■創始者ヘンリー・フォードと、名車「T型フォード」
ゼネラルモータースやクライスラーと並ぶ「ビックスリー」のひとつに数えられるフォード・モーター・カンパニー。2019年6月16日は、フォードの創業から116年が経った記念日でした。
フォードは、クルマの大量生産、ベルトコンベアによる流れ作業、工業における大規模マネジメントを取り入れたことで、20世紀の産業経営史において特筆される大企業です。
大量のクルマを早く生産できる高効率の工場設備、工員の士気を高める高い給料、一台当たりの生産コストの革新的な低減を組み合わせたフォードの生産方式は「フォーディズム」の名で世界的に知られています。
フォードの投資家としてとくに重要な位置にいたのは、ダッジの創立者、ジョン・フランシス・ダッジとホラティウス・エルジン・ダッジの、ダッジ兄弟です。
フォードの創始者であるヘンリー・フォードは、カール・ベンツが「自動車の生みの親」と呼ばれているのと同じように、「自動車の育ての親」として名高い存在です。
ヘンリーは労働階級出身で、もともとはトーマス・エジソンの会社に勤めており、パーティ会場でエジソンに初めて会った時に、自身が持つクルマへの夢を熱く語り、エジソンがフォードを励ましたという逸話が残っています。
ヘンリーは2度の自動車会社起業の失敗を経て、現在も続く「フォード・モーター」を1903年6月16日に設立しました。フォード・モーターは「A型」と名付けられたクルマから製造販売を行い、1908年には「T型」を発売します。
このT型こそが、ベルトコンベアによる世界初の大量生産車でした。また、それに付随する全米規模でのアフターサービス体制を作ったクルマでもあります。
1909年には部品の規格化により部品互換性を確保することに成功したため、1年間で1万8000台の生産を可能にし、その後の1913年には世界初となるベルトコンベア式組み立てラインを導入。これにより部品の簡素化、内製化に加え、工員の分業化が加速します。
フォードはクルマの生産をライン化して大量生産を可能にしましたが、工員はベルトコンベアに仕事を奪われ、単純かつ長時間の労働を強いられるようになってしまいました。当時のアメリカは労働力が不足していたので、フォードの従業員も激務に耐えかねて退職者が続出します。
そこでフォードは、1914年に1日あたりの給料をそれまでの2倍の5ドル(2006年の価値では103ドル相当)へと引き上げたのです。賃金の増加により1台あたりのコストは跳ね上がりましたが、フォードはそれを販売価格に転嫁することはありませんでした。
フランチャイズ販売店システムも導入し、1920年には全米で走るクルマの約半分がT型フォードになりました。ちなみに、この大量生産時代のT型フォードが黒色ばかりなのは、ペンキの乾きが早く済むという事情があったそうです。
【了】
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