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【ポニーカー対ホットハッチ】マスタングかフォーカスSTか ドライバーズ・フォードを比較 後編

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【ポニーカー対ホットハッチ】マスタングかフォーカスSTか ドライバーズ・フォードを比較 後編

発進すると一気に気分が明るくなる

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル))

【画像】選ぶならどちら? マスタング・ブリッドとフォーカスST 全84枚

photo:Max Edleston(マックス・エドレストン)

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


フォード・マスタングの着座位置は低く、丁度いい運転姿勢は倒れ気味。専用のモニター式メーターパネルには、様々な情報が映し出される。インテリアの雰囲気は良い。

グリップ力にも目をみはる。本格的なアメリカン・スポーツカーが放つ雷鳴の中心に座り、英国の荒野に広がる道を駆け回る。どんな挑戦者にも立ち向かえそうな、そんな気持ちにさせる。

ダークグリーンのボディから突き出た、極太のエグゾーストの後ろを執拗に着いてくるオレンジ色のハッチバック。開けた場所でフォーカスSTに乗り換えた。マスタングを追いかける番だ。

マスタングとは違い、フォーカスの車内はハッチバック規準でいっても今ひとつ。英国価格4万9085ポンド(736万円)のポニーカーに及ばないのはもちろん、3万ポンド(450万円)するホットハッチとしても、少し寂しい。

キャビンの深いところに身体を沈めるのではなく、シートの上に腰掛ける印象がある。エンジンを始動させると、4気筒らしいフラットなサウンドが聞こえてくる。クワッドカムのV8ユニットのような重厚感はない。

シフトノブを握り、発進する。一気に気分が明るくなる。フォーカスSTの加速力はマスタング・ブリットほどではないにしろ、数字以上にその差は小さい。

理由の1つは、FFというパッケージ。0-100km/h加速5.7秒という数字は遅くないが、恐らく発進から半分以上の時間はトラクションが制限されている。ブリットと同じトラクションが得られれば、5.4秒くらいで加速できるだろう。

攻め立てるほど良くなっていく

459psと280psで最高出力には大きな開きがあるものの、車重とトルクがフォーカスSTに味方している。マスタング・ブリットより350kgも軽量で、最大トルクは42.7kg-mもある。

加速性能を理解しやすいトルクウエイトレシオを比較すると、フォーカスSTは29.1kg-m/t。マスタング・ブリットは31.8kg-mだから、大きな差とまではいえない。

加えて、フォーカスSTの最大トルク発生回転数は3000rpm。一方のマスタングは4600rpm。より時間をかけてエンジンを高回転域まで回す必要がある。これらの要因が、実際の走りに影響している。

マスタング・ブリットは、独特の雰囲気が強いクルマだ。マッスルカーらしいスタイルでクールに走らせるなら、動的特性のまとまりは良い。しかし積極的にプッシュし始めると、オプションのダンパーで強化していても、手を焼くようになる。

フロントノーズの反応は少し曖昧で、常に細かな修正舵を当てる必要がある。狙った場所に、うまく鼻先が向いていかない。100km/h程度の速度域でも、攻め立てていくと扱いが難しくなり、パフォーマンスの限界を感じるようになる。

フォーカスSTはその逆。攻め立てるほど良くなっていく。2.3Lのエコブースト・エンジンも、このクルマにベストマッチ。高回転域でのサウンドは心地よく、4気筒ではなく5気筒に思えてくる。

トルクカーブはフラットで高く、ギアレシオは適度に近い。パワーバンドから外れることは、そうそう起きない。落ち着きや正確性、懐の深さは、大西洋の反対側で生まれたマスタングとはまったく別次元にある。

よりタイトでレスポンシブで楽しい

この違いこそ、今回確かめたかったポイント。筆者はマスタングも好きだ。カーマニアで、それほどシリアスな走りを求めないドライバーにとって、マスタング・ブリットは素晴らしいチョイスだと思う。

しかし今回のような道を走るなら、フォーカスSTを筆者は選ぶだろう。排気量もパワーも少なく、前輪駆動という事実を差し引いても、より運転したいと思わせる。タイトでレスポンシブで、楽しい。

直線加速を体験すると、V8エンジンの魅力に惹き込まれる。筆者も理解できる。しかし、筆者がクルマの運転で最も興味を抱くポイントは、ハンドリング。ドライバーとの一体感を濃くする領域だからだ。

今回の2台は、異なる人々の異なる要求に合わせて、それぞれ作られている。この2台が比較されること自体が珍しい。

筆者はフォード・マスタング・ブリッドも、フォード・フォーカスSTも、どちらも本当に気に入っている。しかし純粋なドライバーズカーとして見た場合、小さな前輪駆動のハッチバックは、大きな後輪駆動のマッスルカーをリードしている。

打ち負かすような得点差ではない。しかし、わたしの中での結果は明確。今回の勝者は、フォード・フォーカスSTといえるだろう。

フォード・マスタング・ブリッドとフォーカスST 2台のスペック

フォード・フォーカスST(英国仕様)のスペック

価格:3万2510ポンド(487万円)
全長:4378mm
全幅:1825mm
全高:1454mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:179g/km
車両重量:1468kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/5500rpm
最大トルク:42.7kg-m/3000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

フォード・マスタング・ブリット(英国仕様)のスペック

価格:4万9085ポンド(736万円)
全長:4784mm
全幅:1916mm
全高:1381mm
最高速度:262km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:270g/km
車両重量:1818kg
パワートレイン:V型8気筒5038cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:459ps/7250rpm
最大トルク:57.9kg-m/4600rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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