっちぎる位の気概を見せてくれるとスカッとしただろうけどね。

--その後、新しい鼠を見つけて急にペースを上げてパスしたところで転倒していましたね。

 あれを見ると、モルビテリ選手の判断はとても賢明だった(笑) イン側に入られて転倒の道連れにされたら目も当てられないからね。

 それにしても、コース上でのああいう振る舞いをするのは、元チャンピオンのプライドがどうとかの次元の問題ではなくて、単に危険な行為として禁止すべきだよね。F1では故意に遅く走って他車の妨害をするのは、ペナルティの対象になっているからね。

--でも、不要なスロー走行と言う点ではモルビデリ選手もペナルティの対象になりますよ。

 あ、そうか! それは困る。誰か猫を退治する妙案を考え出してくれないかな(笑)

--あそこまでしても結果が付いてこない兄に対して、弟マルケス選手は絶好調でしたね。

 シーズン初めはわりと調子良くて、その後転倒が続き、シーズン中盤でスプリント優勝とかして調子が上がったと思ったら、その後また転倒が続いて、とにかく彼のレースは見ていて危なっかしい。血気盛んで周りが良く見えていない感じがあったけど、今回のレースはそれが無かったから一皮むけたのかな、良くわからんけど(笑)

 まあ、今回の活躍は型落ちマシンが十分な戦闘力を持っている事を改めて証明したので、兄マルケス選手にとっては最高のプレゼントという事になるのかな。

--ところで、スプリントでは5、6位とドゥカティ軍団に割って入って健闘したKTMでしたが、レースでは今ひとつでしたね。

 スプリントと決勝レースで異なる結果をもたらす大きな要因としては、気温と路面温度の高さじゃないのかな。今回のレースではタイヤの過熱による内圧の上昇やグリップの低下が顕著だったようだから、その辺りをうまくマネージ出来ていたマシンとライダーが結果を出してきたという事だね。

 KTMのブラッド・ビンダー選手はレース中盤で転倒しているけれど、エンジンも余り調子良くないので無理していたのかもしれない。レース中のトップスピードの平均がプラクティス時に比べて10km/h近く低いんだよ。もちろんトップスピードは最終コーナーの脱出速度に依存するから、タイヤに問題を抱えていた可能性もあるけどね。

--タイヤといえば、今回優勝したバスティアニーニ選手と3位のバニャイア選手を含む5人がタイヤ内圧規定違反という事でしたが。

 ふたりとも初回なので今回はペナルティ無しだけれど、2回目は3秒加算され、3回目以降は6秒、12秒と増えていくらしいから、バニャイア選手は残りの2レースは要注意だね。

--チャンピオン争いをしているマルティン選手は、すでに一回警告を受けているので今回で条件が同じになったという事ですね。

 バニャイア選手がレース前に「このルールは嫌いだけど、僕はマルティンに対してペナルティ一回分のアドバンテージがある」と言うような意味の事を言っていたようだから、今回のペナルティは偶発的なものでは無くて、敢えて違反を覚悟してカードを切った可能性も否定できないね。

--そうなんですか!? てっきりレース中に圧力が上がるのを見越して設定したのが、たまたま見込みが外れて思ったほど上がらなかったという事だと思っていましたが……

 いやいや、過去にはそういうケースもあったかもしれないけど、今回は違うんじゃないかな。バニャイア選手も、タイヤ内圧が低い時にはブレーキングとコーナーのエントリーでアドバンテージが大きいと認めているからね。

 路面温度が高くて、タイヤ内圧が上がりやすいマレーシアは勝負所と思ったのは間違いないだろうね。なぜなら残りの2戦は、路面温度についてはそれほど高くないからね。ひょっとしたら、ドゥカティファクトリーとしてはチームの方針としてカードを切った可能性もあるね。ふたり揃って警告受けてるし(笑)

--そうだったとしても、スプリントでマルティン選手に2ポイント縮められ、決勝レースで3ポイント挽回して差し引き1ポイントだけですよ、今回の成果は。

 ドゥカティとしてはバスティアニーニ選手が、マルティン選手とバニャイア選手の間に入ってくれると理想的だったけれど、そこは少し想定外だったかも。

 たしかにリスクを負ったわりには、バニャイア選手としては得るものは少なかった印象は否めないけれど、この1ポイントが最後に結果を左右する事になるかもしれないよ。

 過去にはポイントも優勝回数も全く同じだったので、すべてのレースタイムを合算してチャンピオンを決めたという事例もある位だから、1ポイントってのは重いんだよ。

 いずれにせよ、ペナルティでチャンピオンシップの結果が左右されるような、後味の悪い結果になることだけは勘弁してほしいものだね。

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