都市部での配達に特化
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
【画像】新型フォードEトランジット【マッハEやハマーEVと写真で比較】 全131枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
フォードは、同社初の電動商用バンとなるEトランジットを発表した。欧州には2022年春に導入予定だ。
異なるサイズ、重量、ボディの組み合わせで最大25種類のバリエーションを用意。WLTPサイクルで最大350kmの推定航続距離を実現している。フォードによると、これは「欧州の平均的な商用バンが毎日走行する距離の約3倍」だという。
67kWhのバッテリーを床下に搭載。11.3kWの車載充電器では8時間強で充電でき、最大115kWのDC充電器では約34分で15%から80%の充電が可能だ。
また、フォードが展開する充電ネットワークを利用できる。世界中に約16万台の充電器があり、その多くは急速充電機能を備えている。
フォードは、セントリカ、スカイ、ADLオートモーティブなど多くの企業に対してヒアリングを行った。その結果、航続距離の最低条件は240km程度で、急速充電機能は必須であるという意見が得られた。数百万マイルに及ぶテレマティクスのデータも、開発に活かしている。
後輪を駆動する電気モーターの最高出力は269ps、トルクは43.8kg-mで、欧州で最もパワフルな電動商用バンだと謳われている。性能の数値はまだ明らかにされていない。
エコな走りを重視したドライブモードも搭載されており、加速力を調整したり、エアコンを最適化したり、最高速度を下げたりすることで、荷物を積んでいない状態での航続距離を8~10%向上させるという。
さらに、モバイル電源として使用できる「プロ・パワー・オンボード」がオプションで用意されており、様々なツールや機器に最大2.3kWの電力を供給することができる。これは業界でもまだ先例が少ない試みであり、人気の高いオプションになることが期待されている。
使い勝手に妥協はなし
デザイン面では、ブルーのアクセントを配した新しいグリルを除き、標準モデルとほぼ同じスタイリングとなっている。充電ポイントもグリルの中央、エンブレムの下に配置されている。
コネクティング機能を備えており、テレマティクス・サービスによって車両の運用効率を最適化する。
インテリアには、フォードの最新ソフトウェア「Sync 4」を搭載した12インチのタッチスクリーンが備わっており、無線アップデート、音声認識、クラウドベースのナビゲーションに対応している。
また、速度標識に応じて速度を調整するスピードリミッターを車両管理者が設定できるシステムなど、最新のアクティブ・セーフティ技術も用意。一般的なEVと同じエアコンなどを備え、快適性を向上させている。
フォードは、テクノロジーを重視しながらも、目的に応じて「妥協のない」荷室容量を確保するように気を配ったとしている。
バッテリーを床下に搭載するために、ドライブトレインとリアサスペンションは新設計された。後者には「ヘビーデューティ」なセミトレーリングアームを採用している。これにより、後輪駆動のディーゼルモデルと同じ15.1立方メートル(1万5100L)の荷室スペースを確保した。
積載重量は、バンモデルでは最大1616kg、シャシーキャブモデルでは最大1967kgとなっている。バリエーションとして、車両総重量4.25トンまでの異なる全長・全高・荷室容量が用意されている。
標準モデルと同等の信頼性
フォードは現在、欧州に1000か所以上あるトランジットセンターに加えて、「数百」もの架装業者と協力し、ディーゼルモデルに適合するアクセサリーを展開している。
Eトランジットはすでに、ディーゼルモデルの開発と同様の過酷な環境下で、「あらゆる条件と天候」でテストされている。また、頻繁な急速充電、定期的な充電、メンテナンス不足などの「極端な使用例」を広範囲にテストし、ディーゼルモデルと同等の信頼性を確保しているという。
バッテリーと高電圧部品には8年間、16万kmの保証が付いており、欧州では1年間、走行距離無制限のサービスが提供される。
生産は標準モデルと同じくトルコの工場で行われ、バッテリーはポーランドから、電気モーターは米国から調達される。
フォードは、2021年中に欧州の主要市場でEトランジットを使った「広範な運用試験」を行うとしている。これは、2022年までの115億ドルの電動化投資の一環である。
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