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キングスレー・カーズ ULEZレンジローバー・クラシックへ試乗 本物を現代的に 後編

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キングスレー・カーズ ULEZレンジローバー・クラシックへ試乗 本物を現代的に 後編

変わらないコマンドスタイルの着座姿勢

キングスレー・カーズ社が手掛けた、ULEZレンジローバー・クラシックのドライビングポジションは旧来的。モダンではない。着座位置は高く、足を曲げて背筋を伸ばした体勢でシートに座る。とはいえ、充分に快適だ。

<span>【画像】キングスレー・カーズ・レンジローバー 手法は様々 現代化されるクラシックたち 全112枚</span>

ステアリングホイールは、小型トラックのように大きいものから、小径なものへ交換してある。この改良だけで、人間工学的に優れた現代的な運転環境に感じられる。

それ以外のインテリアは、レンジローバー然としたもの。特に飾り立てたような雰囲気もなく、古くからのレンジローバー・ファンでも気持ちよく過ごせるはず。

SUVとして運転席からの視界は重要だが、素晴らしい。大きなガラスを、細いピラーで支えている。例のコマンドスタイルと呼ぶべき着座姿勢で見晴らしが良く、ボディ四隅の感覚も掴みやすい。

運転で得られる感覚も、レンジローバーそのもの。特徴的だが、適度に近代化されてもいる。ステアリングラックは少しクイックなレシオのものに交換され、トレッドが広げられ、新品のアルミホイールを履いている。

路面のうねりでボディがフワ付いたり、カーブで大きく揺れることもない。落ち着いたロードマナーだ。試乗車に装備されていた、ファストロード・サスペンションも効果的なのだろう。車高が落ちるスプリングに、硬いアンチロールバーが組まれるオプションだ。

グリップ力も高く、コーナリング能力も高められている。実際、想像以上。エレガントでラグジュアリーなレンジローバーのイメージを塗り替えるほど。強く感心させられた。

リビルドした4.6L V8で270ps

乗り心地も優れ、舗装の凹凸を見事に吸収し、ボディは路面から程よく隔離されている。完璧と呼べるほどスムーズに均してくれるわけではないが、標準のレンジローバーと比べれば、接地感や追従性は良い。独特の味わいがある。

高速道路の追い越し車線では、ドアの隙間から風切り音が立つ。スライド式のリアウインドウは、風圧でガタガタと振動する。とはいえ、ULEZレンジローバー・クラシックの日常的な使用を控えよう、と考えるほどではないだろう。

搭載できるエンジンは3種類。どれもが、ローバーの歴史に忠実なV型8気筒で、排気量は4.0Lから5.0Lの範囲で選べる。最高出力は243psから334psの間に設定される。

試乗車が積んでいたのは4.6Lで、真ん中のユニットだった。もちろん、簡単な整備を済ませただけではなく、クランクシャフトにピストン、コンロッド、カムシャフト、バルブ、シリンダーヘッドは新品に置き換えてある。

ルーカス社製の燃料インジェクションや、エグゾースト系も交換済み。最高出力は270ps、最大トルクは42.3kg-mだという。

サウンドは聞き惚れるほど美しい。吸気音にV8エンジンらしい燃焼音が重なる。クルマというより、モーターボートの音のようにも聞こえる。

V8エンジンを載せたレンジローバーの音を忘れてしまったって? このULEZレンジローバー・クラシックに近づけば、思い出せるだろう。機会があれば、だが。

車重は1876kgあるから、270馬力でも、最新の高性能SUVと同等に鋭く加速することは難しい。でも、そんなことは望まないと思う。普通に走るのに充分以上のパワーはある。

シンプルに素晴らしい現代化したクラシック

トランスミッションは、ZF社製の4速ATが組まれていた。変速は滑らかとはいえず、キックダウンの反応も鈍い。しかしV8エンジンが生み出す低速トルクで、シフトダウンせずともたくましく加速する。

ULEZレンジローバー・クラシックの運転は楽しい。懐かしい見た目のクルマを、現代的な質感で走らせることができる。機械的な特長は本物のまま。豊かな個性が備わり、とても特別な体験を享受できる。

燃費効率が重視され、均質化が進む現代的なモデルとは、まったく異なる時間だった。燃費は、良くても7.8km/Lほどのようだ。

レンジローバー・クラシックをウルトラロー・エミッション・ゾーン(ULEZ)が施行されるロンドン中心部で乗りたく、ULEZ税を支払いたくないと考えるなら、検討の価値はある。20万ポンド(約3040万円)を用意できるなら。

合理的で懸命な選択肢にはならないだろう。ULEZの意義にも反している。だが、金額に見合う内容かを判断するのは、その人次第。筆者が購入を検討できるほど経済的に余裕があるなら、合理性を理由にクルマを選ぶことはないかもしれない。

ULEZレンジローバー・クラシックは、シンプルに素晴らしい。所有する充足感や走りの楽しさは、ULEZ課税の対象になるかどうかとは、別の要素だと思う。

CO2排出量が多いクルマに対して課税される、ULEZという制度がなければ、この手のレストモッドは誕生しなかったかもしれない。運転しやすく現代化されたクラシックカーを楽しめることは、歓迎できる結果だといえるだろう。

キングスレー・カーズ ULEZリボーン・レンジローバー・クラシック(英国仕様)のスペック

価格:19万7726ポンド(3005万円/試乗車)
全長:4470mm(オリジナル・レンジローバー)
全幅:1778mm(オリジナル・レンジローバー)
全高:1778mm(オリジナル・レンジローバー)
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:7.0秒(予想)
燃費:7.8km/L(予想)
CO2排出量:−
車両重量:1876kg
パワートレイン:V型8気筒4552cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:270ps/5000rpm
最大トルク:42.3kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速オートマティック

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