乗り心地の良さは歴代最高の12C以上
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
マクラーレンP1とは異なり、マクラーレン・スピードテールのハイブリッドはエンジンのアシスト専門。P1のように、電気の力だけでは走れない。ケーブルをつないで充電もできない。
そのかわり、フロア面に内蔵された電磁誘導システムでの充電は可能だ。4億円のクルマのオーナーなら、自宅の車庫にそれくらいは付けられるだろう。電圧12Vの通常のバッテリーも、同時に管理してくれる。
スピードテールが720Sの14台分の印象を与えてくれるかといえば、そんなことはない。マクラーレン・セナほどの勇ましさもない。
乗り心地は素晴らしい。質感は最近のマクラーレンではなく、2011年の12Cに似ている。12Cには弱点もあったものの、マクラーレン史上でベストな乗り心地を備えていた。ただし、スピードテールの方がさらに良い。
ステアリング・ラックも、マクラーレンで共通するのもの。ホイールベースは58mm伸び、快適性や安定性を高め、ハイブリッド・システムをエンジンとトランスミッションの間に搭載している都合で、好ましい緩さがある。
比較的長い時間を、スピードテールで過ごした。中央のドライバーズシートに座り、マクラーレン720Sより1万8500ポンド(2億4790万円)も高い価値があるのか考えた。でも、時間とともにそんな悩みは消えてしまった。
いい尽くされた表現だが、スピードテールで得られる体験は、唯一無二。このクルマを買える余裕を持つ人にとっては、その特別さと希少性が、価格を正当化するのだろう。
ハイパーGTではなく、スーパーカー
長く乗るほどに、予想していなかった理由でスピードテールに気持ちが入っていく。初めは、ハイパーGTだと思って運転していたからだ。しかし違う。マクラーレンのV8エンジンは、そういう性格ではない。
先入観を捨てるのに、少し時間がかかってしまった。スピードテールは最先端の技術を満載したモデルだが、哲学的には1970年代に誕生したスーパーカーと似ているのだ。
現代版フェラーリ・デイトナとでもいえるだろうか。安楽で長距離移動も難しくない。何より前面にあるのは、ドライバーと、ドライビング体験なのだと気付いた。
それで、すべてが腑に落ちた。スピードテールは地平線目がけて疾走する、記憶に深く刻まれるマシンだ。
ハンドリングは素晴らしい。サーキット走行は想定していないから、マクラーレンはサスペンションを一般道向けに最適化している。英国の道とも、素晴らしい調和を見せてくれる。
車重は1499kgと軽量。ブガッティ・シロンより約500kgも軽い。飛ぶように走り、踊るように曲がる。美しい身のこなしで、ドライバーの意思に応えてくれる。
もしスピードテールの117.0kg-mというトルクを引き出したいなら、スポーツ・モードを選ぶ必要がある。しかもエンジンが高回転域に達しない限り、幅315もあるタイヤへ最大トルクは伝わらない。
つまり、スピードテールの真価を確かめるには、多くの人が一般道では経験したことのない速度域へ踏み入れなければならない。
シロンを打ち破る0-300km/h加速13.0秒
加速力にも目をみはる。シロンのように、パワーで空気を押し避けるような暴力性はない。スピードテールの流麗なボディは、空気の中をなめらかに進む。むしろ、空気の中を突き進んでいる感覚が薄いくらい。
これこそ、出力で勝るブガッティ・シロンを打ち破る、0-300km/h加速13.0秒を叶えている理由だ。
あまりの高速移動に神経が疲れてアクセルペダルを緩めても、空気の塊に勝てず、急速な減速が生じることもない。スピードテールは、穏やかに速度を落としていく。
そのため、優れたブレーキも求められる。ペダルの踏み始めはフィーリングが皆無だが、制動力が高まるほどに感触が豊かになる。
最高速度は400km/hを超える。誰も到達できないであろう、超高速域で求められる安全性に必要な装備がなければ、さらに速度は伸びるはず。ホイールやタイヤ、サスペンション、ブレーキなどは、理想よりも重たい。
最高速度にばかり目が奪われるが、本質的にスピードテールは一般道を普通に走らせるだけで、素晴らしい体験が得られる。美しいボディとインテリア、完璧なドライビングポジション、乗り心地や操縦性を味わうのに、240km/hで走る必要もない。
スピードテールは、マクラーレンF1にかわる存在ではないといえる。レースを想定していないからではない。そもそもF1も、レーシングカーとして生み出されたわけではなかった。デザイナーのゴードン・マレーは、レースを戦う前提なら、別の設計をしただろうと話していた。
F1は、軽さを第一に優して設計されていた。一方のスピードテールが考慮していたのは、最高速度だ。
遠くて近いスピードテールとF1
一方でF1とスピードテールは、読者の想像以上に近い親戚でもあるといえる。ドライバーズシートの位置と、生産ライン以外の面でも。
マクラーレンF1も、実際にオーナーが試すかどうかは関係なく、ずば抜けたパフォーマンスを備えていた。乗り心地は望外に良く、不足のない荷室があり、エアコンなど1990年代のエキゾチックモデルとして不満のない装備があった。
マクラーレン・スピードテールも、F1も、スーパーカーとして見られることは同じ。富裕層のドライバーへ、至高のドライビング体験を与えてくれる。しかも仕上がりは、その時代で秀逸。希少で魅惑的だ。
しかし何より強調したいのは、普通に運転しているだけで極上な体験だということ。どんなライバルモデルを持ってきても、スピードテールの水準に並ぶことはできないだろう。
パワフルでハイスピードなだけではない。軽量で知的だ。つまりスピードテールは、マクラーレンを体現したクルマなのだと思う。
なお、106台の初代オーナーは、すでに決定済みだという。
マクラーレン・スピードテール(英国仕様)のスペック
価格:210万ポンド(2億8140万円)
全長:5137mm
全幅:-
全高:-
最高速度:402km/h
0-300km/h加速:13.0秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1499kg
パワートレイン:V型8気筒3994ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1070ps(システム総合/エンジン:757ps、モーター:313ps)
最大トルク:117.0kg-m(システム総合/エンジン:81.4kg-m、モーター:35.6kg-m)
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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