近年、JEEPの販売が好調だという。JAIA(日本自動車輸入組合)が公表している統計によると、2011年の新車登録台数が3154台だったのが2021年には1万4254台となっており、右肩上がりといえるほどの台数を記録している。
要因としてアウトドアブームが到来しワイルドなルックスがトレンドであることや、「SUVといえばJEEP」というブランドイメージが功を奏していることが挙げられる。
空前のアウトドア人気でブーム再来!? ポップアップルーフ車 最新AtoZ
さらに今年3月、JEEPの日本法人(FCAジャパン)がプジョーやシトロエンなどの日本法人であるグループPSAジャパンと統合し、ステランティスジャパンが新たに発足した。これにより勢いづき、より攻めたラインナップを日本でも展開してくれるのではないだろうか。
そんな期待を込めつつ、日本市場におけるジープ絶好調の背景と「買い」なモデルをご紹介しよう。
文/九島辰也、写真/ステランティスジャパン
■空前のJEEP人気を牽引するラングラーとコンパス
昨年日本に導入されたグラディエーター。端的に言えばラングラーのピックアップトラック版である
コロナ禍が引き金となったアウトドアブームのなか、JEEPがとんでもなく売れている。2021年の国内販売台数はブランド史上初めて1万4000台を超えた。
原動力となったのはラングラーとコンパスで、特にJL型ラングラーの評判は高く、7000台近くまで伸ばした。
クライスラージャパンセールス時代は年間500台だっただけに驚きだ。当時TJ型、YJ型ラングラーに乗っていた身からすると、不思議でならない。
とはいえ、ラングラーと言っても当時はショートホイールベースしかなかったのだから当然かもしれない。今日売れているのは5ドアのアンリミテッドだからだ。
実用性を鑑みてもこちらの人気が高いのはわかる。大人が5人乗れて荷物もガッツリ積めるのだから都合がいい。それにスタイリングだってワルくない。そのせいもあってラングラーの3ドアは現在は販売されていない。
メルセデスベンツGクラスも同じ現象が起きたから、メルセデスベンツジャパンはショートボディの販売を早々にやめてしまった。そちらもかつて所有していたが、これほどまで一般に受け入れられるとは当時思いもしなかった。
■ピックアップトラック正規輸入の衝撃
それはともかく、こうした背景のなか、グラディエーターは発売された。
本国で発表になると、日本でもクルマ好き、特にアメリカ車好きとヨンク好きがざわついたのはご承知のとおり。早々と輸入した名古屋のアメリカ車専門ショップに取材しに行ったことを記憶している。あれは2020年の2月頃だったと思う。
興味深かったのは、その年の年末には当時のFCAジャパンが輸入販売することを明言していたこと。右肩上がりのJEEPにさらに拍車をかける計画だったのだろう。
とはいえ、ピックアップトラックが正規輸入されるのはレアなケースであり、挑戦であることは間違いない。が、あれから一年。2021年11月30日に受注をスタートさせたグラディエーターは瞬く間に完売となった。おみごとである。
■実はコスパが高い!?
正確に伝えると、「完売」となったのは770万円の値札をつけた400台。価格改定で810万円になった今年3月4日以降も受注が続けられている。
なので、絶望を感じることはない。40万円ほど値上がりしてしまったが、手に入れることは可能だ。ステランティスジャパン(旧FCAジャパン)は、グラディエーターをレギュラーモデルとして位置付けている。
個人的には、810万円でもアフォーダブルだと思う。この手のモデルは値落ちしないのはもちろん、新車を専門ショップに輸入してもらうともっと高くなってしまう。オプションにこだわれば1000万円にかぎりなく近くなるだろう。
■最強モデルの走破性は伊達じゃない!
