MotoGP日本GP終了後、HRC(ホンダ・レーシング)は2023年限りでマルク・マルケスとの契約を早期終了すると発表した。これによりホンダは、チームにとっても史上最も成功を収めたライダーの後任を探す必要にかられている。
しかし、マルケスの離脱はホンダが直面する最大の問題、というわけではないと見る向きもある。
■マルケスが居なくなってもホンダはさほど変わらない? ジョアン・ミル「セカンドライダー扱いも無かったからね」
MotoGPクラスに昇格して以来6度のタイトルを獲得してきたチームを離れる決断をマルケスが下すに当たって、彼がこれまでに主張してきたことを考えると、HRCが解決すべき問題は上層部の体質といえるものにあると考えられるのだ。
マルケスは12日になり、グレシーニへの移籍が正式に発表された。そして彼はグレシーニへ移る際、これまで苦楽を共にしてきたクルーチーフのサンティ・エルナンデスを始めとしたスタッフ達を連れていかずに移籍することになる。彼にとって重要な“家族”との別れがあっても、ホンダを離脱することを選んだのだ。
近年は同じ日本勢であるヤマハも非常に苦しい状況に陥っている。そのため日本企業の働き方などに原因を求める声もあるが、そうした状況が一変するような”目覚め”を彼らにもたらすには至っていない。
マルケスのホンダ離脱も、彼らの”体質”を示している一例だと言えるだろう。日本メーカーが好調なヨーロッパ勢の取り組み方やその論理を受け入れるよりも、史上最高のライダーのひとりを失うことをよしとしたと言えるのだ。
マルケスは離脱決定前にホンダに対して技術部門再編の機会を与えていて、エアロダイナミクスやエレクトロニクスなどの専門性の高いエンジニアを雇い入れることを求めていた。ただ実際の人事はHRC開発室室長を務めてきた国分信一がホンダ本社へ異動となり、後任にRC213Vの開発責任者などを務めてきた佐藤辰が起用されるというものだった。
こうしたHRCの人事をチームの大部分がどう判断したかといえば、“一難去ってまた一難”であり、いうなればこれは『マルケスのパスポートにグレシーニ行きのスタンプが押された』といったモノだった。
つまるところ、結局はホンダ側の考え方が変わらないことが問題だと言える。それはアレックス・リンスがわずか1年で離脱することになったLCRホンダのスタッフも感じていることだ。
「ホンダは、自分たちの態度を変えて助けにするか、何もすることがないのかのどちらかだということを、理解していないんだ」
LCRのあるスタッフはそう語っており、来季加入予定のヨハン・ザルコが、上役であるホンダの介入によって再び流出してしまうことを恐れているようだった。実際リンスは、ホンダのファクトリーチームを最優先し、蔑ろにされているような状況が移籍を決断する一因にあったと示唆している。
「この出来事は、アレックス・リンスの身に起きたことの、更に深刻なモノの一例に過ぎないよ」と、HRCの匿名スタッフも語っている。
「もしアレックスが蔑ろにされていると感じていなかったら、彼は恐らくマルクの後任としてベストな存在となっていただろう」
なおホンダを離れるマルケスは、来季からすぐにでもタイトル争いに加わってくるのではないかという見方もある。ただ彼の側近のひとりによると、マルケス側にそのつもりはないようだ。
「今のところ、彼はタイトルを狙うことは考えていない。彼の目指しているものは、バイクのライディングを再び楽しめるようになることなんだ」
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