2月12日、神奈川県横浜市港北区にあるアネスト岩田本社工場で、『ANEST IWATA BLUE LINK FES. 2023』が行われ、スーパーGT GT300クラスに参戦するANEST IWATA Racing with Arnageが新たにカラーリングされたマシン、そしてイゴール・フラガ、古谷悠河、小山美姫の3人のドライバーたちが集まったモータースポーツファン、地域のファンにお披露目されたが、ここでなぜアネスト岩田がモータースポーツに参入するのか、その狙いが語られた。
■モータースポーツを通じて「さまざまな方と繋がりがもてる」
アネスト岩田は、これまでコンプレッサや真空機器などさまざまな産業機器を手がけるメーカー。箱根ターンパイクのネーミングライツをもっており、自動車ファンにとっても馴染みがある名前ではある。近年、スーパーGTにはスポンサードというかたちで関わってきたが、いまなぜ『ANEST IWATA Racing』としてモータースポーツ、スーパーGTへの参戦を決めたのか。そこには、2026年に100周年を迎える企業としてのさまざまな考えがあるという。
ANEST IWATA Racing with Arnageが『BLUE LINK FES』で車両お披露目。イベントは盛況に
「アネスト岩田は1926年創業以来、コンプレッサとスプレーガンを地道に作って販売してきたメーカーです。こういった異業種のようなメーカーがスーパーGTに参戦するのは、我々にとってはまさに“挑戦”です」と語るのは、ANEST IWATA Racingで総監督も務めるアネスト岩田の営業本部長、武田克己取締役。
「なぜこの挑戦をするのかというと、やはり常に前向きに活動するには、いろんなものに挑戦していかないと企業としての成長はないだろう、と第一に感じています。また異業種から参戦することによって、スーパーGTというプラットフォームのなかで、さまざまな方と繋がりがもてるであろう、ということです。そうすれば、次なる何かが見えてくるだろうと思っています」
スーパーGTに限らず、モータースポーツという舞台は世界的に“社交場”の意味合いをもっている。2022年にはスーパー耐久のST-Qクラスにさまざまなメーカーが開発の意味合いをもって参戦を開始したが、そこで各メーカーのスタッフから聞こえてきた驚きは、モータースポーツを通じたさまざまな出会い、交流だという。
この武田取締役の意見については、100周年記念プロジェクトに携わる経営企画部の小針一晃インキュベーションチームリーダーも同意する。「モータースポーツの世界は日本のいちばんの産業である自動車産業が関わる世界であり、グランツーリスモもそうでしたが、正面玄関から『会わせてください』と行っても、アネスト岩田の大きさでは会わせていただけないんです」と小針リーダー。
「しかし、モータースポーツではパドックにいると、同じテーブルで話ができる。そこで新しいビジネスを作っていきたいとということ、そして地域に向けても、モータースポーツ活動をプラットフォームとして繋げていきたいと考えています」
日本のものづくりの最先端であり、「いちばん大きなパイ」である自動車産業と繋がりを作ることで、製造業全体にネットワークを作っていくことが狙いとしてあるという。すでに、スーパーGTのパドックを通じて、4月からトヨタ自動車の社長に就任するGRカンパニー佐藤恒治プレジデントにも、すでに挨拶することができているという。
■まずは地元からしっかり繋がりを
また、アネスト岩田が100周年に向けて取り組んでいくのが、地域との繋がりだ。横浜市港北区新吉田町に本拠を置くが、今回『ANEST IWATA BLUE LINK FES. 2023』と題したイベントを行い、その中心にスーパーGTの発表を据えた。
イベントでは、アネスト岩田の製品技術を活用した射的やスーパーボールすくい、ふわふわなど子どもたちが楽しめるコーナーが用意されたほか、神奈川県警の白バイやパトカーの展示、キッチンカーやアネスト岩田の健康経営をサポートするSIXPADのブースなどが用意され、大人も子どもも楽しめる催し物となった。実際、モータースポーツファン以外にも地域のコミュニケーションツール等を活用し呼びかけを行った結果、多くの家族連れが訪れ、ANEST IWATA Racing RC F GT3に目を輝かせる子どもたちの姿があった。
「今回、いちばんなのは新吉田町という街でお披露目ができたことが嬉しく思っています。まずは地元からしっかり繋がりをもっておこうと、『ANEST IWATA BLUE LINK FES. 2023』というかたちで行わせていただきました。今後も定期的に継続していきたいイベントです」と武田取締役は語る。
「今回はスーパーGTでしたが、今後も皆さまにお届けできることがあればと思っています。そのためには、我々のベースであるものづくりをしっかりやっていきたいですし、モータースポーツを介しての繋がり、挑戦をしっかりやっていきたいです」
スーパーGT参戦を通じて、異なる業界と繋がり、さらに地域との繋がりを深めていきたいというのがアネスト岩田の願いだ。「今回の取り組みもそうですが、100周年まであと3年あるなかで、何をやっていこうかと考えたときに、自分の子どもや親友など、大切な人を入社させたい会社にしたいと思いました。そこから紐付けて考えていくと、絶対に良い会社になると考えました」と小針リーダーは言う。
「そこで子どもを入社させたいと考えたとき、ビジネスとして成立してつぶれないこと、働いた個人が自分らしく働けること、そして地域の人たちが誇りをもてること、良く思ってくれることが大事だと考えました」
「モータースポーツを通じて新しいビジネスを作っていきたいとということ、そして地域に向けても、モータースポーツ活動をプラットフォームとして繋げていきたい。今回地域に向けては、こうしたイベントを通じて繋がりを作りたいということですね」
今回の参戦にあたって武田取締役は、「スポーツですから、勝ち負けの面では厳しいところはあるだろうと思っています。それでも、ひとつでも上を目指していきたいと思っています。さらに、ひとつ嬉しいのは、グランツーリスモとタッグが組めたということです。非常に大きな力になりますし、これもひとつの繋がりだと思っています」と意気込む。ドライバー選択も、若さと可能性を重視選ばれ、スーパーGT参戦経験はないが間違いないスピードをもつ3人が選ばれた。
新しいかたちでスーパーGTに挑むANEST IWATA Racingが、2026年の100周年に向け、どんな“繋がり”と結果を築いてくれるのかを期待したい。
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