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【ヒットの法則323】アストンマーティンV8ヴァンテージロードスターにはいつでも満喫できる官能性があった

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【ヒットの法則323】アストンマーティンV8ヴァンテージロードスターにはいつでも満喫できる官能性があった

2007年、アストンマーティンの2シータースポーツカー「V8ヴァンテージ」のオープンモデル「アストンマーティンV8ヴァンテージロードスター」が登場している。当時はちょうどアストンマーティン社の経営がデビッド・リチャーズを代表とする企業グループに移ったばかりのこと。このモデルはどんなモデルに仕上がっていたのか。フランス南部プロヴァンスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年6月号より)

快適性とスポーツ性を両立させた新トランスミッション
アストンマーティン社がフォード社から売却され、デビッド・リチャーズを代表とする企業グループが新たな筆頭株主となった直後だというのに、引き続き社長を務めるウルリッヒ・ベッツ社長はフランス南部プロヴァンスで行われたV8ヴァンテージロードスターの国際報道試乗会に姿を見せた。

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「会社の持ち主が変わったことで、アストンマーティンは何も変わりません。これまで通りのやり方で、これまで通りの高性能スポーツカーを作り続けるだけです」。今後の事業戦略や財務計画などで超多忙なはずなのに、ベッツはにこやかに語っていた。

「アストンマーティン」ほどのサラブレッドともなれば、会社の持ち主がどう変わろうと、作るクルマに違いが出てくるわけがないのは当然のことだろう。そんな自信が、ベッツにはうかがえた。

オープン化と併せて、これまで6速マニュアルミッションだけだったV8ヴァンテージには、オートマチックモード付きのマニュアルトランスミッションが採用されたのがニュースだ。

ヴァンキッシュ以降のアストンマーティン、つまり、DB9/V8は、いずれも「VH構造」と呼ばれるプラットフォームを採用している。車体の基幹部分をカーボンファイバーとアルミニウムを主体とした複合素材で構成し、ボディの軽量化と高剛性化を狙っている。

屋根を取り去ったことによる剛性低下は、主に4カ所を補強して対策している。エンジンルームと車室を隔てるバルクヘッドに、H字形に成型したアルミ鋳造部材を取り付けてある。ちょうど、H字形がトランスミッションのトンネルをまたぐような補強だ。

それと合わせて、ダッシュボードの下にあたるところへ、アルミ鋳造材で作られた補強材が左右に渡されている。そしてアルミパネルが、前後バルクヘッド位置の床に貼られている。

その補強の効果は大きく、オープン化による不快なボディのねじれや振動などは皆無だった。プロヴァンス地方の急峻なワインディングロードをハイペースで駆け抜けたが、屋根を開けても閉めても、快適な走りっぷりに違いはなかった。120km/hぐらいまでは風の巻き込みは一切なく、同乗者との会話には不自由しない。

開くのに20秒、閉じるのに19秒を要するが、ボタン操作ひとつで行える点は便利だ。

V8ヴァンテージと同じように、V8エンジンの排気音は勇ましいが、魅力的だ。低回転域では低く抑えられている爆発音が、3800rpmを超えると一気に炸裂する。排気管内のバイパスバルブが開いて、エンジンからの排気が一気に排出されるためだ。

そのままスロットルペダルを踏み続けていくと、7800rpmのレッドゾーンまで一気に吹き上がる。途中、6000rpmでエンジン排気音がさらにハイトーンになり、ドライバーはさらに刺激される。

注目のトランスミッションの出来は、素晴らしい。オートモードでのシフトアップの際の引っ掛かりは最小限だし、シフトダウン時のニュートラル時間も極めて短い。ヴァンキッシュやフェラーリ430などの同種のロボタイズド・マニュアルトランスミッションが派手なブリッピングをニュートラル時に行っていたのとは対照的に、V8ヴァンテージロードスターでは、それは最小限に抑えられている。

したがって、マニュアルモードでの変速も実に素早い。スロットルペダルを戻さないまま、右側のパドルを次々と引っ張ることで電光石火のシフトアップを行う。オーソドックスなクラッチペダル付きのマニュアルトランスミッションよりも、確実に素早く変速できる。

目新しい装備としては、トランスミッションの変速モードに「COMFORT」が設けられた。マニュアル変速時に、クラッチミートを穏やかに行うためのものだ。だが、スロットルペダルをホンの少し戻しながらパドルを引けば、ショックは和らげられるので、あまり「COMFORT」モードを用いることはなかった。

V8ヴァンテージロードスターは、クーペ譲りの動力性能とアストンマーティンらしい個性的なエクステリア、豪奢なインテリアなどで大いに存在感を高めている。

ポルシェ911カレラカブリオレ、フェラーリ430などと較べて秀でているのは、ゆっくりと流して走っている時にも満喫できる官能性と、趣のあるインテリアだろう。

ベッツが「グランドツーリングカーではなく、スポーツカーを作り続ける」とスピーチした通り、V8ヴァンテージロードスターは豪華でありながら、硬派なスポーツカーに仕上がっていた。(文:金子浩久/Motor Magazine 2007年6月号より)



アストンマーティン V8ヴァンテージ ロードスター 主要諸元
●全長×全幅×全高:4380×1865×1265mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4282cc
●最高出力:380ps/7000rpm
●最大トルク:410Nm/5000rpm
●トランスミッション:6速AMT/6速MT
●駆動方式:FR
●最高速:280km/h
●0-100km/h加速:5.0秒
※欧州仕様

[ アルバム : アストンマーティン V8ヴァンテージ ロードスター はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Motor Magazine編集部
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