人気を後押ししたホモロゲーション・モデル
経営的に厳しかった1980年代のメルセデス・ベンツを救ったのが、小さな190クラス。BMW 3シリーズに対する、シュツットガルトからの回答といえた。
【画像】小さなボディに長所が凝縮 メルセデス・ベンツ190クラス 最新のCクラスと写真で比較 全85枚
W123と呼ばれた当時のミディアムクラスに並ぶ品質や車内空間を、コンパクトなボディに実現させていた。加えて、シャープなスタイリングは空気抵抗に優れていた。
リア・サスペンションは新開発の5リンク式で、フロントはストラット式。加減速時に姿勢を保つアンチスクワット技術を採用し、優れた乗り心地と操縦性を両立していた。ライバルを凌駕したといっていい。
洗練性も高く、車内ではエンジン音が殆ど聞こえない。キャブレターの190に加えてインジェクションの190 Eも投入され、充分な動力性能と、高いギア比を活かした燃費の良さも強み。視認性と空力性に配慮された、左右非対称のドアミラーも新鮮だった。
ボディサイズや優れた質感、強固なボディ構造を考えれば、車重は驚くほど軽い。反面、亜鉛メッキとワックス封入のボックスセクションで防錆性に配慮されていたものの、薄い鋼板部分は思いのほか錆びやすい。
190クラスの人気を後押ししたのが、ツーリングカー・レースに向けたホモロゲーション・モデルの追加。保守的なブランドイメージを打破したのが、2.3-16とサブネームが振られた高性能仕様だった。
エンジンには名門コスワースの手が入っていたが、あえてモデル名には記されていない。それも、メルセデス・ベンツのコダワリの1つといえた。
6気筒エンジンを搭載した2.6も
この190 E 2.3-16は、製造開始と同時にほぼ完売という高い支持を英国では集めた。自然吸気の4気筒エンジンには、16バルブのツインカムヘッドと電子制御の点火システムを搭載。クロスレシオが組まれたゲトラグ社製5速MTとペアを組んだ。
リアにはリミテッドスリップ・デフを採用し、フロントブレーキにはベンチレーテッド・ディスクが奢られている。サスペンションは、リアにハイドロニューマチック式を採用するなど、全面的に手が加えられている。
速さは鮮烈ということはなかったが、操縦性は秀抜。乗り心地も犠牲にはなっていない。
一方、190 E 2.3-16で不満を買ったのが高い価格。より高速なBMW M535iより、当時で2500ポンドほど高かったのだ。
さらにライバルのBMW 3シリーズには、上級グレードに6気筒が載っていた。それへ対抗するように登場したのが、190 E 2.6。燃費性能を大きく損なうことなく、パワフルさとスムーズさを獲得。6気筒の上質なコンパクトサルーンとして、しのぎを削っている。
多売となった190クラスだが、その多くにはオートマティックが組まれている。マニュアルが選ばれたのは、先出の高性能仕様が中心だった。現在の英国の中古車市場を見渡しても、殆どがATとなっている。
高価格で取引されるエボIとII
1982年に販売が始まった190クラスは、登場から40年が経過し、英国では順次クラシックカーとして免税対象になっていく。そのため、中古車価格は上昇すると考えて良い。日本でも取り入れて欲しい制度だ。
ホモロゲーション・モデルは生産台数が少なく、価格はそれ以外より高い。2.3-16は1983年から1988年にかけて1万7037台が製造されており、2.5-16は1988年から1993年にかけて4784台が作られている。
別クラスといえる値段で取り引きされているのが、アグレッシブな見た目の190 エボリューションIとエボリューションII。この2種には、右ハンドル車は存在しない。
グレードを問わず、優れた乗り心地と操縦性を備えているのが、190クラスの強み。ライバルをリードする仕上がりだった。コスワース・チューニングでも、その特長は変わらない。
高速道路は快適に、カーブの続くワインディングは軽快に、運転を楽しむことができる。不自然に落ち着きがない場合は、何か不具合を抱えている証拠といえるだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
写真のメルセデス・ベンツ190 Eを大切に乗っている、ジェームズ・マーシャル氏。「子供の頃から、コスワース・エンジンの190が大好きでした。ところが運転免許を取得した頃は、保険が高く乗ることができませんでした」
「このクルマは、2台目の190。以前のボディカラーはシャンパン・シルバーでしたが、今の色の方が気に入っています。これまでファミリーカーとして乗られており、整備記録はすべて書類に残っています」
「走行距離は12万5000kmを超えたばかり。メルセデス・ベンツの走行フィーリングは大好きですが、距離を伸ばしたくないので、乗るのは特別な時に限っています。公道に出るのは、1年間に数週間くらい」
「ほかにも、E30型のBMW M3 コンバーチブルと、レストア途中のプジョー205 GTiがガレージに納まっています。フォード・エスコート RSにも興味はありますが、2.5-16はずっと維持したいと考えています。英国製の最高のエンジンですからね」
英国で掘り出し物を発見
メルセデス・ベンツ190 E 2.3-16
登録:1985年 走行:15万5100km 価格:4万3800ユーロ(約613万円)
人気のコスワース・エンジンを搭載した190クラス。初期型で、ブラックレザーの内装がブラックのボディとマッチし、シャープな雰囲気を醸し出している。アルミホイールのリムもきれいなようだ。
エンジンルーム内も整っており、塗装の状態は良い。フロントノーズには、飛び石キズが幾つかあるという。ゲトラグ社製のMTが組まれている。3オーナーで、比較的乾燥したイタリアで乗られてきた点も魅力。
内容としては手頃な価格といえ、インテリアの状態なども、長すぎない走行距離を裏付けている。オリジナルの、ベッカー・グランプリ社製のステレオユニットが付いている。
メルセデス・ベンツ190
登録:1989年 走行:25万2600km 価格:350ポンド(約6万円)
勇気があるなら、レストアベースとしていかがだろう。路上への復帰は可能と思われるが、広範囲に手を加える必要はあるだろう。MTが搭載された、2.0Lのキャブレター4気筒エンジンが載っている。
10年ほど駐車場に停めっぱなしで、フロントフェンダーにはサビが浮いている。だが、内装の状態は驚くほど良好なようだ。ブルーのダッシュボードに割れはなく、シートのクロスに破れはない。サンルーフから水漏れがないか、充分確かめた方が良いだろう。
中古車購入時の注意点などは後編にて。
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