公道で新型カローラ スポーツを試乗する機会を得た。これまでにカローラ スポーツは、ナンバーが取得できていない段階でのクローズドコースにおけるプロトタイプ試乗会が行なわれ、その試乗記は既報だが、果たして一般道路での走りはどうか? <レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
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エクステリアのデザイン・テーマは「シューティング・トラペゾイド」で、訳すと弾けるような台形フォルムといった感じだ。確かに全体のフォルムは台形が強調され、どっしりした安定感が感じられるが、フロント周りは従来からの「キーン・ルック」の要素を残しながら台形の大きなフロントグリル、鋭いヘッドライト・デザインが特徴だ。
リヤはCピラー部から絞り込んで立体的な造形にしている。しかし、やはりオーリスを継承したデザインでもあり、新鮮といえるほどではないと感じる。
インテリアは凹凸のあるインスツルメントパネルのデザインを採用。インスツルメントパネル中央のディスプレイは見やすいが、メーターパネルのデザインなどは平凡だ。インテリアで最も注目すべきはシートの出来栄えだった。スポーツシート、標準シートのいずれも腰椎・骨盤をしっかり保持し、上半身の胸郭・脊椎部を安定させる新骨格シートを採用し、グローバルに通用するホールド性のよいシートが実現している。現在の日本車のシートでトップレベルに到達したといえる。
試乗車は、1.8Lハイブリッドを搭載したハイブリッド G”Z”と1.2Lターボを搭載したGの2台だった。まずはG”Z”グレードのハイブリッドモデルだ。この1.8L(2ZR-FXE型)エンジンとハイブリッドのユニットはプリウスと共通で、これまでのオーリスにも搭載されていた。オーリスは、プリウスよりは加速性能を重視したチューニングになっていたが、もちろんこのG”Z”も踏襲されている。そのため、アクセルに対してはかなりリニアに反応し、加速の応答遅れ感も抑えられており、動力性能の不満はあまり感じなかった。
1.2Lターボ(8NR-FTS型)もこれまでのオーリスに搭載されていたダウンサイジング直噴ターボだ。そういう意味で、新型カローラ スポーツの2種類のパワーユニットはオーリスからの継承といえる。1.2LターボはスーパーCVT-iとの組み合わせで、残念ながら新開発の発進ギヤ付きCVTではない。とはいえこのCVTも滑り感をかなり抑え、10段の疑似マニュアルシフトもできるなどスポーティさを打ち出している。
1.2Lターボは116ps/185Nmの出力で、Cセグメントのボディに対してはそれほど力強いフィーリングはないが、低速トルク型なので扱いやすく、加速性能もまずまず。リニアリティのある走りで、やはりカローラ スポーツのコンセプトに合うのはこのエンジンだろう。そして8月からは自動ブリッピング付きMTとの組み合わせも選べるが、販売的にはハイブリッドがメインと思われる。
新型カローラのハイライトは、新開発ダンパーと、より剛性を高めたシャシーによる走り味だ。ダンパーの動きが滑らかで、乗り心地や接地感が格段に進化した。さらに乗り心地の面では、加速時のリヤの沈み、ブレーキ時のノーズダイブが大幅に抑えられ、うねりのある路面でもフラットな姿勢でバウンシングでいなす。こうした走行時のフラットライド感はが高いレベルにある。足回りを固めず、しなやかさやフラットな乗り心地を両立させており、この点では国産車トップレベルというべきだろう。
コーナリングでもゆっくりとロールが発生し、不安感がなく気持ち良い走りができる。唯一、惜しいのがステアリングフィールだ。これまでより一段とステアリング系の剛性を高めたことは体感できるが、ニュートラルから初期操舵の狭い範囲で少し人工的な手応えが感じられた。これはコラムアシスト・タイプならではの味付けのようで、このあたりが解消されればシャシー性能はグローバルトップレベルに位置すると思う。
さらに走行中の室内の静かさもクラス・トップレベルで、長距離走行ではこの静粛さとシートのできの良さがドライバーにとっては大きな魅力だろう。
新世代の運転支援システムのトヨタ・セーフティセンスの装備、トヨタのサーバーとの常時接続「トヨタ・コネクト」の装備など、このセグメントの先頭を走ろうという意気込みが感じられ、走りでもかつてないほど高いレベルに引き上げられ、新世代のカローラのポテンシャルは高いといえる。
ただ、このカローラ スポーツは、車名通りにスポーティかといえば動力性能も含め、グローバル基準では標準的なパフォーマンスである。とは言え、基本性能は高次元の熟成が行なわれており、クルマをより知っている大人に対するアピール力は大きいクルマだと思う。
トヨタ カローラ・スポーツ 諸元表
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