150年もの間進化してきた内燃機関。つまり私たちの回りに今あるエンジン車は、その歴史の到達点なのだ。ならばその衰退を嘆くよりも、十分に味わわなければならない! なくなる前に乗っておきたい、特上大トロのような純エンジン車を5台ご紹介しよう。
文/吉川賢一、写真/HONDA、TOYOTA、SUBARU、MAZDA、NISSAN
なくなる前に乗っておけ! 150年の歴史が詰まった極上大トロのエンジン車5選!
■MT好きにはたまらない操作感とサウンド ホンダ N-ONE RS(FF 6MT 税込206万円)
ホンダ N-ONE RS。小さなエンジンのポテンシャルをいっぱいまで引き出して走る楽しさが味わえる
有り余るパワーが魅力のターボ車を紹介するまえに、無くなる前に乗っておきたいガソリン車として、ホンダの「N-ONE RS」を取り上げたい。
このN-ONE RSには、660cc直列3気筒のターボエンジン(最高出力64ps/最大トルク10.6kgfm)が搭載されており、車両重量は840~860kgと軽量。
排気量1.0Lを超えるような他のスポーツモデルと比べ絶対的なエンジントルクが小さいぶん、速度を上げるには、2、3、4速と、矢継ぎ早にシフトチェンジをする必要があるが、その都度聞こえるエンジンの「グォー」というサウンドの荒々しさが心地よいクルマだ。
6速MTの「ガチッ」としたシフトフィールも、操作感がはっきりとするため、非常に好ましい。
ギア間の加速のつながりもよく、ポンポンとシフトアップ、シフトダウンを軽快に繰り返す操作は、MT好きにとっては、「これを楽しいと言わずして何を楽しいとするのか」と感じるほど。後席は突き上げがきつめで乗り心地はいいとはいえないが、ぜひとも6速MTで乗っておきたいクルマだ。
■強靭なシャシーと、1.6Lらしからぬ太いトルクが魅力 トヨタ GRヤリス(税込396万円~)
トヨタ GRヤリス。直列3気筒、1.6Lターボの太いトルクが軽量でコンパクトな車体をグイグイと加速させる
WRC(FIA 世界ラリー選手権)参戦のホモロゲーションモデルとして開発されたスポーツ4WDである、トヨタ「GRヤリス」。エンジンは1.6Lの直列3気筒ターボだが、最高出力200kW(272ps)/最大トルク370Nmと、ちょっと前の2.0Lターボエンジン並のスペックだ。
このハイパワーエンジンを、軽量かつコンパクトなヤリスをベースに拡幅して搭載し、1.6Lらしからぬ太いトルクで、グイグイと加速するのだから、そりゃ速い(GRヤリスの車両重量は1280kg)。
高性能シャシーと高剛性ボディ、ハイグリップなタイヤの恩恵で、走り心地が安定しているので、いつの間か速度が出てしまっていることも。GRヤリスの強靭なシャシーありきで性能発揮できる、特別なターボエンジン車だ。
■水平対向のフィーリングはぜひ味わっておきたい スバル BRZ(税込396万円~)
スバル BRZ。これから希少になっていく純エンジン車の中でもさらに希少な水平対向エンジンを搭載
純エンジン車を取り上げるうえで、水平対向4気筒エンジンを搭載したスバル BRZ/トヨタ GR86は外せないモデルだ。
先代BRZ/86の軽量コンパクトかつ低重心なエンジンコンセプトはそのままに、先代ユーザーから求められていた「モアパワー」の要望に応え、排気量は2.0Lから2.4Lへアップ。最高出力は173kW(235ps)/最大トルク250Nm、0-100km/h加速は、7.4秒から6.3秒へと、1秒以上縮めている。
乗ってみると、余りの視野の低さに最初は驚くが、雰囲気のいいコクピットによって走る気満々にさせられ、心が躍る気持ちになる。ワインディングへ出かければ、水平対向エンジンのフィーリングや、低重心なクルマの安定感や安心感といったありがたみを、十二分に感じられるクルマだ。
■ディーゼルなのに回すことが楽しい!! マツダ CX-60 SKYACTIV-D 3.3(XD-2WD 税込353万円~)
マツダ CX-60 SKYACTIV-D 3.3。ディーゼルならではのトルクフルな走りが気持ちいい。さらに低燃費
また、マツダの開発した直列6気筒ディーゼル車である、「CX-60 SKYACTIV-D 3.3」も、是非ともお薦めしたい純エンジン車だ。
排気量は3.3L、最高出力は170kW(231ps)/最大トルクは500Nmだが、特筆すべきは燃費のよさ。WLTCモード燃費にて19.6~19.8km/L(2WD)を達成している。また、「クォー」という直6エンジンサウンドによって、ディーゼルなのに回すことが楽しい。
直6ディーゼルと聞いてもピンと来ない人も少なくないと思うが、昨今のディーゼルターボエンジンのトルクフルな走りと、走れば走るほどに伸びる燃費のよさを知れば、必ず気に入るはず。静かなだけのハイブリッド車では味わえない、マツダの直6ディーゼルのフィーリングをぜひ体感してほしい。
■魔力ともいえるような魅力が詰まったエンジン車 日産 スカイライン400R(税込590万円)
日産 スカイライン400R。NISMOもいいけど400Rもね。V6のサウンドと加速力が嫌いな人はいないハズ。限定車ではなくカタログモデルというのも魅力だ
2023年8月に「NISMO」が登場した、日産スカイライン400R。限定1000台であることから、すでに入手困難となっているようだが、カタログモデルのスカイライン400Rだって凄いマシンだ。
排気量3.0LのV型6気筒ツインターボエンジンが搭載されており、最高出力298kW(405ps)/最大トルク475Nm。駆動方式は後輪駆動のみという、生粋のスポーツセダンだ。
通常走行では、ベース車(300ps)との違いは殆ど感じられないが、シチュエーションが許されて、アクセルを踏みこめば、「クォーン」という野太く澄んだV6サウンドが高鳴り、強烈に加速していく。「冷や汗」をかくほどの爆発的な加速だが、エンジン車好きならば、これが嫌いな人はいないはず。
また、電制ショックによる足のセッティングと、DASによるハンドルングの応答性、そして405psのV6ツインターボのレスポンス、これらをドライブモードセレクターで切り替えできるのが、とにかく面白い。
ノーマルモードでゆっくりと流して走るときは、エンジンの荒々しさは影を潜め、足周りの硬さも丁度よい塩梅となるので、むしろ大人しめのセダンのよう(400ps超だといって構える必要はない)。
だがモードをスポーツに切り替えれば、クルマが全くベツモノへとキャラ変、切れ味鋭い加速とサウンドを奏でるマシンへと激変する。魔力ともいえるような魅力が詰まったエンジン車だ。
そう遠くないうちに、自動車メーカーは、純エンジン車のラインアップを廃止していくだろう。ぜひその前に、純エンジン車の到達点を味わっておいてほしい!
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みんなのコメント
ジムニーやウェイクに比べたら軽量だけど、アルトやミラからしたら重量級。
まあ軽量とは言えないが6MTは評価できる。