軽量・空力・操る喜び
ホンダは、2030年までに市場投入する7車種の新型EVラインナップ「0シリーズ」の1つとして、テスラ・モデル3に相当するセダンを開発中だ。EV開発方法を抜本的に改め、軽量化と空力性能を優先し、「操る喜び」を際立たせるという。
【画像】薄くて軽量? ホンダが目指すスポーティな次世代EV【ホンダ「サルーン(SALOON)」コンセプトを写真で見る】 全8枚
ホンダは部品点数の削減や軽量アルミニウム製シャシー構造の採用など、「薄さ」を追求した開発を行っている。シャシーは最終的に、テスタが採用しているようなメガキャスト(高圧高精度鋳造)へと移行していく。
また、次世代電動パワートレイン(eアクスル)の軽量化において、シビックなど従来のハイブリッド車で得たノウハウを活用。モーター、インバーター、トランスミッションを1つのユニットに統合し、ホンダの既存EVと比べて約100kgの軽量化を実現するという。
パワーユニットやバッテリーのような重い部品は、ボディ中央の低い位置に搭載される。これによりフロアの厚みが減り、軽量化とスポーティなドライビングポジションにつながる。
従来のクルマでは多数のコンピューターを併用しているが、「頭脳」となるセントラルコンピューターによって車両の各機能を制御することで、コスト削減とデジタル機能の強化を図る。また、「レベル3」自動運転技術の導入も可能にする。
0シリーズの各車の技術仕様は、米国EPAテストサイクルで航続距離300マイル(480km)以上という目標値を軸としている。EPAは欧州のWLTPサイクルよりも実環境を反映したテストで知られる。
目標達成に向け、軽量化と並んで鍵となるのが空力性能だ。
今年初めに発表された0シリーズのコンセプトモデル「サルーン(SALOON)」について、ホンダの常務取締役でデザインセンター担当の南俊叙氏は、「特にこの形を目指しているわけではなく、エモーショナルでありながらも、機能に沿った形を作り出そうとしている」と語る。
0シリーズでもう1つの軸となるのは、2030年までにEVで営業利益率5%という目標である。多くのメーカーがEVで赤字を出している現状を考えると、これは非常に高いゴール設定だ。
ホンダの三部敏宏CEOは以前、「バッテリーのサイズを小さくすることではなく、バッテリー技術について考えたい」として、使用素材や構造の違いが大きく影響すると示唆した。
技術開発に加え、コスト削減のためにバッテリーの内製化も視野に入れている。韓国LGとの合弁バッテリー工場が2025年から米国で稼働し、年間40GWhの生産能力を持つ予定だという。バッテリーのリサイクルと原材料の調達についても見直し、2030年までにバッテリーのコストを20%削減できる可能性がある。
バッテリーに限らず、2030年までに全体の生産コストを35%削減する。
0シリーズのラインナップとして、2026年のセダンを皮切りに「中型SUV」と「エントリーSUV」が加わり、2027年には「3列シートの大型SUV」が登場する。
2028年にはテスラ・モデルYと競合するであろう「小型SUV」、2029年に「スモールSUV」、そして2030年にテスラ・モデル3に相当する「小型セダン」が発売され、7車種からなる次世代ラインナップが完成する予定だ。
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