EICMA2018にて「世界最先端の電気バイク」という触れ込みでお披露目されたARCベクターだが、2020年末の発売に向けて順調に開発が進んでいる。どのような最先端の機構が採用されているのか、解説する。REPORT●大家伝(OYA Den)
洗練されたカフェレーサールックの電動ハイスペックマシン
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【ARCベクターに関する3つのポイント】
1)2020年に生産を開始、お値段は£9万(約1,239万3,280円)
2)カーボンモノコックにより220kgの重量とクラス最高のシャーシ剛性を実現
3)技術革新項目としてハブセンターステアリング、カスタムカーボンスイングアーム、ヒューマンマシンインターフェース、ヘッドアップディスプレイ、ハプティックアラート、高エネルギー密度のバッテリーセルなどが含まれる
2019年6月4日に英国・コベントリーで発表された内容は、「世界で最も先進的な電動バイクであるARCベクターは、予定通りに完成し、そして息をのむほどに革新的で洗練されています」というものだった。そもそもベクターに関しては、昨年11月にイタリア・ミラノで開催されたEICMA2018で発表されている。そして高い安いの判断はさておき、9万ポンドの値が付けられた電動のネオカフェレーサーは2020年末に量産を開始。最初の18ヶ月で399台が受注生産される予定である。
とくに革新的な部分として、ヒューマンインターフェイステクノロジー、最先端のカーボンモノコックとスイングアーム、画期的なハブセンターステアリング、パワー密度の高いバッテリーセル、特注のブレーキとサスペンション、そしてレースにヒントを得たホイールなどを採用。
なかでも車体の要となるのが、その独創的な電池モジュールカーボンモノコックだ。シンプルさがデザインの鍵であり、バッテリーパックの重さに反して軽量に仕立てられている点もポイント。しかもモーターとバッテリーをモノコックに組み入れることで、非常に剛性感の高いシャーシとなっている。また、ARCはMotoGPメーカーRibaと共同でカーボンスイングアームの開発に成功。これはコーナリング安定性、グリップ力と敏捷性の向上のために横方向の屈曲を可能としている点がポイントだ。さらに航空機グレードのアルミニウムなど、高品質な素材を用いて車体重量を220kgまで抑えることにも成功している。
創設者兼最高経営責任者であるマーク・トルーマンは、「従来のレイアウトとは異なり、ステアリングピボットポイントをホイールハブの内側としたハブセンターステアリングを開発。従来レイアウトのシステムも含めて、ハブセンターステアリングが持つ利点をすべて備えていますが、テレスコピックフォークであるように感じられるシステムとして注目です。高い剛性により、高速域でも安定してクイックな回頭性能を発揮でき、ハブセンターステアリングとテレスコピックフォークの両方の長所を生かした、ネガティブなものがないシステムです」と話す。
また、軽量化と低メンテナンス性に寄与するベルトドライブも採用。ブレンボ、オーリンズ、BST(軽く強靭なホイール)、コンチネンタル(ABS)、ピレリ、Delta Motorsport(バッテリーパッケージ)といったテクニカルパートナーの協力に加え、ARC独自の取り組みとして軽量で非常に強力&スペース効率のいいオーダーメイドモーターも開発した。最先端のサムスン21-700バッテリーは地球上で最もエネルギー密度が高く信頼性の高いものであり、ARCベクターがそれを使用した最初のモーターサイクルになるという。
これについてARCの電気工学責任者であるロビン・ボイドは次のように話している。
「サムスンではプロトとして開発しているため、現時点で実際に購入することはできず、このプロセスの一環としてARCビークルと提携しています」
ARCベクターに搭載される399Vの電気モーターは133bhp(134.8PS)を発揮。あらゆる電動二輪車の中で、最高のパワーウエイトレシオ(車量は220kg) 650bhp/tを達成。しかも航続は約270mph(約430km)、時速0~60マイル(0~96km/h)まで3秒で到達し、最高速度は時速125マイル(約200km/h)をマーク。 クラッチもギアもなく、大トルク、ABSブレーキ、可変ダイナミックモード、独創的なヘッドアップディスプレイ、ハプティックアラートシステムにより、ライディングはユニークで安全、そして陶酔感を伴うものだという。このベクターはバイク界に革命を起こしてくれる!そんな予感がする。
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