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【感服するほどの懐の深さ】アウディRS Q8へ試乗 600ps 上質と高性能の両立

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【感服するほどの懐の深さ】アウディRS Q8へ試乗 600ps 上質と高性能の両立

神の領域ともいえる別次元の動力性能

text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)

【画像】RS Q8とウルス、カイエン、X6 全105枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


アウディRS Q8を、混雑したロンドンの目抜き通りで初めてドライブする。想像力を働かせないと、超が付くほど高性能なクルマだという事実を忘れてしまいそうだ。

全長は約5m、車重2.3t、最高出力600ps、価格は10万ポンド(1350万円)以上。正面を見て走らせている限り、英国価格6万7000ポンド(904万円)の、普通のQ8のようにも感じられてしまう。

RS Q8は、スーパーSUVの雄、ランボルギーニ・ウルスやポルシェ・カイエン・ターボ・クーペより、ニュルブルクリンク・サーキットを12秒も速く周回できる性能を隠し持っている。親戚でもあるが、ライバル関係にもあるクルマだ。

レコードブレーカーが、低速域での優れた乗り心地と洗練性をも持ち合わせている事実。極めて印象的であるとともに、予想外でもある。

高級感溢れるインテリアとレザーシートにも同じことがいえる。トップレベルのパフォーマンス以上に、ラグジュアリーさの方が前面に出ている。

洗練された電子技術を搭載し、アウディRS Q8並みの、神の領域ともいえるような別次元の動力性能を備えたクルマは、他に例を見ない。これほど大きく背の高いクルマが、サーキットを俊敏に高速で走るなど、考えにくい。

搭載するツインターボV8エンジンは、最高出力600psを6000rpmで発生。電光石火で変速する8速ATと極太の低速トルクで、0-100km/h加速を3.8秒でこなす。

完璧といえる安定性と旋回性

4輪駆動システムは、リアタイヤに最大で80%のトルクを分配できる。もちろん、リアのデファレンシャルはトルクベクタリング機能付きで、4輪操舵システムも搭載。

ポルシェやランボルギーニ、ベントレーにも採用される、電圧48Vのアダプティブ・ボディロール・コントロールも装備。例外的に洗練されたスロットルレスポンスと、ステアリング性能を獲得している。

その結果、ほぼ完璧といえる安定性と旋回性で、圧巻のコーナリングを披露する。コーナリングスピードや、カーブのきつさは関係ない。

その走りを支えるRS Q8のタイヤは、記録に残るほどに巨大。試乗車には、3万ポンド(405万円)ものオプションが満載されていたが、23インチのアルミホイールもその1つ。タイヤサイズは295/35で、ピレリPゼロを履く。

この巨大な専用のタイヤにも、アウディのエンジニアは洗練性を諦めなかった。「静かで快適で、どんな天候にも対応できます」 とダイナミクスの専門家が高く評価している一品だ。

アダプティブ・エアサスペンションは、大きな路面の剥がれがあっても、快適さを保ってくれる。例え200km/h近い速度でも問題ない。ひどくぬかるんだ状況にも対応するため、オフロードでは最低地上高を50mm持ち上げることも可能。

大きなアウディRS Q8を英国の一般道で走らせてみる。楽しくもあり、悩ましくもある。

高速を滑空するように悠々と走る

高速道路での合流を素早く処理するだけでなく、滑空するかのように悠々と走行できるSUVは、そう多くなはい。この走りを叶えているのが、2200rpmから4000rpmで湧出する圧巻のトルク。

足首の角度をほんの数秒倒すだけで、必要な操作は完了。静かにたくましいV8エンジンが任務をこなしてくれる。英国の高速道路の制限速度、あるいは実際の流れに沿った130km/hくらいのクルージングを、8速に入れたまま2000rpm以下で済ませてしまう。

走行距離を重ねても、果たしてこのエンジンが摩耗してしまう日は来るのだろうか。

現代のアウディらしく、RS Q8にもややこしいドライビングモードが用意されている。最もスポーティなモードを選べば、エンジンはさらに鋭さを増すが、即時的というわけでもない。

巨体が反応するまでに、0.5秒ほどのためらいがある。といっても、同じクラスのライバルモデルも似たようなもの。このためらいが、従来的なスポーツカーとの違いでもある。瞬発力で勝る、EVのテスラやジャガーIペイスとの違いでもある。

ブレーキも望外に強力。これほどに強力で質量のあるマシンには必要な装備だ。制動時のフィーリングは、標準のスチール製ディスクか、カーボンセラミックかによる。

カーボンセラミックの場合、充分に温まるまで、わずかに反応が悪く感じられた。そのぶん、本領を発揮すれば、感動するほどのストッピングパワーを発揮する。

感服するほどの懐の深さ

英国では、RS Q8の最高速度は249km/hにリミッターが掛けられる。市場によっては305km/hに到達することもできる。

しかし、狭い都市部ではボディは大きすぎる。道幅も駐車場も狭く、制限速度が厳しく制限された英国や日本では、クルマの性能を解き放てる機会は非常に限られてしまうことは間違いない。

それを理解したうえで、ベントレーやポルシェ、ランボルギーニにより手頃な英国価格は、アウディRS Q8を選択する動機づけにもなるだろう。多様性が進むクルマ好きが選ぶモデルとして、RS Q8は見かけだけではない、オールインワンのスーパーSUVだといっていい。

考えられるどんな路面条件でも、どんな気分でも、アウディRS Q8は受け入れることができる。見事だと感服するほどの、懐の深さを持っている。

アウディRS Q8 TFSIクワトロのスペック

価格:10万900ポンド(1362万円)
全長:5012mm
全幅:1998mm
全高:1694mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:277g/km
乾燥重量:2315kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:600ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2200-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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