それに、ステランティスジャパンが提供するのはルビコンであることを忘れてはならない。フロント、センター、リアの3つのデフをロックする機構を持つルビコンは、オフロードではある意味最強。アンリミテッドのルビコンを本国リビコントレイルで試したことがあるが、その走破力は尋常じゃなかった。
最終的にフロントまでロックしてしまえば、傾斜30度はある濡れた岩肌を平然とのぼって行くのだ。JEEPがオフローダーを代表する所以はそこにあると言いたい。
とはいいつつも、この世界にはマニアもいらっしゃいますからグラディエーターとはいえ、ルビコンが国内に増えれば、さらに目立つモデルが欲しくなる方もいることだろう。
でも大丈夫。その場合は、MOJAVE(モハーベ)かHIGH ALTITUDE(ハイ アルティテュード)を専門ショップに頼んで輸入すれば満足するに違いない。
■グラディエーター人気のワケは?
では、今なぜ日本でグラディエーターは人気なのか。理由はやはり冒頭に記したアウトドアブームにあると思う。家族や少人数の友人と出かけるアウトドアは三密を避ける意味でも、大手を振って出かけられる遊びだからだ。
で、そんなブームからはや2年。アウトドア産業は驚異的なスピードで発展した。キャンプ用テントはもちろん、車載用ターフや寝袋、BBQ周りのグッドなど、あらゆるニーズに応えられるギヤが充実した。テントを広げる設営時間は……最短1分である。
となれば、オートキャンプ場もそうだし、キャンプ場の駐車場に停めるクルマにもヒエラルキーが生じる。周りを「おっ!」と言わせるクルマが必要だ。きっとそんなニーズにもグラディエーターは応えるに違いない。
ワイルドさでいえばハマーH1に匹敵する。また、これをヨーロッパ車でやろうとすれば価格は2倍、3倍に跳ね上がる。AMG G63、ランボルギーニウルス、ベントレーベンテイガ、ロールスロイスカリナン云々。2000万円出しても買えない。
その意味からもグラディエーターは我々の味方である。1000万円以下でこれらのモデルに負けない存在感は頼もしい。それにアウトドアに長けている「通」っぽさはこれらのモデルを上回る。
まぁ、実際にグラディエータールビコンを購入したユーザーがヨーロピアンSUVを視野に入れているかどうかはわからないが、唯一無二の存在であることは間違いない。
このサイズさえクリアできれば、アウトドアにおける最強の相棒だ。遠い昔、ピックアップトラックを所有していたことがあるが、荷台は思いのほか万能なのである。
■ゴージャスなJEEPも魅力的
そんな魅力的なグラディエーター以外にもJEEPには魅力的なモデルがある。
フルモデルチェンジしたばかりのグランドチェロキーLだ。オーセンティックな雰囲気を残しながらモダンに仕上げられたスタイリングはグッドだし、インテリアはJEEP史上最高にゴージャスな仕上がりとなる。
「JEEPがこんなに高級になったの?」って感じだ。インターフェイスも一新され、最新のテクノロジーが搭載される。要するに使い勝手がいいってことだ。
もちろん、それだけモダンになってもオフロード性能に長けているのは言わずもがな。これまでのノウハウを電子制御で再現し、イージードライブできる。信頼性は高いと言っていいだろう。
でもって価格は1000万円以下に抑えられた。上級グレードは999万円とギリギリだけど。このクォリティを鑑みれば得した気にもなるってもんだ。
■個性重視の方におススメしたいブランド
裏技ならチェロキーも見逃せない。現在部品供給の問題から販売を休止しているが、購入後カスタムするにはいいベース車になるだろう。
2インチリフトアップしてオフロード用タイヤを履いて、ルーフキャリアにフロントガード付ければ、それなりに楽しく仕上げられそうだ。
街であまり見ないのがいい。ほかの人と乗っている車種はかぶりたくないしね。個性を楽しむならそんな選択もアリ。
JEEPはカスタムを楽しめるブランドだから、そんな目線で選ぶのもワルくないはずだ。
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