アメリカ・バージニア州のリッチモンドで開催された2024年NASCARカップシリーズ第7戦『トヨタ・オーナーズ400』は、ラスト2周のオーバータイム・シュートアウトでリードを奪ったデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、自身のホームトラックで早くも今季2勝目をマーク。レース距離合計407周のうち圧倒的な228周をリードしたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)からタスキを受け継ぎ、ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を0.269秒差で撃破した。
前戦サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催された今季初のロードコースイベントから、ふたたび3/4マイルのショートオーバルに舞い戻った一行だが、各Next-Gen規定モデルは引き続き今季より導入の新しい空力パッケージを装着しての走行となった。
バイロンがポール・トゥ・ウインで今季2勝目、小林可夢偉は“仇敵”の襲撃に沈む/NASCAR第6戦
ここでフリープラクティスから先手を取ったのがヘンドリック・モータースポーツ(HMS)陣営で、最初のセッションから最速タイムを記録したカイル・ラーソン(シボレー・カマロ)が、続く予選でもチェイス・エリオット(シボレー・カマロ)を引き連れてのカップ通算17回目のポールポジションを手にしてみせる。
「これは必ず役に立つね。ここでのナンバー1ピットストール(ボックス最前列)は大きな意味があるから、とてもうれしいよ」と、決勝での作業に向けタイムロスの少ない場所取りに成功したラーソン。
「太陽が少し出てくれたのも助けになったし、それでチェイス(・エリオット)が僕のタイムに接近したのも少しヒヤヒヤしたけど、ヘンドリックの関係者全員にとって素晴らしい日になった。こうして新たなポールを獲得できて最高だ。これが明日のレースに反映されることを願っている」
迎えた日曜は水煙こそ上がらないものの、午後を通じて降り注いだ雨の影響により各車ウエットタイヤでスタートを切ることに。そこから路面のドライアップが進むにつれ、NASCARのレーススチュワードは30周目にコンペティションコーションを発令し、各車をピットロードへ向かわせる。ここでスリックタイヤへの交換が義務付けられ、ドライバーはイエローの直前に走行していた順でコースへ復帰していく。
レイン装着の判断により順延やディレイを免れ、これで仕切り直しとなった勝負は、リスタートからダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)との首位攻防を繰り広げたラーソンが、なんとかステージ1を制覇する。しかし、第5戦ブリストルと同じくカムリXSEのショートオーバルでの速さは旧モデル比で明らかな改善を見せており、続くステージ2もジョー・ギブス・レーシング艦隊が次々とシボレー・カマロZL1に襲い掛かる展開となる。
■リヤバンパーを投げつける“報復”が発生
ここで強さを発揮したのがラーソンやアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らを撃破した2017年王者のトゥルーエクスJr.で、ステージ2での勝利からアンダーグリーンでのルーティンピットを含め、最終ステージ終盤まで54周連続でラップリードを記録していく。
だが勝利を目指したトゥルーエクスJr.の力走は、陣営内のバッバ・ウォレスがラーソンにヒットしたことで流れが変わり、規定周回残り2周というところでコーションフラッグが振られた瞬間に絶たれる展開に。ここでインフォールドで姿勢を立て直し、最小限のロスで留めたHMSの5号車カマロZL1を含め、優勝争いは今季初のオーバータイムへ突入していく。
この実質“ピットストップ作業時間勝負”を制したのが11号車ハムリンのクルーで、トゥルーエクスJr.は最後の2周でリードを取り戻すことができず、最終的にロガーノとラーソンに次ぐ4位でチェッカーを受けた。
「残念だが、ここ数年で何度か同じことが起きた」と、無念のエンディングを迎えたトゥルーエクスJr.「僕らは素晴らしい場所にいて、ひと晩中素晴らしい速さで19号車を走らせた。クルーは本当に良い仕事をしてくれた」
「でも最後のリスタートはボトムを譲ることになり、彼(ハムリン)が良いスタートを切った。確かに最悪だ。 また勝てるクルマが増えた。だからこそ、来週以降も続けてこんな速いクルマを獲得できるよう努めなければならないね」
そしてアンダーグリーンのピットアウト時に続き、ホワイトフラッグ直下のストレートでもトゥルーエクスJr.とボディを激しくぶつけ合ったラーソンは「もっと悪くなる可能性があったし、ポール獲得、ステージ優勝、そして3位復帰と僕らにとって良い週末だった。それを喜ばなきゃならない」と語った。
「接触に関して? 彼(トゥルーエクスJr.)はただ怒っていたんだと思う。リスタートではチームメイトに押しやられていたからね。彼はデニー(・ハムリン)に対してもっとも怒っていたと思うけど、レースを通じて一番近くにいた僕が彼の怒りを直接ぶつけられていたのさ(笑)」
そして17周のリードラップに留まりながら、同地5勝目を飾ってキャリア通算53勝目に到達したハムリンは「これは間違いなくチームの勝利だった」とJGRとしての奮闘を称えた。
「ピットクルーのメンバーはそれぞれ素晴らしい仕事をしてくれた。彼らはシーズンを通して絶好調の仕事を続けている。ピットインしたとき彼らがいてくれるのは本当に素晴らしい気分だ」
併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第6戦『トヨタケア250』は、接触からクラッシュに追い込まれた“被害者”側が、自身のクルマの破損したリヤバンパーを“加害者”に投げつけるという場外乱闘もありつつ、チャンドラー・スミス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が僚友のアリック・アルミローラやタナー・グレイらを退けキャリア3勝目を飾っている。
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