6速シーケンシャルMTと500Lタンク
プロドライブ・ハンターのエンジンは、車両中央付近へ隠れるように搭載されている。点火プラグの交換は、ダッシュボードを取り外した方が早いという。補機ベルトを交換するには、プロのメカニックでも2時間位は必要らしい。
【画像】公道のダカール・マシン プロドライブ・ハンター 過去に試乗したワイルドなモデルも 全107枚
それ以上の作業の場合、シャシーを持ち上げてエンジンを降ろした方が手っ取り早いとか。だが、この3.5L V6ツインターボは基本的に堅牢。普段は、あまり手を掛けずに済むのだろう。
トランスミッションは、シフトパドル付きのサデブ社製6速シーケンシャルMT。ワークス体制のバーレーン・レイド・エクストリーム(BRX)・ハンターT1+では、FIA規定に則りパドルを装備できず、大きなシフトレバーが伸びていた。
もちろん四輪駆動で、駆動力割合は50:50。フロントとリア、ミドのデフは、それぞれ個別にロックでき、走破性を高めている。
ダカール・ラリーのステージは距離が長く、沢山の燃料を必要とする。乗員空間の後方に、500Lのタンクが鎮座している。スペアタイヤを積む空間もある。荷室として使えなくはないが、試乗した日にもスペアタイヤが載っていた。
定員は2名。ラリーカーとして、必要な人数でもある。
ガルウイングのドアは、ガスストラットが支えるから開閉しやすい。ドアの開口部は、サイド排気のエグゾーストを避けるように、三角形だ。
アリエル・ノマドや一般的なレーシングカーとは異なり、ロールケージのバーが邪魔せず、乗り降りはさほど難しくない。シートへ身体を軽く投げ込む感じで大丈夫。
車内は賑やかで視界が悪く運転は難しい
試乗車のシートは固定式だったが、スライド式も指定もできる。ドライビングポジションは良好。ワークスマシンと異なり、インテリアは少しドライバーへ優しい仕立てになっている。
パッド部分にボタンが並んだ、丸いステアリングホイールの直径は丁度いい。3枚のペダルが、レーシーな雰囲気を高める。機械的につながっているのはブレーキのみ。アクセルとクラッチは電気信号を送るバイワイヤだが、フィーリングは至って自然だ。
ブレーキは前後ともに、6ポッド・キャリパーとベンチレーテッド・ディスクという組み合わせ。ABSはない。車重は1850kgだという。
ECUにはエンスト防止のソフトウェアが組まれている。トルクも太く、特にアクセルペダルをあおることなくスムーズに発進できた。
運転は難しい。何より前方以外の視界が悪い。車内は相当に賑やか。音源の中心はエンジンだが、ストレートカットのギアからもノイズが響いてくる。耳栓は不可欠だ。
リミテッドスリップ・デフはロックしたがり、すぐにゴリゴリと振動が生じる。エンジンは吹け上がりが尖すぎ、扱いにくい。フィルムラッピングされたランボルギーニ・アヴェンタドールより、市街地には向いていない。
セバスチャン・ローブ氏が駆った赤いハンターとは違い、今回のクルマは地味な砂色。それでも沢山の人が振り返る。これこそ真のクーペSUVだ。BMW X6など、まだ甘い。
スタイリングは優雅とはいえない。存在感は誰よりも強い。筆者なら、ピックアップトラックにすると思う。
目的に対しての妥協は一切なし
ベンチで居眠りしていても、サウンドは聞き逃さないはず。いかにも豪腕で、容赦ない轟音を放つ。心に響く音色ではないが、とにかくやかましい。
ステアリングホイールは、比較的軽く回せる。市街地のスピードでも扱いやすく、走り始めれば6速シーケンシャルMTはクラッチ操作が不要。滑らかに変速できる。
400mmもストロークのあるサスペンションは、公道仕様の方が優れているそうだが、乗り心地は褒めにくい。17インチ・ホイールに、外径が37インチもあるBFグッドリッチのタイヤが組まれている。ブロックパターンは大きく、ノイズも盛大だ。
小回りは、まったく利かない。2.3mの全幅と相まって、交差点では歩道の縁石に乗り上げそうになる。
最初は、この場違い感が楽しかった。ものすごく。同時に、別の場所が適切だということも常に感じた。スーパーカーを運転している時以上に。庭のプールで、水上バイクに乗っているようなものだ。
コンパクト過ぎるクルマも、シティカーとして肩身が狭い時がある。BMW 3シリーズと同等の全長だとしても、ハンターで渋滞に巻き込まれるより、レザー内装の車内で過ごした方が気分が良いことは間違いない。
とにかく、トラブルを起こす前にクルマを返すことができて良かった。これほど神経を使った試乗も珍しい。
プロドライブ・ハンターは、ダカール・ラリーで勝つために作られたオフローダーだ。目的に対して一切の妥協がないとは、確実にいえるだろう。
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みんなのコメント
ハイラックスなら視認性も良いし、街中で全幅2.3mに悩まされ無いしね(笑)