多くのハイブリッドカーにある「Bレンジ」。坂道を下るときなどに使用するものですが、使い方がよく分からず、使っていない人も多いようです。
しかしながら、ハイブリッド車のBレンジは、使わなければ非常にもったいない装備。Bレンジの役割とメリット、そしてBレンジの上手な使い方をご紹介します。
知っているのと知らないので大違い!! HVの「B」レンジを上手く使う簡単な方法と場面
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:写真AC_ シュンgvs
写真:TOYOTA、NISSAN、イラスト:著者作成
急な下り坂で強い制動力を発生
トヨタのプリウスやアクア、日産のノートe-POWER、ホンダのフィットe:HEVなど、多くのハイブリッドカーには、一般走行のDレンジと、バックのRレンジに加えて、Bレンジが設定されています。
トヨタの説明書には、「Bレンジは、急な下り坂など強いエンジンブレーキが必要な場合に使用」と記載されています。一般的なエンジン車で下り坂を走行する場合に、シフトダウンしてエンジンブレーキを効かすのと同じように、Bレンジに入れることで強い制動力を発揮します。
従来のガソリンエンジン車のエンジンブレーキは、アクセルを戻した(エンジンスロットルが閉じる)時に、エンジンのポンピングロス(負の仕事)によって発生する制動力です。これによって、フット(油圧)ブレーキを踏まなくても、クルマにはある程度の制動力が発生して減速ができます。さらにシフトダウンすれば、エンジン回転が上がってポンピングロスが増大するため、より大きな制動力が発生します。
一方、ハイブリッドカーで設定されているBレンジは、エンジンブレーキの代わりに、回生ブレーキを利用します。回生ブレーキの詳細については後述しますが、搭載されている発電機の回転抵抗を制動力として使い、同時に減速時のエネルギーを回収するブレーキシステムで、ハイブリッドカーの肝となる技術です。
協調回生ブレーキで減速エネルギーを電気として再利用
ハイブリッドカーや電気自動車で使う駆動モーターは、通常は動力源として駆動しますが、減速時に回転させると電気エネルギーを発生する発電機として作動します。
発電機によって発生した電気をバッテリーに充電し、同時にその時に発生する発電機の回転抵抗をクルマの制動力と利用するのが、(減速)回生ブレーキです。ガソリン車では、減速エネルギーはブレーキパッドやシューの摩擦熱として外気に捨てられますが、ハイブリッドカーは、この捨てられる減速エネルギーの一部を電気として回収してモーター駆動に使うので、燃費が向上するのです。
実際のハイブリッドカーのブレーキは、フットブレーキと回生ブレーキを組み合わせた協調回生ブレーキによって、ドライバーが要求する制動力を実現しています。基本的には、燃費向上のために極力回生ブレーキを使いながら、最終的にはフットブレーキで制動力を調整しています。
例えば、緩めの減速では、回生ブレーキが主となり、急激なブレーキ操作では、安全のためにフットブレーキが主に作動します。スロットル開度の動きやエンジン回転など減速条件に応じて、回生ブレーキとフットブレーキのバランスが最適化されます。
フットブレーキと回生ブレーキを組み合わせた協調回生ブレーキ。減速の条件によって、フットブレーキと回生ブレーキのバランスを最適化している。(イラスト:著者作成)
満充電ではエンジンを駆動させ、エンジンブレーキで制動力を確保
前述したように、ハイブリッドカーのBレンジの役目は、急な下り坂走行の安全を高めるために、制動力を強めること。通常のDレンジで下り坂を下りるよりも、フットブレーキの負担を減らすことができ、ブレーキパッドのフェード現象(熱による摩擦力の低下)のリスクを減らすことができるのです。さらにDレンジで走行するよりも、減速エネルギーの回生量を増やすことができるので、燃費の向上にもつながります。
ただし、満充電に近い状態からの下り坂や、長い下り坂では回生ブレーキによって、容易にバッテリーが満充電になります。過充電はバッテリーにとっては致命的な問題を引き起こすので、満充電になった時点で減速回生はできなくなります。そのため、Bレンジではエンジンを駆動(燃料カットで空回り)させて、エンジンブレーキで制動力を強化する方法を取っています。こうなると、燃費向上は期待できませんが、何よりも安全が優先されます。
まとめるとBレンジは、急な長い下り坂で、強い制動力を発揮。これにより、フットブレーキの負担を減らしつつ、減速再生を積極的に利用して燃費を向上させます。ただし、満充電になって回生ブレーキが利用できなくなったときには、エンジンを駆動させて制動力を確保する走行モードなのです。
一般走行でもアリだが、大きな燃費改善は期待できない
回生ブレーキを強めて燃費が良くなるなら、通常走行の減速走行中にBレンジを多用して、燃費を向上することは可能でしょうか。
理屈上は、回生量が増えるので燃費の向上は可能です。ある程度強めの減速時に、DからBレンジにシフトして、フットブレーキで調整すれば良いのです。もともとエンジン車でシフトダウンを多用していたドライバーなら、操作は問題ないでしょう。ただし、条件にもよりますが大きな燃費改善効果は期待できません。そもそも、Dレンジでも極力回生ブレーキを使うように設定されているからです。
比較的起伏のある道路を走行する場合、チャレンジする価値はあると思います。ただし、まめでない人は、面倒臭さが先に立って、ストレスの原因になったり、車間距離がうまく取れずに迷惑運転のもとになるので、お勧めできませんね。
◆ ◆ ◆
ハイブリッドのBレンジは、下り坂では使わない手はありません。しかし、回生ブレーキを多用することばかりに集中すると、フットブレーキがおろそかになり、非常に危険。回生ブレーキは、あくまでフットブレーキの補完であると考えておくのが、安全だと思います。
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みんなのコメント
シフトダウンして定速走行してるとDレンジのまま背後まで勢いよく来て嫌がらせのようにパカパカとブレーキ踏む奴がほとんど。
マニュアルに乗った事ない連中にシフトダウンの概念は無い!
満充電時のエンジンの唸りがハンパないだよね。MTなら70Km/h位
からのセカンドへシフトダウンしたような感じだけどその割にエンブレは
利かないし初めての時は制御壊れたのかと思ってディーラーのサービスに
電話掛けたら、そういう制御ですってあっさり言われました。